されて初めてわかる事
「ティー! 大丈夫?」
「うん、魔道具にママの貯めた魔力が残ってたから楽だったの…」
「ここって…家の地下?」
「うん。帰ってきたの」
私のストレージから転移魔道具を出して使うとか…びっくりしたぁ。
「あれ、じゃあ…ユウキは!?」
「ユウキはママが魔道具渡してるでしょ?」
「あ…そっか。 いや、でもなんで急に転移なんて…危ないじゃない!」
「…危なかったのはママ!! 緊急事態だったの!」
「なんで…陛下の戴冠式にはちゃんと出ないと…」
「はぁ…あれは戴冠式なんかじゃないの!! ママとメリアさんの結婚式!」
「うぇぇ!?私?」
確かにそれっぽい雰囲気だったけど、なんで私とメリアさんが…?
そんなこと一言も言われてない。
「アスカ!! 帰ってたんだね…ってどうしたのそのドレス。花嫁みたい! 可愛いー!」
「ティアねえ様、ただいま」
「おかえりー無事で安心したよ! みんなも待ってるから! 途中からティーの反応がなくなったからみんな心配してるよ? 特にお母様と未亜が…」
マジか…。
慌てて地下から自分の部屋へ…って皆ここにいるのね。
「アスカ!! よかったわ。 ほら、無事じゃない。だから言ったのよ。 ん?待って…何よ、そのドレス…」
あぁ、部屋で着替えるつもりだったから…。
「お姉ちゃん、よかったよぉ…でも本当にどうしたの?花嫁さんみたいなかっこ…う…?花嫁ぇ!?」
「お姉様キレイ!」
「主様おかえりなさい!」
「みんな、ただいま」
「アスカぁ…よかったー! ユウキとティーちゃんは…?」
「ただいま、母さん。私とティーだけちょっと先に帰っただけだよ」
よくわからないままだけど…。
「無事なんだね?」
「うん。危ない事が起きてた訳でもなかったからね」
「ママ、よく言うよ…一番危なかったのはママなの!」
「…アスカ。私を向こうへ連れてって…」
地下から、ティーと一緒に私の部屋へ上がってきたティアねえ様から見えちゃいけないオーラが…何事!?
「ティーちゃん、お姉ちゃんが危なかったってどういう事?」
「いや、別に命の危険とかなかったよ? ティー、今回は私、無茶とかしなかったじゃない!」
「そういう意味じゃないの…ママは…」
「ティー、ゆっくりでいいわ。何があったか話して。アスカはちょっと下にでもいってて!」
えー酷いよリア…。
みんなに廊下へ追い出されてしまったので一階へ降りる。
リビングでは父さんがテレビ見てるね。ここだけ平和だなぁ…。
「ん…アスカか?おかえり…ってどうした、その格好…? んー綺麗になったなぁ。流石母さんと俺の娘だな!」
父さん…。
「なんだよ、そんなジト目を向けないでくれ…それ地味にダメージが…。せっかくのウエディングドレスが台無…ウエディングドレス!?おい、アスカ! 誰と結婚したんだよ!」
あぁもう! あっちもこっちもうるさい!!
洗面所へ駆け込んで鍵をかける。長いスカートが邪魔だな!
「おい、相手にちゃんと挨拶させろ!」
「相手なんていないから! 戴冠式に出ようとしてただけだし!」
「そうなのか?ならいいけどよ…」
脱ぎ方のわからないドレスをストレージへ直接仕舞い、ストレージにもってる普段着へ着替える。
時間は…もう18時過ぎか。戻る時に時間遡らなかったんだな。
結局また学校休んじゃったなぁ。
母さんが連絡してくれてたらいいけど…。
それにしてもこのドレス。どうしよう…返さなきゃ。借り物だし。
それにちゃんとメリアさんの戴冠式には出ないと。
よしっ…。 (ママ、だ…)
ーーーーーー
ーーーー
ーー
転移の直前にティーの声がしたような?すぐ帰るからごめん…。
転移場所から、戴冠式をしてた場所へ向かい廊下を走って移動したんだけど、これは酷い…師匠が蹴飛ばした扉は見る影もない。
ほんと、馬鹿力なんだから…。
「姉ちゃん助けてーーー!」
「ユウキ! どうしたの?」
「え…はぁ? 姉ちゃんなんで戻ってきてるのさ! ティーは!?」
「大丈夫?ユウキどうしたの…?」
「…いや、もう僕は大丈夫になったというか…」
「「アスカ様!!」」
「戻ってきたか、流石アスカだな。よし、行くぞ!」
「え?…師匠、行くって何処へ?」
「説明は後だ! よっと…」
「はぅ…な、なにこれぇ…」
嘘…師匠にお姫様抱っこされてる…!?何この感覚、ヤバい…
「しっかり捕まってろよ?」
「は、はいっ…」
言われて師匠の首に腕を回す。何これ…すごい安心感…。
「アリッサ!! 待ちなさい!」
「…アスカは貰ってくぞ」
「アスカ様!?」
「姉ちゃんのバカ野郎…僕とティーの努力を…」
師匠は私を抱きかかえたままお城の窓をぶち破り外へ…。
ここ何階だっけ…まぁ師匠なら平気かぁ。
ふわぁ…なにこれぇ…。
「大丈夫か?」
「…えっ、はい…ビックリはしましたが…」
「…なぁ? お前、こんな可愛かったか?」
「ふえっ!?ちょ…ししょ…んっ……」
「お前は私のものだ!」
えっ…師匠…? 今、私…師匠に…きゅぅ…
…………
………
…
「おい、アスカ。起きろ」
「んっ……ん…。 ししょー?」
「そうだ、お前の師匠だ。 大丈夫か?」
目を開けると師匠の顔が飛び込んできた。
はぅ…ヤバい顔が熱い…どうしたんだろ私…。
「本当に大丈夫か?」
「は、はい!」
熱いし胸がドキドキしてマトモに師匠の顔が見れない!
