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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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師匠と戴冠式



「おっ戻ってきたか。 なぁアスカ?」

「はい、師匠?」

「いってぇ!! クソッ…殴ったこっちがダメージ受けるのは無しだろう!」

いや、なんで私いきなり殴られた…。 (あーまぁ…うん)


「お前、私との約束を忘れてたのか?」

「はい?それって卒業試験のやつですか?」

「ああ。私にあんな怪我させて…もう嫁の貰い手がつかん!」

いやそれ…初対面の時からメリアさんに言われてたよね? それに全力で来い! ってやらせたの師匠なのに理不尽だよ…。


「おい」

「はいっ…」

「なのにお前は! 私というものがありながら愛人を…」

「はい? 愛人?師匠は一体何を言って…」

「誰がよ!!」

「確かに序列には拘らないとは言ったけどその呼ばれ方はやだなぁ」

「うん…なんかやだよ」

なんの話!?


「それより師匠」

「それよりってお前…」

「渡すのが遅くなってしまってすみません。師匠にはとてもお世話になったのに…また再会できるとは思ってなくて…。 遅くなってしまいましたが、あの…これ、受け取ってもらえますか?」

指輪の入った小箱を手渡す。

「ん? 何だこれは… っ! お前、これ…そうか! そういうことか!」

「お礼の気持ちを魔道具にして込めたんですが受け取ってもらえますか?」

「ああ! 当然だろう!」

「では、師匠専用の魔道具にする為に魔力波長を刻ませてください」

「任せる」

指輪を一度受け取り魔刻刀で波長を刻む。

「魔法防壁は私を超えるステータスの相手しか破れません。師匠は魔法も頻繁に使われるので、魔力の増幅は役に立つと思います。それと…師匠は無茶しますからね。魔力もためておけるので、もしもの時も安心ですから」 (この師匠にしてこの弟子あり…ママが無茶するのは…納得!)

ちょっとティー? (ふいっ…) 

コラ、目をそらすな。 (だってーママはすぐ無茶するよ?)

………。 (ママも目をそらしたー!)



波長を刻んだ指輪を師匠へ渡す。 

それを師匠は迷わず左手薬指へはめた。 あれ?こっちは指輪に意味あったっけ…?

「いいなぁ…これ。 うん。すごくいい」


いっか…嬉しそうな師匠を見れて、私はやっと少しはお礼ができた気がするし。 (呑気な…)


「お姉ちゃん…どういう事?」

「アースーカー!」

「はぁもう…悪気がないのが一番厄介だよ。ほら見て二人共、この子の嬉しそうな純粋な顔を」

「ちょっとティアねえ様、顔を引っ張らないで…」

「そうよね…アスカってそうだったわ」

「うん…」

何、この微妙な空気は。師匠にお礼を渡しただけなのに。


「(私も持ってるけど…わがまま言って作ってもらったものだし…)」

「(それは私だってそうよ…)」

「(えっ…待って?私はないよ!?)」

「(シエルは持ってるのー。と言うかシエルが発端。魔力不調をママが抑えるために作ったの)」

「(あー、もうわかった。それを見て二人が私達も! ってわがまま言ったんでしょ?)」

「(当り! ティーも!)」

「(えっ…ちょっとそれは…。私だけないのはヤダなぁ)」

「(ママに頼む?)」

「(そうだね?それしかないもん)」

「(ティーに任せて)」



師匠あんなに喜んでくれるとは思わなかった…。作ったかいがあったよ。 (ママ、ルナティアも欲しいって)

ん? あぁ…みんな持ってるからお揃いに指輪が欲しいって事? (う、うん! そう!)

じゃあデザインはお揃いにして作るね。 (ありがとー)



「(頼んだの! バッチリ!)」

「(ありがとうティー。嫌がらなかった?)」

「(全然! みんなとお揃いがいいのねって認識だけど…)」

「(そんな事だと思ったよ! はぁ…今はそれでいっか。アスカは鈍い上にウブ過ぎるからねー)」

「(…ちょっとねえ様?何があったのよ?)」

「(えっ…いや別に何も?あはは…)」

「(未亜、どう思う?)」

「(絶対なんかあったね…こないだのデートの時かな?)」

「(……ふいっ)」

「「あっ!!」」


「どうしたのみんな…なんか内緒話してると思ったら大きな声出して」

「なんでもないよ、お姉ちゃん」

「ええ。アスカは気にしなくていいわ」

この仲間はずれ感よ…。



「失礼します。 団長、そろそろですので、仕度してください」

「ん? そうか、わかった。と言っても私は今更特にする仕度もないんだが…」

魔剣士団の騎士が師匠を呼びに来た。

私達もそろそろかな?

