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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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爪跡



メリアさんに地図を見せてもらい、皇子達の立て籠もってるという村の位置を教えてもらう。

ただ、地図がアバウトすぎて…。方角がわかるなら、そっちへ向かって…あとは探索使うか。


「反逆者が逃走した後、アリッサ達が探し回って見つけたのが4日前。それまでは村で避難民としてコソコソと村人に混ざって支援物資を受け取っていたそうです」

なんとまぁ図々しい…。師匠達が見つけた事で慌てて村人を人質に立て籠もったのか。 (クズい…)

本当よ…。元々あの皇子は嫌いだったけど、更に嫌いになったわ。


「姉ちゃん、移動はどうする?ドラツー?」

「…置いてきちゃった」

「はぁ!?」

「ドラゴライナ王国の王族専用スペースに置き去り…」

「ママひどい!」

いや、ティーも忘れてたでしょ…。 (てへっ。分体送って見てくるの)

ありがと、手間かけちゃうね。 (いいの! ドラツー大切だから)

そうだね。またお世話になるかもしれないし。


「ママー、チョコ達はー?」

「急ぐとなるとそれがいいね。 メリアさん、召喚獣でいきます」

「わかりました。すぐに手配を…はい?今なんと?」

「ママの召喚獣! カッコカワイイのー!」

「……もう驚きませんよ私。 …大丈夫です」

その割に顔が引きつってるけど、言わぬが花か…。


「コホン…。 わかりました。案内に先程の騎士をつけますが、大丈夫ですか?」

「はい、数人なら問題ないです」

「ティーはクッキーにのるー」

「わかったよティー。  メリアさん、広い場所ってありますか?」

「えっと…それでしたら壊滅した騎士団の訓練場が手つかずなのでそこへ行きましょう」

皇子派閥の騎士団か。魔神に挑んで壊滅したってのは本当だったんだ。 (可哀想…)

うん…。無能な指揮官のせいで騎士団とその家族は大変な事になったんだもんね。



メリアさんに案内されて…当時、私とユウキが使っていた訓練場よりずっと広い場所へ。

「まだ、騎士団の再編成まで手が回っておらず、このような有様で…」

確かに廃墟みたいになってきてるな。人の出入りがないから雑草とか伸び放題。

「姉ちゃん、急ごう」

「わかった。 チョコ、クッキー、おいで」

2つの光の中からそれぞれチョコと小さなクッキーがでてくる。


「きゃぁっ… グ、グリフォン!?」

「大人しいので大丈夫ですから。クッキーも大きくなっていいよ」

鳥サイズから10メートルほどへ。

「…だ、大丈夫。 私は平気、私は平気…」

なんかごめん、メリアさん。 (目からハイライトか消えたの)

遠い目をしてなにか言ってるもんね…。


「陛下、準備できましたぁぁぁ…な、な、な…敵襲!?」

「落ち着いてください! 私の召喚獣ですから」

「なるほど…アスカ様の。召喚獣…」 (倒れたー)

……。私が悪いのかな? (違うけど!)


「急いでるのに、大丈夫かよこの騎士」

「ユウキ、流石にそれは失礼だから」

「それもそっか…姉ちゃんに慣れてきて感覚おかしくなってきた」

私は泣いていいかな? (よしよし…)



メリアさんが正気に戻り、騎士が目を覚ましてから出発の準備。

「荷物預かりますね」

かなりの大荷物だし。

「ありがとうございます。そういえば勇者様はストレージをお持ちでしたね」

そう言って兜を脱いだのは見覚えのある女性。魔剣士団の人だったのか…。

ごめん名前までは知らないや。 (ひどい!!)

だって、酔った師匠を送っていく時に、宿舎で何度か会っただけだし! (それは仕方ないの)

でしょ?一緒に訓練とかした訳でもないからね。


私とユウキ、魔剣士団の人はチョコに。 私が先頭で最後尾がユウキ。

もしもの為に魔剣士団の人は私とユウキの間に挟んだ。また気を失ったら危ない…。

ティーはクッキーに。

「姉ちゃん、あれってティーか燃えたりしないの?絵面がヤバいんだけど」

確かにアイスフェニックスの背に乗ってるとね…。見た目はそうかも。

「大丈夫よ。あの蒼い炎は見た目だけのものだから。 ただし…敵対者には超低温で襲い掛かる炎になるけどね」

「そうなんだ…」


「アスカ様、ユウキ様、ティー様、お願い致します。また頼ってしまう不甲斐ない私をお許しください…」

「気にしないでいいって」

「はい、任されました。メリアさんは先代様を診ててあげてください。無理しようとしたら止めてくださいね」

「わかりました! シスル副団長、任せましたからね」

「はいっ!」

副団長なんだこの人…。知らなかった。 (ママは大体知らない)

