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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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332/771

見てるから



翌日、いつも通り未亜、ユウキと登校したんだけど…。

校門近くで待ち伏せてた麻帆に捕まり、腕を掴まれて引きずられるように空き教室へ。

理由はわかってるから未亜たちも助けてはくれないし、私も抵抗はしなかった。


「………」

「麻帆、朝から何…?」

俯いたまま、 黙って! とでも言うように手で制止される。

麻帆が話し始めるまで待てってことかな。



たっぷりの沈黙の後、麻帆は…

「ありがとうアスカちゃん。奈々を助けてくれて…私の事も…救ってくれて」

「なんの事…」

「とぼけないで! お願いだから…」

「……」

「アスカちゃんしか居ないのよ…そうでしょう?」

「どうしてそう思うの?」


「何とかするって走り去ったじゃない! その日の夜に元気なあの子から電話が掛かって来たのよ?他に誰が…誰がいるって言うのよ!」

「それを言うために私をここへ?」

「あくまでもとぼける気?」

出来るならそうしたいけど…。仮に麻帆は誤魔化せても奈々は絶対に無理だろうなぁ。


「私、昨日アスカちゃんを追いかけて走ったの! 当然追いつけなかったわ。でも…あの病院で確実に何かが起こっていたのよ、あの違和感は勘違いなんかじゃない。それに…病院の前で、誰もいないはずなのにアスカちゃんがいた気がしたの」

あれってやっぱり何となくでも感づいてたのか…。 (仲がいいと隠蔽は多少効きづらい?)

それ初耳! (それ以外に理由が思いつかないの。ママの隠蔽は完璧なのに)


「聞いてるの?」

「う、うん…。麻帆は、どんな答えを聞いたら納得するの?」

「…わかんないのよ。何を聞いても信じられないかもしれないし、信じちゃうもしれない…何もわからないのよ。 昨日、自分の感じた事でさえ信じられない。奈々からの電話さえも夢だったかもと思えてくるのよ」

「奈々からは私にも電話はあったよ。看護師さんに隠れて電話してきてたみたいで慌ただしかったけどね」

それっきり麻帆は黙り込んでしまった。



「ねえ、麻帆。一つ提案」

「うん、何?」

「今はこの話やめない?」

「え?」

「奈々が元気に登校してきてからでもいいじゃない。心配なんだよね?奈々の事。私もそうだからわかる」

「……」

「だから、奈々が戻ってきて…いつもの3人がそろったら改めてこの話をしよう?」

「その時は全部話してくれる?嘘つかない?」

「麻帆も奈々もそれを望むならね?だって私達親友でしょう?」

「そうね。わかったわ。確かに今、私が一人で聞いたら奈々が暴れそう」

「仲間はずれにされた! って?」

「そうそう。奈々ってそういうの一番嫌がるし」

「だね」

「うん。 わかった…それまでは私も何も言わないわ。 ただし! ずっと見てるから」

「え、何…そのストーカー宣言…」

「違うから! 絶対アスカちゃんの事だからボロを出すと思うのよね」 (確かに!)

確かにじゃないから!


「ほら、今も…なーんか違和感があるのよね。前からも時々そういう事があった気がするんだけど」

麻帆って頭が良いから厄介だわ…。

「ホームルームには間に合わなかったけど、1時限目には間に合うから行くわよ。昨日も私は午後がサボり扱いで叱られたんだから」

「そうだね」

「誰かさんはしれっと6時限目には居たらしいじゃない?腹立つわ!」

「酷い…」

「どっちが!?私を置いて一人で戻った癖に…」

「それは…」 (ママストップ! 誘導尋問)

あっぶなぁ…ありがとうティー。


「ちっ…。アスカちゃんなら引っかかると思ったのに。いいわ、取り敢えず授業に戻りましょう」

舌打ちしたよこの子。恐ろしい子!



それから私は麻帆に付きまとわれることになり、気が抜けなくなるのだった。

授業中もチラチラと振り返るし、休み時間はトイレまでついてくる始末。

個室まで入ってこなかったのはせめてもの救い…。


そしてお昼…。昨日忘れていったお弁当箱を返して、一応お礼も言ってもらった。

なんだけど…

「ねぇ、麻帆…お昼ごはんくらいゆっくり食べたいんだけど…」

「食べていいわよ?邪魔してないじゃない」

いや…確かに物理的にはそうかもしれないけども。精神的にはくるものがあるよ?