「いえ、団長は勇者様のエスコートを…。ご家族の方々は私がご案内致します」

「そうか、わかった。アスカ、ユウキはどうした?」

「シャーラと一緒にいるはずですが…」

「ユウキ様は既にシャーラ様と会場入りされております」

「わかった。 よし、アスカ行くか」

「はい、師匠」

ティー、みんなの事お願いね。 (任されたー!)



師匠と会場へ向かう。今回は以前のホールとは違うのかな…。

「それなりの人数が集まるから気をつけろよ。一応、反逆者共の頭は潰したが、追い詰められた事で、尻尾だけでも暴れないとも限らんからな」

あーそういう事か…。

「…はい。必ずメリアさんは守ります」

「あぁ…私よりお前のが傍にいられるし、ユウキは顔が割れているが、その姿のお前が魔剣士の勇者だとは知らん者のが多いからな」

「戴冠式の場を囮にするつもりですか?」

「メリア…いや、皇帝陛下のご判断だ。それに私もお前がいるのなら安心だからな」

「わかりました。師匠の期待を裏切るような事はしません」

「よく言った。それでこそ私の弟子だ」

念の為だ…キャンディ、霧になって出てきて。


❲はーい、ますたぁ?何かしら〜?❳

これからもしかしたら暗殺者か、それに類する者が動くかもしれないの。私は守りに徹するから。

❲わかったわ〜気絶、でいいのかしら?❳

うん。同時に怪しい動きを見せたのもすべてお願い。仲間だろうからね。 それと、ありがとうキャンディ。

❲任せて〜❳


霧になって先回りするキャンディを見送る。

「アスカ、お前今なにかしただろ?」

「わかりましたか?」

「まぁな…あまり無茶はしてくれるなよ?お前は大切な…あー…弟子、だからな!」

「ありがとうございます師匠」

「この前のベールとティアラも付けておけ。顔を隠すに越したことはない」

「はい」

ストレージから取り出したベールとティアラは師匠がつけてくれた。

「あぁ…可愛いなアスカ…」

「あ、ありがとうございます…」

面と向かって言われるのは恥ずかしいんだけど… (……)

私のベールを下ろした師匠は一言、”絶対にベールを上げるなよ“と。



師匠と入ったホールにはかなりの人が集まっている。所謂貴族って言うのかな。

こっちの序列とかに興味は無いし、関わりたくもない。私は自分のやるべき事をするだけだ。

修行中も師匠からきつく言われていた。貴族とは話すな、関わるな、何も受け取るな。と…。


ユウキとシャーラ、聖女様は既に数段高い場所、メリアさんの座るであろう玉座近くに待機してる。

私は師匠に案内されて玉座のすぐ傍に立つ。


その後、師匠は下がり玉座の後方へ待機。数名の魔剣士団の人達もいる。

探索では鑑定と違い、見ても貴族の中から反乱を企ててそうな人は判断がつかない。ただ…おかしな場所にいる奴はすべてチェックしておく。

こうすればキャンディと情報は共有出来るし。

だけど…陛下を守るための人かもしれないから最終判断は動きを見せてからになってしまうな…。

❲ますたぁ、任せて〜位置は把握できたわ〜。私が見逃してたのもいたから…ありがとう〜❳

多分、隠蔽スキルが高いんだろうね…。 ❲ええ〜❳


入室したメリアさんは玉座へ座る。堂々としててかっこいいな…。


うちの家族達は…あれって来賓席かな?そこへ案内されてるね。ティー大丈夫? (問題はないの)

ティーも師匠の話は聞いてたよね。 (うん! ここはティーが守るの!)

