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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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人質



森を進む事十分ほど。

明るく開けた場所が見えてくる。

探索でも村にはそれなりの数の人がいるのがわかる。

私はつい探してしまう。あの人を…。



居た…師匠…。 遠目でも見間違えたりしない。忘れもしないあの姿。

長身で、長い赤髪をポニーテールにしてるのも変わらない、そしてあの人は鎧なんて着ない。

”重たくて動けないだろ?それに私のスタイルが隠れたら意味がない“とか意味のわからない事を言ってたっけ。

確かに師匠に攻撃を当てられる人なんてまずいない。 (ママは?)

それはまぁ…うん。



シスルさんを先頭に森を出て村へ入る。


「団長ーー! 支援物資とすっごい人達を連れて戻りましたよ!」

「シスルか。助かる…にしても早すぎやしないか?」

「空を飛んできましたから」

「あぁん?何をバカなことを…  ん…? お前…、アスカか?そうだよな…?私がお前を見間違えるハズがない!」

「はい…お久しぶりです。師匠」

飛びついてきた師匠を抱き止め…

…殴られた…酷い。

私は痛くないけど…。

「いってぇ! なんだよ、何なんだよ? やっと戻ってきたと思ったらなんで女になってるんだよぉ…しかも子連れ…」

「団長、部下たちが見てますから、取り敢えず移動しませんか?」

崩れ落ちてる師匠をシスルさんが助け起こす。

「そうだな…。それに、まずは人質の開放が最優先だ。アスカとユウキも来てくれたのなら心強い」

姿が変わってても一目で私だって分かってくれたことが一番嬉しかった…。 (さすが師匠)

うん…、うん!


詰め所になっているという空き家へ移動し、師匠から現状報告を受ける。

「子供二人を含め、四人が人質になっている。残る敵は5人。できるだけ敵も生かして捕らえたい。特に首謀者の二人はな。 アスカならこの状況どうみる?こちらの戦力は包囲網を解く訳にはいかんからな。数は少ないぞ」

「私に…任せてくれませんか?」

「ほう? 言うようになったな?」

「じゃあ…!」

「バカが!! 子供を含めた人質がいると言っただろうが! お前一人の力でなんとかなるとでも思ってるのか! あれ程言っただろうが! 力に傲るなと。そんな事もこの2年でお前は忘れたのか? それとも私に始末されるためにここへやってきたのか?」

「違います。師匠の教えは今も私の中に大切に刻まれています。 それでも! 任せてください。絶対に失望させませんから!」

「……一人も傷つけずにか?」

「はい!」

「敵もだぞ?」

「はい!」

「わかった。そこまで言うならやってみろ。失敗は許されんからな?いいか?絶対にだぞ」

「はい。大丈夫です。 師匠はこうも言いましたよね?力を使う時を間違えるな、と」

「ふんっ、わかってるならいい。やってみろ。 責任は私が取る」

「ありがとうございます」


「シスル、包囲している奴らへ手を出すなと伝えろ。包囲だけは崩すなよ」

「はい!」

「師匠、方法は聞かないのですか?」

「いらん。任せると言った以上、私はお前を信じるだけだ」

「ありがとうございます師匠…」 (かっけーの!)

