よかったね
キッチンで誕生日パーティの片付けをしていたら…
「ママー、スマホなってる!」
リビングから呼ぶティーの声。
「アスカ、ここはいいから」
「うん、私もいるからいいよ」
母さんと未亜に任せてリビングのソファへ置きっぱなしのスマホを確認する。
奈々…。
「もしもし…奈々?」
“うん! アスカの奈々ちゃんだぞー”
「なによそれ…」
良かった…元気になったんだ。自分がやったからわかってても、やっぱりこうやって声を聞くと安心する。
“私の事、聞いてた?“
「うん、麻帆からね。事故に巻き込まれたって…無事だったんだね?良かったよ」
”私さ、あのままだと危なかったらしいんだよ?それが突然完全回復! 病院では奇跡だって大騒ぎ“
「そう。良かったじゃない」
”しかもさ、私だけじゃないんだよ。看護師さんが話してるの聞いたんだ“
「うん?」
”入院してた三割近くの人が元気になったって、しかも危なかった人ばっかり。あとは小さな子とかね“
「そうなんだ?」
“……私ね、夢の中でアスカに会ったよ。 もう大丈夫だから、私が助けるよ。って、手を伸ばして真っ暗な中にいた私を引っ張り上げてくれたの…それがすごく温かかったんだー”
「そう…変な夢ね?」
”そんな事ないよ! おっと…そろそろバレるかも。明日はまだ検査があるけど、その結果次第ではすぐ退院できるらしいから。 面会謝絶じゃなきゃ来てもらうのにー“
「そっか、残念…」
元気になったのにそこは解除されないのね。
”…私も麻帆もアスカには話したい事たくさんあるから覚悟しといて!“
「…なんかそんな言い方されるとやだなぁ」
”拒否権はないから!“
「はいはい。 お大事にね?あまり看護師さんに迷惑かけないように」
”わかってるよ! じゃあまたね“
「うん、またね…」
ふぅ…良かった。 本当に良かったよ…。
そのままソファへ倒れ込む。
「ママ…大丈夫?」
「うん。安心したら力抜けちゃった」
「バレた?」
「どうだろう…わかんないや。でも後悔はしてないよ」
「そうならいいのー」
甘えてくるティーを抱きしめる。ありがとうティー…。 (ふふー)
「あっ! ティーばっかりズルいわ。私もー」
「…アスカ何かあったでしょ?」
お風呂から出てきたドラゴン姉妹。
ティアねえ様には隠し事できないのかな?リア以上に鋭い気がする…。
「話したくないなら無理には聞かないけど、抱え込むのは良くないよ〜?」
「どういう事よ。アスカ?」
「あー…うん。 そうだね…後で話を聞きたい子は私の部屋に来て。話すから。みんなにもそう伝えてくれる?」
「今聞きたいのにー!」
「リア、話してくれるって言ってるんだから待ちなよー。それが大人の女だよ?」
「うっ…わかったわよ! 私は大人のいい女になるんだから」
「500年早いね」
「なによ! そんなにかからないわよ…精々100年くらいよ」
いや長いな…。 (ドラゴンスケールだし)
頭の中の考えを纒めたいし、お風呂に入ろう…。ティーは一緒に行く? (行くー)
こういう時はお風呂に浸かるのが一番。
ティーと二人でのんびり湯船に浸かり、今日の事を思い返す。間違った事をしたつもりはないし、後悔もしてない。
うちの子達に話しても恥ずかしい事なんてない。
ちゃんと話せるように纏めた。
うん、よしっ!
お風呂を出て部屋に戻ると一家全員集まってた。こんな事ならリビングで良かったじゃない…。
まさか両親まで来ると思わなかった。
みんなに今日あった事、そして私がした事を全部話した。
ユウキは諦めと呆れが半々って感じ。
「姉ちゃんらしいと言うか…バレても知らないからな?」
「それは覚悟の上だよ。秘密を守ることより、奈々と麻帆のが大切だったから」
「姉ちゃんがいいならいいけどさ」
未亜は純粋に心配してくれた。
「お姉ちゃん大丈夫だった?そんな大規模なことして…無茶しないでよ…」
「ごめんね。一応ティーには許可もらったから」
「そっか…奈々さんが元気になってよかったよ」
リアは、怒り半分呆れ半分。
「傍にいないとすぐ無茶をするんだから! アスカらしいけど…」
「心配かけてごめんね」
「いいわよ。アスカが決めてやったって言うなら私は何も言わないわ」
ティアねえ様には叱られてしまった。
「私には街で魔法使うなって言ったのに自分でそれを破ってたら説得力ないよ?」
「緊急事態だったから…」
「気持ちはわかるけど。 みんなが目を離すのが心配っていうのがよーくわかったよ!」
シエルは心配しつつも私のした事を肯定してくれた。
「お姉様、お疲れ様なの。大切な人を助けたお姉様はやっぱりさすがなの」
「ありがとうシエル…」
「でも、もう無茶はしないでほしいの…」
