アスカ反省する
「大事になっちゃった。身の危険があったから対処しただけなのに…」
アリアさんやギルドの人が冒険者を縛り上げていくのを見ながら慌てるアスカ。
外へブッ飛んだのも含め全員縛り終えた後、巡回中の騎士に城への使いを出し、ギルド職員から事情を聞くアリア。
「なるほど…ではこいつ等は陛下の客人に無体を働こうとしたと。で、ギルドの職員のお前たちは?」
「「………」」
「アスカ様の意向とはいえ側についていなかった私にも責はあるが、ここはお前たちの管轄だろう。なのにお前たちは何をしていたのかと聞いている!」
「何もしていません…見ていることしかできませんでした」
「それで…アスカ様に何かあったらどうするつもりだったのだ!!」
バン! っとテーブルを叩くアリアさん。
きっと自分のことも許せなくて責めてるんだろうな。責任感強い人だから…。
あのアリアさんがあんなに怒るなんて…全部私のせいだよ。
これは、止めないとギルドの職員さんがかわいそうすぎる。私のせいだし…。
「アリアさん、私が悪いんです、だからギルドの人を責めるのは…」
しかしアリアさんは首を振る。
「アスカ様がお優しいのはわかっております。でもここはギルドであり、彼らの管轄です。それに、これをそのままにしてはギルドの信用問題になります」
そんな大事ですか!?
どうしよう…私が暴れたばっかりに。でも抵抗しなかったら…。
そう考えたら、怖くなって寒気がした。流石にアスカでもあのままならどうなったか想像はつく。
でも女性しかいなかったギルドの職員ではあの冒険者に抵抗は無理なのもわかる。
だから責める気にはなれなかった。
「これだけの騒ぎなのに何故責任者が出てこない?」
「それが…今、当ギルドの責任者が不在なんです…」
責任者が不在?
「どう言う事だ?」
アリアさんの気迫に怯えきっているギルド職員はうまく答えられない。
「落ち着いてゆっくりでいいので説明して貰えますか?」
私が尋ねるがビクッとして余計に怯えてしまう。えー。ちょっと傷つくんだけど?
ユリネさんに後ろからコソッと声をかけられる。
「アスカ様。今アスカ様が声をかけると逆効果です。陛下のお客様なんですよ?」
ユリネさんにそう言われるが私自身はただの一般人だ。 (元魔王は一般人ではないなー?)
「なのでこのメイドにお任せください」
確かに今はユリネさんに任せた方がいいかもしれないと思い、お願いする。
「アリア様、少し私に任せて頂けますか?ちょうどお城へ向かった使いの方も戻られましたし」
「そうだな、この不届き者達の対処をせねば。話を聞いておいてくれ。任せる」
「はい、任されました」
アリアさんはお城から戻った使いのもとへ向かい指示を出し始める。
もしかしてアリアさんって騎士でもエライ立場の人なのかもしれない。
ユリネさんもすごいな…。
「それで結局、責任者は何故不在なのですか?何かあったのです?」
会話の相手がユリネさんに変わったことで少し落ち着いたのかギルドの人は話し始める。
「少し前になるのですが、当ギルドの上位の冒険者パーティが行方不明になり…。向かった場所的に、そこへ向かえる実力があるのがギルドマスターだけでして。その捜索へ向かいました」
「副ギルドマスターもですか?」
「そちらは今日、休暇でして…今呼びに行かせてます」
「そうですか、わかりました。ではそちらの方が到着してからにしましょう」
明らかにホッとしたように力が抜けたギルド職員さんに心の中で謝っておく。
「ところで、冒険者ってこんなに質の悪い者ばかりなのですか?」
「いえ、そういうわけではないんです。彼らはお昼になっても依頼を受けず、たむろしてまして…」
あぁーきっとアレだギルドの厄介者。普段から素行が悪く、そのせいで受けれる依頼も限られる。
そうなると稼ぎも悪いからまた荒れる。
不用意にうろついた私のせいだなぁ。でも私自身危なかったし…。
騎士さん達に引きずられていくチンピラ冒険者達。あの人たちは自業自得だけど。
ギルド職員の人達はなんとかしないと。
ギルドに一人の女性が駆け込んでくる。
「申し訳ありません、遅くなりました!」
誰だろう?仕事のできる大人って雰囲気の女性だけど…。副ギルドマスターかな?
その女性はギルドの職員さんから事情を聞き、アリアさんと話している。
せっかくのお休みだったのに、本当にごめんなさい…。
それからやっぱり副ギルドマスターだと名乗るさっきの女性に何度も謝られた。
冒険者達への聴取もあるので、最終的な判断は後日になるらしい。
結局このまま街を回る訳にもいかなくなりお城へ戻ってきた。
お城へ戻ると報告を受けたであろう王妃様に捕まり事情を説明することになった。
何故か王妃様にも謝られ、後で経過を教えてもらえると。
ギルドの職員さん達は悪くないからって伝えたんだけど…大丈夫かな。
後、王妃様からまた魔道具を頂いてしまった。
私に無理に触れようとすると、相手は麻痺するらしい。
「街へ行く前に渡しておけたら良かったけど」って王妃様に言われた。
今回の事で自分自身の警戒心の無さを思い知ったので有り難くつけておく。
ただなぁこの事未亜ちゃんにバレたらまた怒られるよね。
でも今回の騒ぎで、未亜ちゃんの言いたかったことが少しわかった。
こういう事を避けるための警戒心だったり、無防備でいないようにって話だよね。
それが私自身や、周りの人を巻き込まないことになるんじゃないかなぁって。
うまくできるかは…まだわからないけど。