でしょ?こういう人なんだよ。



数分後…


「団長、全員へ通達終わりました」

「よし。 アスカ、行ってこい」

「はい!」

「待て待てチビッコ…ついて行こうとするな。お前はここにいろ」

「えー?」

「ティー、大丈夫よ。ユウキと待ってて」

「わかったの…」 

「ティーは見とくから。姉ちゃんやっちまえ!」



詰め所を出て、私は皇子達の立て籠もってるという家の前に来た。

遠巻きに騎士の人たちがぐるっと包囲してて、確かに逃げ出すのは不可能だね…。

「おい! 早く酒と食い物を持ってこい! 子供がどうなってもいいのか!」

窓から子供を抱えて叫んでるのって…見る影もないくらい汚いけど皇子かあれ…。


家をまるごと魔力ドームで覆い、そのまま時間停止。

この中で唯一動けるのは私だけ…。


そのまま家の中へ。

まずは皇子に抱えられてる男の子を取り上げる。

可哀想に…、こんな小さな子を。

子供二人はいいとして、顔を知ってる皇子以外は犯人と人質の見分けがつかないから鑑定する。

そうしたら一目瞭然。 犯罪者はすぐにわかる。数も皇子含めて5人。かなり悪事に手を染めてきてるな…。

こいつか…宰相って。一番罪が多いのはどういう事だよ。

あまりの悪事の数々に、殴りたい衝動をなんとか抑えて、犯人たちを氷で固めてしまう。頭だけは残して…。


男の子と女の子だけは先に抱きかかえて魔力ドームから出る。

「うぅ…やだぁ…やめてぇ」

「大丈夫よ。 もう大丈夫…」

「…え?あれ…お姉ちゃん誰?」

「助けに来たよ。あなたのお姉ちゃんも無事だから」

「お姉ちゃん!」

下ろしてあげたら二人はぎゅっと抱きしめ合って泣いてる。

「怖かったね…もう大丈夫だよ」



「姉ちゃん、この子達は任せて」

詰め所から出てきたユウキがそう言ってくれる。

「うん。でももう終わってるから…」

後ろで魔力ドームは解除される。


「アスカ、お前何をした?」

「犯人達は氷漬けにしてます。ちゃんと生きてますし、話もできますから行ってください。人質の…この子達の両親は…」

「助けてください! うちの子達は?何処へ?」

「「パパ! ママ!」」

出てきた両親の元へ走り寄る二人。

「あぁ…よかった。無事だったのね!」


「アスカ、ついてこい」

「はい」

師匠と、騎士達数人と再度家の中へ。


「ふむ…確かに生きてるな」

「チクショウ、なんだこれは! 人質がどうなってもいいのか!」

「バカが。お前たちにもうそんな者はいない! 捕えろ!!」

「いえ、団長…捕えろって…もう動けませんよ?後はもう運び出すくらいしか…」

「…運びだせ」

「「「はっ」」」

騎士達に引きずられてる間も犯人達は喚き続けてたけど連れ出されていった。 

室内には私と師匠だけが残される。


「ふぅーーー」

「…師匠?」

「何も言うことはない。この数日かけて私が出来なかった事を、お前はやってのけたんだ。誰も傷つけずにな」

そう言って師匠はしっかりと抱きしめてくれた。


「それはいいんだけど…。 なぁ? これはどういう事だよ?しかも私よりスタイルいいよな?お前…」

「これには深い訳が…」

「聞こうじゃないか。それに約束、忘れてないよな?」

「約束って…傷物にした責任を取れってやつですか?でも私はこの通り女ですし…」

「…やかましいわ! お前が凱旋した時点で夫婦になる予定だったのに!」

えー何それ聞いてない…。 (わくわく…)


「それなのに…戦後処理のゴタゴタの間に居なくなりやがって。しかもそれから2年だぞ?2年! どれだけ待ったと…初めて合った時からツバをつけておいたのに…今さら引けるか!」

言い方…。

それからの師匠の言い分は理解したくない物だった…。


初対面の時、私は13歳だった。だからこちらでの成人になる15までは絶対に手を出すなとメリアさんに言われてツバつけるだけにしてキープしていたと。

でも、私とユウキの魔神討伐の旅が3年かかった事で、待ちくたびれた師匠は凱旋と同時に結婚したいとメリアさんに頼んだ。

でもメリアさんからの許可は下りずに、そのまま私とユウキは送還された…。

これにはメリアさんも想定外だったらしくかなり慌てたらしい。

目撃していた騎士から送還されたのだろう事だけは把握していたと。


「多分ですけど…召喚された目的を達成した事で、強制的に送還されたんだと思います。私達も気がついたら年齢も戻った状態で自宅にいましたから」

「そうなのか…。 ん?ちょっと待て! そうなると、今回も用事が済んだら送還されてしまうのか?」

「いえ、今回はちょっと特殊で…」

あちこちへ何度も召喚されてきた事や、それが原因で性別が変わった事、今回は自分の魔道具で転移してきた事を大まかに告げる。


「全く全然これっぽっちも意味がわからん…。 その身体、元には…?」

「戻れません…。性転換の魔法も保っても数十分だと言われました」

「ふむ…それだけあれば事足りるな」

「なんの話ですか!!」

「言わせるな! まったく…スケベな弟子め」

何がだよ!!



