王妃様と…
奈々に蹴られて、二人が起きるより早く目が覚めた。この子も寝相悪いのか…。
お城へ行くのなら、相応な服に着替えないといけない。
起きたら二人にも着替えてもらわないと。流石に村娘風な服装でお城へ行くわけにもいかないし。
シエルは敢えてそう作ってくれただけで、決して腕が悪いとかじゃない。
んーどれにしようかなぁ…。以前、ユリネさんオススメのお店で買った服なら大丈夫かな。
高級な部類に入るであろう服に着替える。
キッチンへ降りて作った朝食は、簡単にハムエッグとトーストにサラダ。
「ママーおはよー」
「おはよーティー。リコは?」
「朝の見回りー」
「頑張ってるんだねリコも」
じゃあフルーツもカットしておくか。
カットしたフルーツを盛り合わせてたら、麻帆は降りてきたけど、奈々は? (すごいかっこで寝てるー)
起こしに行って大丈夫かな…。
「麻帆、奈々を起こしてきてくれたりは…」
「それだけはイヤよ。あの子、昔から寝起きが悪いの」
「麻帆と奈々って幼馴染だっけ?」
「そうね、幼稚園からの腐れ縁よ」
それは色々と詳しいはずだよ。仕方ない、起こしに行きますか…。
まさかリアみたいな事にはならないよね。 (フラグ?)
ならないよ、大丈夫…。 多分。
ペントハウスへ上がると、ベッドの上では昨日貸したワンピースがお腹まで捲れ上がって、あられもない姿で寝てる奈々が…。
慌ててスカートを引っ張り下げる。 なんて格好してんのよ…。 (だから言ったのにー)
精々大の字とかそんな感じかと思うじゃない。 (見積もりが甘いのー)
うん、思い知った…。
「奈々、起きて! 朝だよ」
「んー後2日ー」
「長いわ! 起きないと朝ごはん抜きだよ?」
「朝ごはん! アスカの手作り?」
「びっくりしたー。急に覚醒したね」
「なにかなー。なーにっかなー」 (食いしん坊キャラがここにも)
おかげで起こす手間は省けたけどね。
奈々をつれてリビングへ降りたら、リコも帰ってきてて丁度良くみんなで朝ごはんになった。
「見た目は普通のハムエッグのはずなのに…すごく美味しいよー!」
「それはなにより」
「これもスキルとか言うのが影響してるってことかしら」
「そうだね、料理を繰り返してたら、スキルレベルが上がったから…」
「じゃあ、それはもう実力じゃない。努力の賜物でしょ?」
「そうなるのかな?」
「そうよ。誇っていいと思うわ」
スキルだからチートって言われるかと思ったけど、そう思ってくれるんだ…。なんか嬉しいな。
「うんうん! アスカは料理上手!」
「ママのご飯たべたら他のもの食べられなくなりそうだわ」
「それなー?リコちゃんの気持ち、私はよーくわかる!」
「お菓子もママは上手! プリン美味かったの」
「えーいいなー。私も食べたいー」
「今はカットフルーツしかないからごめん。頂き物だけど美味しいから。リコも食べてね」
「ありがとうママ」
あれ…どうしたんだろ。 (んー?フルーツんまー!)
探索を広げてたら、アリアさんがすごい速さでこっちに向かってきてるんだよ。
速度からすると多分馬かな。ティー何か知らない? (お城に置いてた他のも動かしちゃったから…)
そっか、それは仕方ないね。 (近くので見てくる!)
ごめん、助かるよ。
迎えに来てくれた?いや、だったら馬車だろうし…。速度はもっと落ちるはず。
んー。
「アスカどうかしたの?難しい顔して」
「うん、ちょっとね…まだわからないから気になって」
「ママ!! わかったの。王妃様が大変!」
「どういう事? まさかお腹の赤ちゃん?」
「うん!」
前に私がこちらに来てから何日経った?今回、時間を戻さずに転移したから、まるっと一週間、さらに今日は月曜日だから8日、こちらだと8ヶ月経過してる。
そうなるとお腹もかなり大きくなってるよね? (うんうん)
しかも、妊娠してからドラゴンへ進化したから…。 これは、お祖母ちゃんを頼らないと無理だ。 (それがいいかも)
「奈々、麻帆、ごめん…ちょっと忙しくなる。 二人はどうしたい?すぐに帰りたいなら送り届けることも…」
「待ってるから大丈夫!」
「ええ。私達はここで待たせてもらうわ。気になるし…」
「わかった。ごめんね…。 ティー、私が戻る前にアリアさんが到着したら説明お願いね」
「任されたー!」
お祖母ちゃんなら気がついてくれるはずだから、魔力の隠蔽を解除してドラゴライナ王国へ転移。
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「アスカちゃん、どうしたの?突然じゃない」
「お祖母ちゃん! 居てくれて良かった…王妃様が!」
「赤ちゃんね?わかったわ、連れて行って」
「ありがとう!」
お祖母ちゃんを連れてアクシリアス王国へ。
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「お祖母ちゃん、突然ごめんね」
「いいのよ。私はどうしたらいいかしら?」
「多分、部屋の外に騎士様がいるはずだから…待ってね」
扉を開けると思った通り。
「アスカ様!? 来てくださったのですね、王妃様が…王妃様が、今朝から急に!」
「ルニアさん落ち着いて! 祖母に来てもらったので、王妃様の元へ案内してあげてください。私はアリアさんを迎えに一度戻ります!」
「わかりました。お任せください!」
「お祖母ちゃん、先に王妃様の所へ行ってて。すぐに戻るから」
「わかったわ」
私はまたツリーハウスへ。
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アリアさんは、まだだね…。 (ママ早い!)