「さてと…勢いでかっさらって来たのはいいが、どうしたものか…」
「師匠、何だったんですか…?」
「お前、本当に何もわかってないのか?」
「…戴冠式だって言われて着替えて、でも何故か結婚式みたいだなぁとか思ってたら、懐かしい聖女様に会えたので挨拶して…そうしたら師匠が扉を壊して入ってきて…」
「…そうだな?」
「師匠のドレス姿初めて見ました。綺麗でびっくりしましたよ」
「そ、そうか?似合ってるか?」
「はいっ!」
「そうか。お前も似合ってたのに脱いでしまったんだな?」
「戴冠式のために…と借りた物なので、汚す訳にいきませんし」
「おい、あれは戴冠式じゃないぞ?お前、あのままだったらアルストロメリアと結婚させられてたんだぞ?」
「…それティーにも言われたんですが、どういうことですか? 私、今は女ですし…そもそも、そうじゃなくても皇帝陛下と私なんかが釣り合うわけがありません。何がどうなってるんですか?」
「…お前本気か?」
「……?」
「はぁ……ったく! くそっ…」
「師匠?」
「帰るぞ、アスカ」
「はい!」
もう暗くなりかけた街を帰りは師匠と歩いて帰った。
ちょっと残念とかは思ってないよ?思ってない…。
少しドキドキしただけだし!
帝都のお城までは直ぐだった。師匠といたのはすぐ近くの空き倉庫だったらしい。
「アリッサ!! アスカ様は!?」
「ちゃんとここに居るだろう」
「…アスカ様には、なにも?」
「してない!! 自覚も理解もしてないヤツにそんな事できるか!」
「それは、どういう…?」
「後で話す。そこの聖女様も一緒にな? ユウキ、アスカの事頼むぞ」
「は、はい。 姉ちゃん大丈夫?」
「うん? お姫様抱っこってヤバいね?される側になって初めてわかったよ」
「……姉ちゃん殴っていい?」
「なんでっ!?」
ユウキは何を怒ってるのよ…。
「いいぞ、一発殴ってやれ。私が許可する」
「師匠!! 酷い…」
「いえ…止めておきます、痛いのこっちだし」
私耐性あるもんね?
扉も窓も壊れてるし、正式な戴冠式はまた後日仕切り直すって事で、その日に私達はまたお邪魔する約束をした。
5日後って事だからちょうど地球なら土曜日か。この世界は時間の流れが同じだし。
大騒ぎになった事をメリアさんに謝られて、戴冠式にはうちの家族も連れてきていいって言ってくれたから今度はみんなで来れる。
師匠となにやら話してたユウキはまだ怒ってる…。
よくわからないけど、後でちゃんと謝ろう。
「アスカ、自由に行き来できるんだからいつでも会いに来い。絶対来い。いいな?」
「はいっ! 師匠!」
「アスカ様、ドレスはそのままお持ちください。戴冠式の時にまた着て見せてくださいね?」
「わかりました…?」
「おい…」
「ドレスくらいいいじゃないですか。アリッサだって見たいでしょう?」
「それはまぁ…」
「結局私は何もわからないままですよぉ…」
「後で話してやるから。今は見送ってやれ」
「はぁい…」
「聖女様も会えてよかったです。また…」
「はいっ、私も会えて良かったです…ふふふふ…」
そういえば聖女様って笑い方がなんか怖かったんだ…。
「姉ちゃん、早く帰ろう。ヤバいから」
「わかったよ。せっかちだね」
「誰のせいだよ!」
「わかったから、怒らないでよ…」
あまりに怒るから急いで魔力ドームを展開。
転移…
気がついた時には遅かった。




