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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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ちょっとした旅行気分で



ペントハウスからの眺めも暗くなり、外が何も見えなくなった頃にようやく麻帆が目を覚ます。

「麻帆、大丈夫?」

「ん…ここ、どこだったかし…ら…」

「異世界」

「そうだったわ…でも部屋が…えっ…待ってアスカちゃん私が寝てる間に?」

「何が!?」

「いや、だってここラブ…」

「麻帆もか! ここはツリーハウスの最上階。ペントハウスだよ!」

「…そう。期待させて酷いわ」

「だから何が!?」

「冗談よ」

「おー麻帆も起きたね! アスカ早く話!!」

ウロウロしてた奈々がお風呂を見つけ、入りたいって言うから使い方を教えて…タオルだけ渡してあげたんだけどさ。

お風呂からタオル一枚巻いただけの姿で出てくるなよ…。


「まさか、すでに事後!?」

「ホントに何が!?」

「ふふっーごちそうさまでした!」

すごい速さで私に向き直った麻帆は私の姿を確認して

「なによ…奈々がシャワー浴びてただけじゃない」

「バレたかー」

麻帆が察しのいい子で助かった。 (ママ、報告終わり!)

ありがとね。

ティーにはユウキ達、地球に残してきた家族と、念の為王妃様へも伝言を頼んだ。

王妃様はなんて? (明日でいいから顔出してほしいって)

わかったよ。 (友達も連れてきていいからお城へーって)

マジか…。大丈夫かな。 (多分…。 ユウキ達はわかってたみたいだからへーき!)

そう…。 察しが良すぎない?うちの子達。

時間戻しちゃうんだけどさ…。



タオル姿のままベッドへ飛び込んでくる奈々。

「流石に服は着なよ…」

「だって、制服だし。 それに脱いだ下着をまた着たくない!」

お風呂の前に脱ぎ散らかしてある奈々の服にクリーンを飛ばす。

「今なにしたの!?」

「奈々の服。キレイにしたから。 あと、制服が嫌なら…」

ストレージからシエルが作ってくれた異世界向けの普段着をいくつか出す。


「アスカちゃん、それってもしかしてこの前の?」

「うん、麻帆が信じてくれなかったやつ。ストレージって言って色々入ってる」

「そう…本当だったのね。疑って悪かったわ」

「いいよー普通は信じられないよね」


「うわ、本当にキレイになってる! スカートにあったソースのシミまできえてるよ!」

脱ぎ散らかしてた服を確認してた奈々も納得したのかタオルを取…ちょっと!?

いやいや…

「ここで着替えるの!?」

「私達だけだし、いいじゃんー」

「相変わらずね奈々は…」

下着姿でベッドへ戻ってきた奈々は私の出した服の中からワンピースを選んだ。

恥じらいとかないのかこの子は…


「可愛いねこれ!」

「胸周りぶかぶかじゃない」

「言わないでよ…現実を突きつけられて打ちひしがれるから!」

麻帆に指摘されて、うなだれる奈々が少し可哀想。

「麻帆もお風呂使っていいよ。着替えもあるんだし」

「さっきの、私の服にもやってくれる?」

「勿論いいよ」

麻帆も私の出した服の中から動きやすいパンツルックを選ぶとお風呂へ向かった。

使い方は奈々が教えるってついて行った。




「ただいまーなのー!」

窓からドラゴン姿のティーが飛び込んできた。

伝言を頼んだ時に開けてそのままにしてたから…。

ティーはドラゴン姿のまま、小さな前足で器用に窓を閉める。

「おかえり、ありがとね」

「…ドラゴン?しゃべった…」

麻帆への説明が終わって戻ってきた奈々に見られてしまったか。

「ティーだよ!」

ぽんっと姿を変えたティーはドヤ顔。 (ドヤァ!)


