賢者様の魔道具は過剰気味
少し時間は戻り…王妃Side
魔道具の方針は決まったし、あとは作るだけなんだけど…。
効果範囲は半径1メートルほど。
装着者に接触を図るとその相手は麻痺する。
そんな感じかな。
これくらいなら簡単な部類だし早く作って渡してあげよう。
何かあってからじゃ遅いし。
1時間後…
こんなとこかな。手直しとかしてたらそこそこかかっちゃったな。
後は実験だけど…どうしよう。
取り敢えず自分で試してみよう。
今回はブレスレットタイプだから腕にはめるだけ。
つけた感じ違和感もないし、問題ないね。
肝心な痺れる効果の確認だけどこれは確認できないなぁ。
コンコン
「失礼致します王妃様! 緊急のご報告です」
「どうしました?」
何事?またジルス?流石にないわよね…。まさか…
「街を巡回中の騎士がアリア隊長の指示で報告に来たのですが…」
やっぱり…。
「待って、報告は入ってからに」
「はっ」
私やシルフィの周りは近衛騎士の中でも優秀な女性で編成されているがその副隊長が直々ですか。
アリアからの指示ならそうなるのも仕方ないですね。
となるとアスカちゃん絡みでしょうね。間違いなく。
「ーーーーーーー」
報告を聞いてたら、頭痛くなってきた。冒険者の質ってそんなに落ちてるの?
ギルド内で女の子に手を出すなんて…。ギルド職員も動かなかったと。
元冒険者で戦える者が職員にいるはずでしょう?
私が賢者してたときはこんなこと無かったよ。声かけられたりはしたけど…。
これは見直す必要があるね。
「と言うわけで、何人か騎士を出動させました」
「わかりました。おそらく連行してくるでしょうから、後はアリアが戻ってから直接聞きます」
「はっ」
「ご苦労さまです」
副隊長は一礼し退室していった。
はぁ…これはギルドの責任問題でもあるからしっかり調べて対処しなければ。
アスカちゃんのおかげで気づけた訳だし。
この騒ぎでアスカちゃんも多少なり自覚してくれると安心なんだけどなぁ。
アスカSide
アリアさんもユリネさんも街で起こったことの報告やらで忙しく、私は一人で客間にいる。
ちょっとギルド見学に行っただけで、どうしてこうなった。
…私も悪いんだけど。大体はあのチンピラのせい。
帰ったら未亜ちゃんに今までのこと謝ろう。
髪引っ張ったユウキは…いいや。
ただなぁ…これでギルドには行けなくなったね。ごめんユウキ。
きっと行ったら職員さんに怖がられるというか、嫌がられるだろうからね。
「アスカ様、お茶をお持ちしました」
ユリネさんだ。報告終わったのかな。
「はーい、どうぞ」
「失礼します」
カートにお茶と軽食かな?色々持ってきてくれたみたい。
テーブルにセットしてくれる。
「ありがとう、ユリネさん」
「いえ、それにしても大変でしたね…」
うん、多分ギルドの職員さんが一番ね。
「アスカ様に手を出そうなんて…とんだ冒険者ですよ。酷いことされませんでした?」
ん〜?酷いこと…
「壁に押さえつけられたり、腕を引っ張られ引きずられて…身体に触れられそうになったくらい?」
その後は流石に抵抗したし。
「…………」
ユリネさん?
「アスカ様ー!」
抱きつこうと動いたユリネさんだったけど、私に触れる前に
「きぃゃぁぁぁぁ…」
ぴくっ…ぴくっ…
「………」
あっ…これ魔道具のせいだ。
また押し倒されたりしなくてすんだけど、これどうすんの…。
…床はかわいそうだしベッドに運ぶか。
よいしょっと。メイドなのにお姫様抱っことは…なんてバカなこと考えながらユリネさんをベッドへ寝かす。
「ごめんなさい、王妃様から頂いた魔道具が反応したみたいで…」
「……」
麻痺してると話もできないみたい。どれくらいで麻痺解けるんだろ。
王妃様を探してもいいけど多分今忙しいよね?
まさか最初の被害者というか加害者というか…ユリネさんになるとは。
効果の保証はされたけどちょっと過剰な気がするし、解析してみるか。
転移リングの魔道具より彫り込みが薄いね?まぁいいや…
効果範囲は私を中心に半径1メートルちょっと。麻痺時間は2時間。 2時間!? ユリネさん…。
対象は無差別で、装備者の意思を無視して身体的接触を図るもの。
これって…知り合いに後ろから、肩を叩かれて呼ばれてもアウトじゃない?
気軽に、よっ!って呼び止めたりとかもできないんじゃ…。
よし、書き変えよう。
愛用の「魔刻刀〜!」
まず反応する場所を限定しよう、私が他人に触られたくない場所。女の子的にアウトなとこね。
信用してる人には反応しないようにしてっと。
「ユウキや未亜ちゃんが私のそんなトコに触れようとかしないでしょ」 (フラグが立ちましたー)
あっ、でもユリネさんには触られたな…んーでもなぁこれ以上複雑にするとこの魔石では容量がきつい。
諦めよう…。今痺れてるし、懲りたでしょ。
「よしっ…と。改良できた」
そうだ、ユリネさんの麻痺解いてあげないと。
流石に2時間は…。
ベッドで涙目になったまま痺れてピクピクしているユリネさんに近づく。
なんだろう、ちょっといじめたくなる衝動にかられる。
…やんないけどさ。
「ユリネさん、麻痺解除するから解けても暴れないでね?」
魔力をユリネさんに流し状態異常の麻痺を解除する。
「ぷはぁ…はぁはぁ…」
「大丈夫です?」
「王妃様の魔道具ですか…ひどい目に合いました」
そうだね、飛びかかろうとしたし。懲りてほしいな。
「でも! アスカ様にお姫様抱っこをして頂けましたので本望です!」
うん、ダメだこのメイド。懲りてないや。
「今度痺れたら床に放置しますね?」
「そんなぁ〜」
「飛びつかなきゃ痺れないですから」
「それは無理ですね!」
言い切りやがった! やっぱりユリネさんは不許可にするべきだったかも…