至近距離で向かい合ってる上に、ずっと睨むようにこっちを見てるんだもん。 (スキを見せたら負け…)

これなんの戦いよ…。

「…!?」

やばっ…。


誤魔化すようにスマホを見たら、通知?

奈々からか…。

検査の結果は完全な健康体で、むしろ前より元気になったかも! と…。

それは気のせいだと思うけど。 念の為もう数日は様子見で入院だからつまんないって愚痴ってるな。

たまには大人しくしてたら?って送信。

”無理、早くアスカの手料理が食べたい“ と。 食い気ばっかりか…。

私じゃなくて料理だけでいいのなら有料で送ります。と送信。

は?………何を言ってるの恥ずかしい! まったく…冗談がすぎる。 (なんてー?)

大好きな人の手料理を一緒に食べるから美味しいってさ。私がいなかったら意味がないんだって。 (ほぉー)

こんな歯の浮くようなセリフどこで覚えてくるんだか。


「そっちも奈々からメール?」

「うん。麻帆にも?」

「ええ…器用なことするわね」

「本当にね。 なんか…3人で一緒に話しながらお弁当食べてるみたいになってきたね」

「そうね…一緒にいても話題を振るのはいつも奈々だったものね」

一番騒がしくて、話し好きな奈々が居ないだけでこんなに静かで…。

その奈々がメールをくれるだけでこんなに賑やかになる。


「私達には奈々が必要ね」

「当然。静かすぎて困るよ」

「居たら居たで騒がしいんだけどね…」

「麻帆は口が悪いよ?」

「アスカちゃんは親友に隠し事ばかりしてる悪い子だけどね」

「…なんの事かな」

「別にー。奈々が戻るまでそうやってすっとぼけてると良いわ。あの子が戻ったら覚悟しなさい!」

「はいはい。お手柔らかに…」


奈々からのメールのおかげかその後は午前中ほどストーキングされなくなってほっとした。

なにか奈々が言ってくれたのかもしれない。




放課後は用事があるからって、早く帰ってきた。別に逃げたわけじゃないよ?

今日は母さん達をアキナさんのところへ送らないといけないからね。

プラス、ちょっとティーと実験をするつもり。


「母さん達は準備いい?」

「おう、大丈夫だ」

「…やっぱりこっちにいたいよ」

母さんは送るって言ってからずっとそう言ってる。


「私も出来るならこっちにいて欲しいよ?でもアキナさんとの約束を破る訳にいかないじゃない」

「そうだけど…時間戻せるんだよね?」

「一応ね…今からでも二月分くらいは戻すことになるんだし」

「だったら、週末にみんなで行こうよ!」

「私も週末は戴冠式があるの! それに…時間を戻す事の弊害がないか知っておきたいのよ」

母さんと父さんは首を傾げてるけど。 (ママ、いいよー)

ありがとう。じゃあ時間を戻して転移するからね! (はーい!)



両親を魔力ドームで包んで転移。フィリアータでの2ヶ月分遡る。


ーーーーーー

ーーーー

ーー



ドラゴライナ王国、アキナさんにもらったお屋敷の二階。

「おかえり、ナツハ、アスカちゃん」

「お祖母ちゃん! 来るのわかった?」

「ええ。それはもう」

さすがだよ…。

お祖母ちゃんは優しくハグをしてくれた。


「お母さん、ただいまー!」

「お、お邪魔します」

父さんは色々ありすぎて腰が低いな…。


ティー、どんな感じ? (地球に本体、ドラゴライナに実体のある分体、それぞれ置いて確認しました!)

大丈夫? (地球の方はなーんにもなし。いつも通り。ドラゴライナは…)

どうなったの? (リセットされた! ママが転移した瞬間、分体とのリンクも切れて無かったことになったの)

他の分体は? (リンクせずに置いてあるだけのは異状なし。今はそれにリンクつないだの)

じゃあ時間を遡っても並行世界が量産されたりはしない? (うん! ただ気を付けないといけないことが)

分体にリンクしてるタイミングで転移したらそれが消えちゃう? (そゆことー)


それくらいなら、気にしなくても大丈夫かな? (うん。分体も別に消えても置き直すだけだから不具合はないし。ただドラツーだったらティーは泣くの…)

お気に入りだもんね。 (うん!)