「すごいすごい! えっ…てことは、わかった! アスカはドラゴンの姫!」

「違うから!」 (当たらずも遠からず…)

なんでよ。 (お祖母ちゃんは伝説のドラゴンで、叔母さんは女王様 お母さんは蒼白の巫女)

そうだった…ドラゴンの血は流れてたわ。


騒いでたら麻帆もお風呂から出てきた。

「麻帆までタオル姿で出てくるの?」

「仕方ないじゃない。アスカちゃんあれ…お願い」

「あぁ、そっか…」

麻帆の抱えてる服へクリーンを飛ばす。

「それで大丈夫だよ」

「ありがとう」

風呂場の方へ戻る麻帆に奈々は

「そんな恥ずかしがらなくてもいいのに!」

「奈々が恥じらいなさすぎるだけだからね?」 (最初のママみたい)

そんなこともあったなぁ!? はぁ…もう。 (ふふっママ楽しそう)

うん、そうかも。


着替えて風呂場から出てきた麻帆にもティーの紹介をして、毎度おなじみのやり取りも済ませた。 (端折ったー)

毎回同じ説明なんだもの。



「アスカ、話ー!」

「ええ。お願い、聞かせて」

「そうだね。どこから話したらいいかな。 んー…私、召喚されてたの異世界に」

「流行りの異世界召喚?」

「はやってるの?」

「漫画とかー小説やアニメも」

「あぁ…。 そうだね。それに近いかも」

二人に勇者として召喚された事や、魔王になった事も話した。


「本当に魔王だった…」

「私達どうなるの?秘密を知っちゃったから生贄に…」

「しないから! ここもそうやって、呼ばれた世界の一つ。後でお世話になってるお城へ向かうからね」

「えっ…ちょっと待ってね、アスカちゃん。お城?お城ってあのお城!?」

どこかで聞いたようなセリフだな。 (初期美亜…)

あぁ! よく覚えてるね。


「規模の大きい西洋風なお城って言えば麻帆なら伝わる?」

「ええ…。 有名なのがいくつか思い浮かんだわ」

「なになに?私はわかんないんだけど」

「奈々は勉強をしないからよ…教科書で見たことあるでしょ?お城よ、お城」

「大阪城とか?」

「それは日本のね。ノイシュヴァンシュタインとかよ」

「のいしゅ…ば…?」

「もういいわ。奈々に説明しようとした私が愚かだったわ」

酷い言われようだね奈々…。 でもなんだか他人事と思えない。 (ぷぷっ)

そこ笑わない。


「見たらわかるよ。明日、行くことになるから」

「今日泊まり!? やった! 私達だけの修学旅行みたいじゃん!」

「流石にそれはダメよ…何も言わず外泊なんてしたら、叱られてしまうわ」

「戻る時は時間を戻すから、気にしなくていいよ」

「気にするわよ…戻したらあっちの世界はどうなるのよ」

頭のいい子はこれだから…。


「リセットされるからへーきー!」

「無かったことになるって事かしら…」

「そう。確認したからね。並行世界が生まれたりしないから大丈夫よ」

「いまいち納得いかないけど、アスカちゃんを信じるわ」

「私もー」

奈々は絶対わかってないな。 


話し込んでいたら、リコがペントハウスまで呼びに来てくれた。

「ママ、儀式とかも済んだから、もう降りてきて大丈夫よ」

「ありがとうリコ」

私もそろそろ夕食の仕度をしたかったから丁度いい。みんなでリビングへ降りる。

それにしても儀式って… (かしこみーかしこみーもうすー)

それって神社とかで使う祝詞じゃなかった? (近いの)

なるほどね、なんとなく想像はできたよ。



キッチンで手持ちの食材の確認。ストレージにはまだそれなりに材料はあるね。

「アスカちゃんの手作り?何を作るのかしら。少しくらいなら手伝えるわよ?」

「私は無理ー」

「知ってるわ。奈々はキッチンに立たせないわよ」

そこまでか…。


「食べたい物とかは?ある程度なら希望に添えるよ?」

「ほんと!? じゃぁ…グラタン!」

「いいわね。クリームコロッケ美味しかったもの」

「わかったよ」

「おおーママのグラタン!」

「ぐらたん?ティーそれ何かしら」

「えっとねー熱々でチーズがトローってしてうまーなの!」

リコに説明してるティーがかわいいわ。

それにしてもみんなグラタン好きだよね。 (おいしいよ?)