お祖母ちゃんが気がついて待っててくれたからね。 (さすがー)
「私はアリアさんを迎えに行ってそのままお城へ行くから。ティーは二人を見ててあげて」
「任されたのー」
「奈々、麻帆…本当にごめんね」
「謝らなくていいよー。大変っぽいし」
「そうよ。後で説明してくれればいいわ」
「ありがとう」
ツリーハウスを出た私は、探索で見えるアリアさんに向かって走る。
周りに人も建物もないからちょっとスピード上げてもいいよね。 (いっちゃえー!)
りょーかい!
ドンッ! という衝撃を残し一気に最速まで。
アリアさんの進行方向の少し前で急停止。
うわっぷ…砂埃やばっ…。風魔法で吹き飛ばさないと。
直後にアリアさんが馬で到着。
「アスカ様! やはりあの砂埃は…」
「アリアさん、王妃様の事ですよね?」
「はい…私達ではどうしていいか…治癒師でも手に負えず。すみません、またアスカ様に頼ってしまい…」
「そんな事はいいです。先に祖母にはお城へ行ってもらっているので、私達も戻りましょう」
「わかりました!」
「あ、でもアリアさんの馬は…」
「この子なら大丈夫です。賢い馬なので自分で帰ってきます」
「わかりました。では転移しますね」
王城へアリアさんを連れて転移。
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ーー
「アスカ様、ご案内します」
「お願いします」
多分、お祖母ちゃんがいるから大丈夫。
私では無理だったとしてもお祖母ちゃんなら…。
以前、王妃様と魔道具の勉強会をした部屋のあるエリア、その一室。
苦しそうにしてる王妃様を王様やシルフィー様が心配そうに見守ってる。王子は…いないのか。
「お祖母ちゃん、お待たせ」
「おかえりなさい、アスカちゃん」
「王妃様は大丈夫そう?」
「ごめんなさい…私にもわからないの」
そんな…。
お祖母ちゃんが言うには、多分妊娠してからドラゴンへ進化した事でイレギュラーが起きたのではないか。お腹の赤ちゃんの様子がわかれば、まだ手の打ちようがあるかもしれない…と。
「お祖母ちゃん、それなら私が何とか出来る!」
「なんとかって…お腹の中の様子なんて見れないのよ…」
「大丈夫、まかせて」
「わかったわ…」
魔法はイメージ…。魔力ドームで王妃様を包む。
レントゲン検査の様に体内を可視化する。私とお祖母ちゃんだけに見えるように…そこは配慮。
普段、治療する時にも同じ事をして確認してるから、それをお祖母ちゃんにも見えるようにした。
「…すごいわね。しっかり確認できるわ… 待って、まさかそんな…こんな事あり得ないわ!」
うそ…お腹の中にドラゴンの仔…?
「無理よ…母体が耐えられない…」
それはそうだよね…翼や角があるドラゴンの仔が普通に産まれるなんて不可能だよ…。
「なんとか…なんとかなりませんか?セイナ様」
「お母様!!」
「そんな…王妃様…」
状態の見えていない陛下達もお祖母ちゃんの言葉から、ただならぬ状態なのは理解してしまう。
「お祖母ちゃん、少しいい?」
「え、ええ」
お祖母ちゃんと部屋の外へ出る。
「何か出来る事はありそうかしら?私は何も手が無いのよ…」
「一応手はあるんだけど…その為にお祖母ちゃんに確認したくて」
「何でも聞いて。あの子たちの為なら…」
私が聞きたい事、それ次第ではもしかしたら…