どうしよう、ドラツーは回収したほうがいいよね? (うん、お願いー)


「アスカちゃん、ティーちゃんとのお話は終わったかしら?」

「うん、お祖母ちゃん」

バレてたね。 (お祖母ちゃんだし!)

内容までは聞かれなかったけど。聞かれても話しにくい…。 (リセットされてるって?)

うん…。


「メイドにアキナを呼びに行かせてるから。すぐ来ると思うわ」

お祖母ちゃんの言葉通り、アキナさんはすぐに来てくれた。


「ちょっと久しぶり! さぁ…お姉ちゃんと元勇者は覚悟してね!」

「アキナさん、ごめんなさい。ドラツー置きっぱなしにしちゃって…」

「え?いいよそんな事! みんな興味津々だったけどね? だからアスカちゃんにもお願いがあるの」

「はい?私にできる事なら」

「式典の当日にドラツーを使わせてもらえないかな? 王国をドラツーで飛びながら国のみんなへお礼を伝えたいの」

「勿論かまいません」

「元々は私がドラゴン姿で飛びながらやるつもりだったのだけど、流石にしんどいからね」

確かにドラゴライナ王国はめちゃくちゃ大きいもんね。それを飛びながら演説とかしたら疲れちゃう。


「でしたら、その時だけは外見をアキナさんのドラゴン姿に変えますね」

「出来るの?」

「はい。それくらいなら直ぐに」

「助かるよー」

喜んだアキナさんにもハグされてしまった。なんとなく私にお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって少し思った。


ドラツーを回収する為に一度だけ外へ出たけどそれ以外は特に何もせずに私は帰る。

来たばかりで帰る私に、お祖母ちゃんが”寂しいわ。また来てね“って言ってくれて…。

母さんと父さんはアキナさんに連行されていった。 (オツトメなの)

仕方ないねこればかりは。




自室へ転移して戻る。

「ママ、おかえり!」

「ただいま、ティー。実験に付き合ってくれてありがとね」

「うん。ティーも気になってたから!」


今日の夕食は未亜が作ってくれるそうだから任せてある。

リア達も手伝うって言ってたし。 (キッチンが騒がしいの)

問題? (ううん、ママに美味しいもの作るってみんなが頑張ってる!)

そっかぁ。有り難いね。そうなると、手伝わないほうが良さそう? (うん、ティーとここで待つの)

わかったよ。 じゃあ私もやっておきたい事を済ませよう。 (何するの?)


メリアさんの戴冠式にね、プレゼント渡そうかと。

もう命を狙われたりはしないとは思うけど、念の為だね。心配だから。 (またママはそうやって…)

え?ダメ? (ダメではないの)

ならいいじゃない。 

折角だから師匠と聖女様にも渡したい。お世話になったからね。 (……フラグが強固になっていくの)

うん?


メリアさんのは透明な魔石をダイヤモンドカットにして、王妃様と同じように効果はてんこ盛り。皇帝陛下だし。

デザインはシンプルなネックレスに。豪華なのは持ってそうだし…。


師匠のも魔石は同じで、効果もいつも通りの三点セット。デザインは悩んだけど、指輪にした。

師匠ってかなりアクティブに動き回って戦うからネックレスは危ない。

わざと胸元は開けてるし…。

それにごつい指輪をアクセサリーとしていつも着けてたから、細いのにすれば邪魔にはならないはず。


聖女様のは向こうの教会のシンボル。こっちで例えるならクロスかな。少しデザインは違うけど…。

それのセンターに嵌める透明の魔石はみんなと同じ。効果も三点セットで。


後は渡す時に波長を刻めばいい。

「そういえばママ? 波長を記憶してる人でも渡す時に刻むのはなんで?」

「その方が喜んでくれるかな?って。目の前で自分だけの物になるって嬉しくない?」

「うん! さすママ!」

「後は、こういう物を渡すよ、いいかな?って確認も兼ねてる」

「へぇー。でもいらないって言うわけがないの!」

「そうなら私は嬉しいけどね」


作った魔道具は小箱に入れて包んでストレージへ。

後はシャーラだけど、これはユウキから貰いたいんじゃないかな?

部屋にいるね。ちょっとお邪魔しよう。 


 




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