私も嫌いではないけど…。最近頻繁に作ってる気がしてね。 (大好評!)

それは嬉しいけど。



いつも通り手早く仕度をしていく。

「手伝うとは言ったものの、手を出すスキすらないわね」

「そう? じゃあ、フォークとか出すから並べてくれる?」

「ええ。それが良さそうね」

フォークやコップを出して麻帆に渡す。


私は作ったホワイトソースを耐熱皿に入れ、チーズをかけて魔道具のオーブンへ。

そういえばこれ置いたままだったな…。まぁいっか。リコがいるからエルフの人たちも勝手に触らないでしょう。 (ここ、神聖な聖地だからへーき)

ツリーハウスってそんな扱い?私達使ってていいのかな? (蒼白の癒やし手様だし)

そう言えば変な肩書もらってるんだった…。


オーブンで焼いてる間にリビングでは奈々がリコとも仲良くなった様で色々話をしてるみたい。

相変わらずのコミュ力。

「ねぇ、アスカちゃん…あの子が精霊?」

「そうだよ。麻帆も見えるようになったでしょ?」

「ええ…それもさっきの魔力で?」

「うん。怖くなくなった?」

「それはもう大丈夫よ。理解が追いつかないけど」

「麻帆も頭かたいのー」

「言ってくれるじゃない。かわいい顔して…辛辣ね」

「麻帆、ティーをいじめたら許さないからね」

「ひっ…いやっ…」

「あっ、ごめん。 つい…」

「自重して、魔王様」

「はい…すみません」

威圧が漏れてたか。叱られてしまったよ…。気をつけなきゃ。



出来上がったグラタンを食べながらも二人からの質問に答えたりした。

「じゃあ、やっぱり私を助けてくれたのも?」

「うん、勝手なことしてごめん…どうしても耐えられなくて」

「なんで謝るの?ちゃんと本当の事を知れて、その上でお礼を言えるんだから私は嬉しいよ。ありがとうアスカ。助けてくれて」

「うん」

「私からもお礼を言わせて。ありがとうアスカちゃん。奈々だけじゃなく私も救ってくれたんだから」

「うん…」

「親友二人を救った勇者が泣いてたらダメだよー」

「そうね…私達には勇者というよりは救世主だけど」

「ママ、よしよし…」

「本当によかったよ…聞いた時は頭が真っ白になったから…」

「おー私、愛されてるなー」

「だって! 大事な親友だから…二人とも」

隣にいた奈々に抱きしめられてしまった。ありがとうって。




今夜の宿泊は二階部分の個室を使っていいって言ったんだけど、奈々が嫌がった。

「せっかくなんだから皆で川の字で寝ようよ! ベッドも大きかったし!」

ペントハウスのか…確かにキングサイズにはなってるけど。


「使っていいわよ、私は今日個室の気分だし。ティー、一緒に寝ましょ」

「おーリコと初のお泊り!」

リコまで気を使ってくれたのか、お気に入りのはずのペントハウスを貸してくれるのね。

それならお言葉に甘えちゃおう…。 (それがいいのー親友水入らず!)

ありがとね。



私がお風呂に入ってたら奈々が突撃してきたり、ベッドでやたらテンションの高い奈々が大騒ぎして…。

突然電池の切れたように寝た。

「あれだけ騒いで、朝まで語り明かすぞーとか言ってた本人が寝たんだけど…」

「テンションにつられたせいで、私は眠気が覚めちゃったわ」

「眠れなさそう?」

「そうね、もう少し話に付き合ってくれるかしら」

「いいよー」


しばらく、麻帆とこの世界の事や、私の事を話してたら寝息が聞こえてきたので私も眠る。

明日は王妃様に挨拶だね。お願いだからお城ではおとなしくしててね、奈々…。








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