「団長、まだですか? みんな指示を待ってますよ!」

「…アスカ、この話は帰ってからだ。いいか、今度は勝手にいなくなるなよ?」

「わかりましたから…」

家から出ると、頭だけ凍ってない犯人たちが移送用の馬車の中で大騒ぎしてる。 (うるしゃーの!)

だねぇ。眠らすか…。 馬車へ睡眠魔法を放つ。


「おい、何をした?」

「やかましいので全員寝かせました」

「…そうか。助かる。 よし、帝都へ向けて出発するぞ!」

「師匠! 少し待ってください!」

「あん? まだ何かあるのか?」

「この辺りの調査が終わりましたから…盗賊12人、アジトに囚われていた人質26人、森を彷徨っていた孤児5人、どうします?」 (いつのまに…)

随時あの子達から報告は来てたからね。この森とその周辺に限っては探索終了。 (みんなさすがー)

だね。しっかりお礼を言わないと。


「……おい。待て、どういう事だ? 何をしてそうなった?」

「怒りませんか…?」

「内容次第だ」

「………」

「わかった! 怒らんから言え!」

「私の召喚獣の子達が見つけ、捕まえ、保護しました。今コチラへ向かってます」

「はぁ…私の弟子はどうなってしまったんだ? 師匠! 師匠! ってついて回っていた、あの可愛い弟子はどこへ行ったんだ?」

「ありませんよそんな事実! 捏造しないでください!」

「…そうだったか?」

「酔った師匠に、アスカぁ…アスカぁ…ってまとわりつかれた事実ならありますけど!」

「……」

「私、それ見たから知ってますよ。甘える団長はちょっと可愛かったです」

「なぁっ…おい待て! うそだよな?」

「いえ? 他にも見てましたよ?」

「はいー。私も見ましたよー」

「私もー」


「…おいアスカ…ちょっとこっちへ来い」

「イヤです!」

「師匠に逆らうのか…?」

「それはずるいと思います!」



「はぁ…姉ちゃんは相変わらずだな」

「…うん。ママらしい」

「そうだな。多分戻ったらメリアさんも参戦するだろうし」

「やっぱり…! 何があったのー?」

「メリアさん? 何時も通りだよ。魔神討伐に失敗して立場のなくなった皇子に襲われたのを身を呈して守ったりとかね?兄ちゃんは大怪我してメリアさんが看病してた。後は、今回まだ見てないけど聖女様も…」

「聖女様ってパーティ組んでたの?3人で?」

「いや、もう一人、斥候役がいたよ。 聖女様ってさ、非戦闘員みたいなものじゃん?」

「うんうん」

「そうなると、当時のアスカ兄ちゃんが優先的に誰を守ると思う?」

「聖女様」

「そういう事だよ。何度も何度も守られ、助けられた聖女様がおとなしくしてると思う?」

「思わないの…一番ヤバそうな雰囲気さえするの」

「当り。ただ、一番ではないな」

「そうなのー?」

「…ふふっ…ユウキぃ、みぃつけたぁ…」

「ひぃぎゃぁ!! なんで…なんでアンタがここに?」

「そりゃあ元勇者パーティの斥候なんて、こんな任務で重宝されるに決まってるでしょ?」

「確かに…。 って、それはいいからくっつくな!」

「なんでぇ?ボクとユウキの仲でしょ?」

「どんな仲だよ!」

「一緒に旅をしてぇ、同じ窯の飯を食べてぇ、一緒に寝てぇ…愛し合った仲ぁ?」

「最後のは知らないから!」

「いけずー」


(こっちもヤッバイの…ママの周りヤンデレばっかり…)

ティー、なにか言った? (ううんーなんでもないのー)







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