歳の差
ちょっとしたイレギュラーはあったけど、無事に帰宅。 (ママ!! よかった…)
ただいま、ティー。 (大丈夫だったの!?)
うん?戴冠式は延期になったけど、ちゃんと師匠達に挨拶して帰ってきたよ。 (そうなの?)
うん。 (向こうにまだ分体置いてなかったから状況がわからなくて心配したの…)
それはごめん…。 (勝手に行っちゃうし!)
だって部屋を追い出されてたんだもの。 (それはそうだけど…)
ねぇ、地下へ飛んできたのだけど、もう戻ってもいい? (ママは…まだ止めたほうがいいかも。ユウキだけきて!)
そっか…わかったよ。 でも、すぐには無理かも。 (えっ… あっ!! なんで連れてきたの!!)
いや、意図せずにと言うか、こっそり来たというか…。気がついた時には魔力ドームの中にいたのよ (こわいっ!!)
うん…流石に私もこんな事するとは思わなかったから…。 探索も使ってなかったし。
「ユウキぃ…来ちゃった!」
「…はっ?ちょっと姉ちゃん、なんで連れてきたのさ!?」
「ユウキが急かすから…気がついた時には手遅れだったんだよ」
「また来てくれるって約束してくれなかったからぁ、ボクが来たよぉ?」
「姉ちゃんすぐに送り返して! 今すぐ!」
「酷いよぉ。 やっと再会できたのにぃ…」
「シャーラ、危ないから勝手なことしたらダメだよ?」
「はぁーい…お姉ちゃん」
「は?お姉ちゃんって、どういう事だよ。年上じゃんアンタ!」
「ボクとぉーユウキが結ばれるからぁ?そうしたらお姉ちゃんでしょ?」
やっぱりそういう意味だったか…。 (こわいよぉ…)
「はぁ…僕まだ13だからな?」
「待つよ! って…あれ?魔神倒した時には14になってて、あれから2年たってるよね」
「僕たちは召喚から戻る時に年齢も戻ってるから」
「そんな…ボクだけ歳を取ったの!?」
シャーラが膝から崩れ落ちたな。無理もないけど…。
「ユウキ、ここは任せて。ティーがユウキを呼んでるから私の部屋へ行ってもらえる?」
「わかった」
地下からユウキが出ていったのを確認してシャーラを助け起こす。
「シャーラ、大丈夫?」
「…このままどんどんボクだけ老けていくの?」
「もうそれはないよ。こっちと時間の流れは同じだし」
「本当に!? 既に10も違うのに、これ以上は…」
そんな上だったのか…。 (おねしょた?)
何処でそういう知識得てくるのよ。ホントにもう! (麻帆!)
学校行ったら問い詰めてやる…。
「シャーラはどうするの?こっちに滞在する?」
「わかんない…勢いだけで来ちゃったから。陛下にも何も言ってないし」
「だろうね。 帰るなら送れるし、しばらく滞在するならそれでもいいよ?」
「戴冠式には来るんだよね?」
「もちろん。ユウキも連れて行くから」
「…なら一度帰る。ごめんね、迷惑かけて」
「気にしないで。 それにしても…私には普通に話すんだよね。そっちのがいいよ?ユウキが怖がってるし」
「そうなの!? でも…普通に話してるつもりなんだけど」
あのねっとり感、無意識なのか…。
「取り敢えず送るよ」
「うん…」
元気のないシャーラを帝都へ送り届けてすぐに帰ってきた。
戴冠式までには元気になってるでしょ。シャーラって切り替えは早いから。
さてと…ティー?私はいつになったら自室に戻れるのかな? (…ママのせいでもあるんだからね?)
なにが!? (はぁ…)
ティーにため息つかれた!
それから待つこと30分ほど。
みんなが地下へ降りてきた。
「はぁ…無茶苦茶疲れた。姉ちゃんは本当に自重して」
私は何を怒られているのかしらん?
「お姉ちゃん、大丈夫?何もなかった?」
「うん?一応、私達に出来る事はしてきたよ」
「そういう事じゃないのよ! 師匠って人とかに何もされなかった?」
師匠…はぅっ…師匠のお姫様抱っこ。 あれはヤバかった…。 (何があったのー?)