レウィは全肯定だった…。
「主様はさすが!」
「ありがとね?」
「わう! 何処までもお供します」
両親は…
父さんにはげんこつ、母さんにもひっぱたかれた。
どちらも私じゃなく両親へダメージがいってたけど。
「あのな?友達が大切なのはわかる。でもな…魔法はダメだろ。しかもそんな大規模に使いやがって」
「そうだよ! せめて友達だけにできなかったの?」
「ごめんなさい…。奈々を探してる過程で見つけたのが小さな子とかで…私の友達だけ助けて他の子を無視していいのか、って考えた時に…答えは否だったんだ」
多分それをしてたら後悔したと思うし。
「どうするんだ?多分騒ぎになるぞ?」
「だよね…そんな奇跡みたいな事が起きたら、世間が騒ぐよ!」
「ごめんなさい…」
そこまでの大事になるとは考えもしなかった…。
「大丈夫なのー!」
「え?」
「みんなはティーがなにか忘れてるの」
「ティーはアスカの子でしょ?知ってるわよ」
「うんうん。お姉ちゃんの大切な子…」
「なぁ…それってやっぱりアスカが産んだって事じゃないのか?」
「違う! ティーが言ってるのは、どうしてティーが自我を持ったかって事だよ」
「ユウキ正解!」
「それって…強制力の話?」
「そう。ママ関連で世界に大きな歪みが起きそうならそれを修正する。それが強制力!」
じゃあ、奈々や麻帆も…。 (そっちは無理ー)
えぇ…。線引きがわからない。
「じゃあ前のひったくり事件の動画がすぐに消されたりとかしたのも、もしかして…」
「うん。騒ぎが広がりそうなら不自然じゃない様に強制力が働くの」
あれもティーのおかげだっの?ありがとう…ティー。 (ふふーん。お仕事だし)
「それなら今回のも?アスカは大丈夫なの?」
「うん。ママと近しい人までは無理だけど、世間に大きく影響が出そうな事なら有耶無耶になるの」
「姉ちゃん、ティーがいたら無敵じゃん…」
「大切な子だし、心の支えだからそうかもね」
「そういう意味じゃ…。 まぁいいけどさ」
思わずティーを抱きしめる。本当にありがとうティー…。 (闇落ちしたらさすがにどうなるかはわからないの)
しないから。フラグにもならないから! (知ってるー)
闇落ちしてるのはどちらかと言えばうちの弟でしょう? (確かに格好は…)
よほど気に入ったのかずっとコート着てるからね。 (ママの渡した刀の鯉口を切ってはニヤニヤしてた)
危ないものを渡してしまったのだろうか…。実戦に耐えうるものにはしてあるからなぁ。 (それもう魔剣…)
それはそうよ?波紋部分には超高硬度に圧縮した魔石も使ってるからね。魔力を流しながら振れば赤い光の刃が飛ぶよ。 (何ソレ! かっくいいの…いいなぁ)
ティーにも専用の作ろうか。今は貸してるのだけだもんね。 (やった!!)
ティーのおかげで、なんとかなるんじゃないかって事で、両親も安心したらしくお説教は終わった。
ただ…別の事で納得してない人が一人。
「アスカ。怒らないから正直に言ってくれ。ティーは誰との子だ?」
「今の話を聞いてまだそれを蒸し返すの?ティーは元々私が作った安全装置の魔法なの。それが強制力を貰って自我を持ったって何度言ったら…」
「それならアスカはまだ処…」
ものすごい音がして父さんが殴られた。母さんに…
何言おうとした? (デリカシーが…)
「いい加減にしなさいよ夕夜! 言っていい事と悪い事があるでしょう?娘に向かって…」
「す、すまん…つい口が滑った」
「母さん、父さんの説教するなら自分達の部屋へ行きなよ。姉ちゃん達が寝れなくなるからさ」
ありがとうユウキ…。
母さんは父さんを引きずって部屋を出ていった。
「姉ちゃんも、あまり無茶してティーに負担かけるなよ?大切ならさ」
「うん…そうだね。肝に銘じておくよ」 (頼っていいのに!)
充分頼りにしちゃってるから。
「よしっ、今日から私もここで一緒に寝るよ!」
「はぁ?ねえ様は自分の部屋があるでしょ!」
「それはリアも作ってもらってるじゃない」
「あれは…ちがっ、そう。あれは倉庫よ!」
酷いよリア…。ちゃんとお部屋にしたのに。 (まぁまぁ…)
「いいなぁ、私も一緒がいい…」
「姉ちゃん、僕は部屋に戻るね! みんなプレゼントありがとう。大切にするよ」
ユウキはそう言うと返事も聞かずに部屋を出ていってしまった。
「うちは部屋に戻るの…レウィちゃん、たまには一緒に寝るの」
「わう?わかった!」
シエルはレウィを連れて地下の自室へ行ってしまった。
私の部屋に残ったのは…未亜と、揉めるドラゴン姉妹。 (ティーはいつも一緒!)
だね。離さないよ。 (離れないの!)
これ…ベッドも部屋も拡げたほうがいいよね? (追々?)