全く持ってそのとおりです…。



「勇者様、行き先は私がご案内します」

「わかりました。チョコ、クッキー行くよ!」

チョコは大きな翼をはばたかせて大空へ飛び上がる。

ティーを乗せたクッキーはチョコの少し斜め後ろをついてくる。


「姉ちゃん、案内人が気絶した」

「…なんとなくそんな気はしてた。地図である程度は把握してるし大丈夫。探索も使うから」

「わかった。でも無理しないでよ」

「うん。 ユウキは騎士の人が落ちないように見てて」

「了解」

それにしても…地上は随分と荒れ果ててる。


「まだ戦いの跡があちこちに残ってるな…当時は城の窓から見たくらいで、こんな風に上から見てなかったってのもあるけど。酷いな…」

ユウキもそう思うよね。

森は焼けてたり、木が切り倒された跡ばかりが目立ち、そこかしこに馬坊柵みたいな物の残骸や魔獣の骨、テントやら野営地の残骸が散らばる。

探索で見る限り、特にこっちはひどいみたい。侵攻ルートだったんだろうな。


「僕たちは途中から殆ど魔神のいる魔大陸にいたし、こっちの事はわからなかったけど、ここまで攻め込まれてたんだな」

「みたいだね…魔神を倒した後、進軍していた魔族や魔獣は一斉に消えたって聞いてたけど」

「言ってたね。僕らは転移魔法で帰ってきたから、帝都の外の事までは把握してなかったもんな」

そう言えばそうだった。メリアさんに渡されてたんだよね。もし命の危険を感じたら迷わず使うようにって。

一度しか使えない秘宝だったのに持たせてくれた。

魔神を倒した事で魔大陸の崩壊が始まって、已む無く使ってしまったのだけど、果たして良かったのだろうか…。 

今更か…。私にできる事でお返しをしよう。せっかく再会できたのだから。


「ママー、村が見えるの!」

「うん…本当だ。でも…人はいないね」

「そうなの?建物は割と残ってるじゃん」

「建物は残ってても、周りがこれじゃ、生活できないでしょう」

「それもそっか…。姉ちゃん、間違っても前みたいに再生しようとかするなよ?」

「…だめ?」

「「絶対ダメ!」」

うぅ…こんなの見たらほっとけないじゃない。 (もうあんなのは絶対ダメ! ティーは許さないの)

わかったよ…。 (約束?)

約束するよ。 (わかった!)


「…あれ?ここは…」

「お、案内人が起きた。 大丈夫?」

「は、はい。 すみません。空を飛ぶなんて初めての事で…」

「無理もないよ。それより案内よろしく」

「はいっ、任されました。 えっと今どのあたりでしょうか?」

「さっき無人の村を通り過ぎましたけど、わかります?」

「はい。 もうそこまで? でしたら半分は過ぎてます!」

意外と早く着きそうだね。 (ママ、探索に人のいる村が入ったの。10時方向!)

ありがとうティー。 チョコ、10時方向へ。


緩やかに進路を修正したチョコは加速。多分チョコにも目的地がわかったんだろう。

グォー。

やっぱり…流石だね。背中を撫ぜてあげると嬉しそうな感情が伝わってくる。


「上から見るとこの辺りはひどいですね」

「はい…激戦地でしたから」

「さっきの村の人たちは?」

「この辺りの侵攻ルート上の村や街の人たちは帝都か、別の街などへ避難させましたので志願兵以外の民間人の被害は殆どありませんでした。 でも…ここら辺りは未だ人の住める状態には程遠く…復興しようにも人手不足でして」

「そうですか…今から行く村は?」

「侵攻ルートを外れていた事で、避難をしなかった者たちが留まったんです」

「避難しなかったんですか?」

「はい…当時は火事場泥棒や、住む場所を追われた者が盗賊へ身をやつしたりと治安がひどく、村を捨てると二度と戻れなくなりましたから」

それでか…侵攻ルートからズレてるのなら大丈夫だろうと考えて残ったと。それはそれで危険だろうに…。

でも二度と故郷に戻れないって言われたら仕方がない気もする。

それにあの頃はどこへ行っても安全なんて言えなかっただろうし…。

この様子を見る限り、私達がもう少し遅かったら帝都でさえも…。

考えたくもない。


「それなのに…国の恥晒しがやっと平和を手に入れた民を人質に…」

声からも悔しそうなのは痛いほど伝わってくる。大丈夫、絶対助ける。 (無理は…)

しないよ、大丈夫。 (うん!)



「見えました! 村人達を驚かせてしまうので、少し手前に降りてください」

「わかりました」

チョコ、村の手前…ん〜そうだなぁ、あの無事な森へ降りてもらえる?ちょうど池もあるし。

うん、そこだよ。お願いね。


侵攻ルートから逸れてたってのは間違いないな。しかも大きな森が守ってくれてたみたい。

その森も侵攻ルート側はかなり荒らされてるけど…。



森へ降りた私達はチョコ達から降りる。

「ありがとう、チョコ、クッキー。 ラムネ、キャンディもおいで」


光の中から二人が出てくる。

驚いてるシスルさんはとりあえず放置。

「ますたぁ? なによここ〜臭いわ」

「臭い?」

「そうよ、争いと死の匂い〜。本当に臭いわ〜!」

「ごめんね、それなら戻っててもいいから」

「…ますたぁ、用事なんでしょ〜?それなら構わないから言って。こんな状況で呼ぶってことはそういう事よね〜?」

「ありがとうキャンディ。 みんなにはこのあたりの調査をお願いしたいの。チョコは土地の荒れ具合、ラムネは水の状態。クッキーとキャンディは森に潜んでる奴らがいたら捕まえて。なるべくなら傷つけないでくれると嬉しいよ」

「襲われたら〜?」

「その時の判断は任せる。あなた達の安全が最優先。でも…コレだけは知っておいて。戦いに巻き込まれて、やむを得ず身をやつした人もいるって事を…彼らを裁くのは私達じゃない」

「…わかったわ〜。クッキー、行くわよ〜」

後はあの子達に任せよう。


「姉ちゃん、何するの?」

「何もしないよ、今みんなにお願いした通り。それだけ」

「…わかった。 よし、村へ行くか」

「おー!」

「いや、説明を…」

みんなに身体強化をかけて森を移動する。師匠のいる村へ向かって…

歩きながらシスルさんにはキャンディ達のことは説明するよ。













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