戴冠式って言うか、メリアさんが、何故か私との結婚式をしようとしてたでしょ?それで師匠が助けてくれたのよ。
お姫様抱っこで、お城のガラスを破って連れ出してくれたの。 思い出すとドキドキするのは何だろうね? そのせいか途中から記憶が… (……)
「…なんで、お姉ちゃんは顔を赤くしてるの…?」
「これ…絶対何かあったわよ!」
「アスカ、信用して送り出した私達の信頼を裏切ったの…?」
「えっ…。いや…無茶はしてないし、危険なこともしなかったよ。だよね?ティー」
「それは…うん。ちゃんと約束守ってくれたの」
「ほら!」
「「「そっちじゃない!」」」
「未亜姉ちゃん達の心配するような事にはならなかったよ。阻止したから!」
「じゃあアスカはなんで顔を赤くして恋する乙女みたいな顔してるのよ! まさか…男?」
「…ないから。姉ちゃんの周りは何故か女の人しかいないから」
「ならアスカはどうしたの?見たことない表情してるし…」
私そんな顔してる? (マジで恋する乙女みたいになってる)
嘘でしょ!? 相手は師匠だし…めちゃくちゃな人で男っぽいとこもあるけど女の人だよ? (ママも元は男の子)
そう言われたらそうだけど…。 もうあまりその意識は…
「未亜、シエルとレウィは?」
「二人はお義母さんと部屋で待ってるから大丈夫。 話をそらさないで!」
「アスカ、やっぱり私を向こうへ連れて行って。話さないといけない事があるから」
「あ、それなら! 土曜日にはまた行く約束になってるよ。戴冠式にはみんなも呼んでいいって言われてるから一緒に行こう? 嫌じゃなければだけど…」
「そういう事なら、その時でもいっか」
「ねえ様、私も協力するわよ!」
「心強いよ!」
「私も…」
「当たり前よ。未亜だって同志でしょう?土曜日までに作戦会議よ!」
「うん!」
この子達は何を盛り上がってるのだろうか…。
「こんな事で戴冠式を無事にやれるのかよ…」
「どういう事よ、ユウキ。お世話になったメリアさんの戴冠式なのに縁起でもないよ?」
「…なんでもないよ(元凶に自覚がないのは良いのか悪いのか…)」
「ユウキ、どんまいなの」
「ありがと。ティーも今回はお手柄だったよ」
「意味なかったけどねー?」
「確かに…即、自分で戻ってきたしな」
「ユウキ、ティーが転移魔道具を使ったのってユウキの指示だったの?」
「そうだよ。もしもの時はティーなら姉ちゃんのストレージにもアクセスできるし」
「安全対策はしてあるとはいえ、ビックリするから今度からはちゃんと話してね?」
「わかったわかった…。余裕なかったんだって」
確かに、突然結婚式とか…心の準備も何もなかったから助かったけど。 (結婚式はよかったの?)
いや、考えても無かったからね。メリアさんはどういうつもりだったんだろ。
対外的な理由でもあったのかな。私達は一応勇者だし…それならそう言ってくれれば出来る事ならしたのに…。 (ママは、メリアさんに好かれてるって理由には行き着かないの?)
えぇ!?そういう対象としてって事よね? (うん)
ないない! だって、皇女様…今や皇帝陛下だよ?釣り合わないし、そもそも今は同性だよ? (そうだけど!)
それに、フィリアータみたいに同性婚が当たり前じゃなかったと思うよ。 (知らないだけ?)
うーん、向こうに3年以上いたけど、そんな話聞いたことないなぁ。 (でも皇帝陛下なら何とでもしそうだよ?)
それで私と結婚って? (そうそう)
無いでしょう。だってそれならまずハッキリと告白されて、それからデートを重ねたりとか、ちゃんと順序があるじゃない。 (……ママはハードルが高いのか低いのか…)
……?
「姉ちゃん、アイツは?」
「シャーラ?向こうへ送ってあげたよ。また戴冠式には会えるし。でもユウキ、アイツって呼び方はやめてあげなよ」
「だって…怖いんだよ! 神出鬼没だし、話し方不気味だし!」
「ユウキの事を好きなだけみたいだからそんな言い方してあげなくても…少しくらい気持ち考えてあげたら?」
「…絶対に姉ちゃんだけには言われたくねぇ…説得力のかけらもないからな?」
なんでよ…失礼ね。シャーラは私にユウキへの気持ちを素直に話してくれたんだから。 ((あーなるほど…でも黙ってよーっと))
それにしても、師匠やメリアさん達に何事もなくて本当に良かった。
ティーのおかげでまたいつでも師匠に会いに行けるし。ありがとね。 (うん…)
なんか元気ない? (そうじゃないけど…ママが色々と心配になったの)
ごめんね?いつも心配かけて…。 (大丈夫! ティーがついてるの)
心強いよ。ティーも私に頼っていいんだからね? (あいっ!)
母さんと父さんにも向こうでの出来事を話し、無事だった事で安心した母さんにまた抱きしめられた。
おかえりって。 帰ってきたって実感してホッとした。
その母さん達は戴冠式には来られない。
心配だから行きたいって母さんは言ってたけど、アキナさんの手伝いがあるから、そっちを優先してもらわないと。
約束だからね。
後は…そうだ、学校!
「母さん、学校へは連絡してくれたの?私達休むことになったけど」
「もちろん! 未亜ちゃんもアスカ達が心配って家にいてくれたからね」
「そっか、ありがとう」
また奈々達に心配かけてしまったかな…。明日また謝らないと。 (今日は奈々もお休みだったの)
そうなの?珍しい…。あの子、身体は丈夫で滅多に風邪引いたりもしないはずだけど。
ズル休みかな? (心配なら見てくる?)
いいよ。もし、休んでるのなら申し訳ないし。 (はーい)
私がこの時の判断を悔やむ事になるのは後になってからだった。