心強いよ。

キャンディは部屋中に…みんなには見えない霧となって警戒してくれてる。 ❲もう安心していいわ〜❳

ありがとうキャンディ。


まだ回復しきらない先代様も、座った状態でだけど、段上にいる…。

ただあっちはユウキやシャーラのが近いから任せてもいいだろう。


聖女様が豪華な王冠の載せられたトレーのような物を持ち、先代様の元へ、先代様は王冠の横へ自分の着けている指輪を外して置く。

聖女様は一礼した後、それを持ってメリアさんの元へ移動。

また一礼した後、王冠をメリアさんへ…。 動いた!

「ティー! キャンディ!」

私はメリアさんと聖女様の前に移動し、庇う形で段上だけ魔法防壁で包む。


キキン、キン、キン…っと四方から何かが魔法防壁に当り、落ちる音がする。

騒ぐ貴族達。数名が隠し持っていた武器を抜いて動いたけど、すぐさまキャンディの霧に巻かれて昏倒。

それを見て逃げ出す素振りを見せた者も同じように倒れる。

天井からは黒装束の者が何人かボトボトと落ちてきた。 


うちの子達もティーの張った魔法防壁で包まれてる。

あちらへの攻撃は流石になかったか。よかった…


「落ち着きなさい!」

メリアさんの一声で大騒ぎだった貴族達は静かになる。

「アリッサ、捕縛を」

「はっ。 気を失っている者をすべて縛りあげろ! 持ち物もすべてチェックしろよ」

「「「「はっ!」」」」


「お騒がせして申し訳ありません。反逆者の残党処理に巻き込んでしまいましたね」

ざわつく貴族達。


キャンディ、これで全部? ❲そうね〜、攻撃した者、不審な動きをした者、武器を隠し持っていた”敵"は全部よ〜❳

ありがとう。念の為このまま警戒をお願いしてもいい? ❲もちろんよ〜ここで手を引いて、もし討ち漏らしがあったら、ますたぁに顔向けできないもの〜❳

お願いね。


ティーもうちの子達を魔法防壁で包んでくれてありがとう。 (ふっふーん! ママのマネしたの!)

かっこよかったよ! (あいっ! ふっふっー♪)


その後は滞りなく戴冠式は進み、メリアさんは王冠を聖女様に頭へのせられ、指輪をつけ…無事に戴冠式は終了。


魔神討伐のメンバーとして聖女様、シャーラ、それにユウキも紹介される。

「そして…魔剣士の勇者様も」

え…でも私姿が違うから…。

「こんな事もあろうかと警戒し、ずっと本来の姿を隠しておられましたが…今日、初めて本来のお姿で私を守ってくださいました…」

そういう設定なんだ…。

メリアさんに手を取られて、ユウキ達、討伐メンバーの元へ。 何これ恥ずかしっ!

ベールがあるだけまだマシだったなぁ…師匠のおかげだよ。 (そういう理由かな…)


貴族達からは何やら色々言われてるみたいだけど、何も耳に入ってこない。

メリアさんはみんなへ色々と話をしていたけど、緊張がマックスで一切覚えていない…。



控室というか例の豪華な客間に戻ってようやく一息つく。

「はぁ…めっっっちゃ緊張したよ…」

「姉ちゃんは修羅場のが冷静だよな」

「そうね〜ますたぁは指示も判断も的確だから私は動きやすいわ〜」

霧から戻ったキャンディも一緒に客間にいてくれる。

「キャンディ、ありがとう! 本当に助かったよー」

緊張から開放されたのもあって、つい抱きついて甘えてしまう。

「あぁっこれ…何かに目覚めそうだわ〜。 大丈夫よ、ますたぁ…。私が守るから〜」

「うんっ…ありがとうキャンディ」

「ふわぁ〜ますたぁが可愛い…庇護欲が〜」


「甘えてるお姉ちゃんとか初めて見たかも…羨ましい…」

「くぅ…私にはあの包容力は真似できないわ…悔しい」

「アスカ、ほらおいで?ティアねえ様だよ〜?」

「ティアねえ様ー。私頑張ったよね?」

「うんうん。お疲れ様。よしよし…。 こ…これはヤバいよ!」

「「………」」

「ふっ…」

「ねえ様!」

「負けたっ…?」

「ちょっと〜私の役とらないで〜」

「少しくらいいいじゃないー」


「相変わらずでなんかもう安心感さえあるよな…」

「ママがいつも以上に可愛いぞ…」

暫くキャンディとティアねえ様に甘やかされて過ごし、正気に戻ってまた恥ずかしくなったのは少し後の事だった。





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