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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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母の想い



「ユウキ、起きてる?」

ユウキの部屋の前でノックして確認する。

「うん、もしかしてさっきの? 入っていいよ」


ユウキの許可も貰えたことで部屋の中へ。 (ティーもー)

「…姉になってからユウキの部屋に入るの初めてかも」

「あぁ…そういえばそうかもね。 それより、どうしたの?朝早くから…。 召喚なら阻止出来てたよね?」

「うん、それなんだけどさ…」

今朝見た夢、そしてここ最近続いてる召喚元の座標がティーのお陰で判明した事を話す。


「…うーん。確かに気になるね。夢との関連はわからないけど、虫の知らせってのもあるし…」

「だよね。気になっちゃって…どうしたらいいかな?」

「姉ちゃんならそこへ飛べるんだよね?」

「うん。座標を魔道具へ刻めばすぐにでも」

「僕は…行ったほうがいいと思うな。ましてや僕らを指定してるのなら知り合いの可能性が高いよね?」

「そうだけど…確証はないんだよ?」

「それはそうだけどさ、仮にだよ?知り合いが必死に呼んでて…僕らが無視してさ、取り返しのつかない事になってたら?」

「…そんな事考えたくない」

「それならやっぱり行くべきだよ。逆にどうでもいい召喚だったなら帰ってこればいいだけだし。 ただ…行くなら両親や未亜姉ちゃん達には説明して、それから行くべきだとは思う」

「うん。それは当然だね」

緊急事態って事もあり得るのか…。それなら尚更行かないと!


「ティーはどう思う?」

「ママの判断に任せるの。ティーはついていくだけ!」

「そっか…なら姉ちゃん、落ち着かないから早いほうがいい。みんなに説明して行こう」

「わかった」



みんなが起きるのを待って、朝食のタイミングで一通りの説明をする。

「私もついていくわ! って言いたいところだけど…流石にダメよね。すごく心配なんだけど…」

「それは私も…でもティーちゃんが行ってくれて、こっちでも状況の把握が出来るのなら、まだ安心かも」

「私はアスカを信じて待ってるよ。せっかくこっちへ来られて一緒にいられる! と思った矢先にコレだから悔しいけど…理解して送り出すのも私達の努めだと思うから」

「みんな…ありがとう」

もっと説得が必要かと思ったけど…みんなが意外にも理解を示してくれたことが嬉しい。


「お姉様、それなら…これ持っていって」

シエルは動きやすそうな、異世界でも目立たない服を渡してくれる。

「ありがとう、助かるよ」

「お兄様にも…」

「僕も?ありがとうシエル」

「主様…無事に帰ってきて」

「うん。約束するよレウィ」

甘えてくるレウィを撫ぜてあげる。


「…待ちなさい。 私は許可しないよ! 行かせないから」

「母さん…どうして!?」

「自分の子供達を危険な目に合わせるような事、許可できるわけがないよ!」

「だけど…」

「勝手に呼ばれた世界なんだよ?アスカとユウキには関係ないでしょ!」

「関係なくなんてない! 私達を鍛えてくれて、今の私達の基礎にもなった大切な世界かもしれないの。お世話になった人たちがいるんだよ。その人達が危険かもしれないの! だからお願い…」

「…ダメだよ。行かせない」

そんな…。


「ナツハ、流石にそれはないぜ…。ナツハ自身、俺たちを呼んで異世界の事に巻き込んだよな?」

「…そうだけど。 夕夜はその事を怒ってるの…?」

「俺はそれを怒っても恨んでもいないさ。むしろナツハに会えたんだから感謝してるくらいだ」

「……」

「だからこそ言わせてもらう。行かせてやれ」

「ヤダ…」

「もしだ、もし…ミナ達が助けを求めてきたらナツハはどうする?」

「当然助けに行くよ!」

「だろ?そういう事だ。心配する気持ちは俺も当然わかる。父親だからな。 だけど、考えてもみろ」

「…なにを?」

「アスカやユウキの強さだ。俺達よりよほど強いのは解ってるだろ」

「そうだけど…何かあったら?」

「それは自己責任だ。それをわかってて行くってって言ってるんだ。その覚悟を俺達が邪魔したらダメだろう」

なおも渋る母さんを父さんは「任せろ」っていって自室へ連れて行った。


「まさか母さんがあんなに反対するとは思わなかったな」

「うん…それに私はちょっと父さんを見直したよ」

「私はお義母さんの気持ち少しわかるよ。出来るならいってほしくないもん…」

「それは私だってそうよ! 行くにしてもついて行きたいって思うわ。それでも…それは違うってわかってるから…」

「リアも成長したね、偉いよ。私と待ってよう?」

泣きそうなリアをティアねえ様が抱きしめてる。


「未亜お姉様、うち達がいるの…」

「わう…」

「うん、ありがとうシエルちゃん、レウィちゃん…」

すごく心苦しい。 だけど…私は行く。行かなきゃ。

仮に母さんが許してくれなくても!


「姉ちゃん、もう行こう。多分母さんは頭で理解したとしても感情では理解してくれないと思うし」

「…そうだね。座標だけ刻むから待って」

リビングのテーブルに魔道具と、魔刻刀。それにティーが書いてくれた座標のメモを取り出す。

「ママ、時間は一番最初に呼ばれた時のでメモしてあるの」

「わかった、ありがとう」

そうだよね…緊急事態で何度も呼んでるのなら遅くなればなるほど、手遅れになりかねない。 (うん…)


座標を刻むだけだからすぐに終わる。

「よし、出来た。ユウキ、行ける?」

「うん。 姉ちゃんのが準備できてないからな?」

「え?」

「お姉ちゃん、制服のまま行くの?ユウキ君は着替えてるよ?」

あぁもぅ…。私のバカ。

慌てて自室へ戻りシエルのくれた服に着替える。

うん、動きやすいパンツルック。さすがシエル…。



リビングへ戻ると、父さんと母さんも戻ってきてた。

「母さん…」

「許さないから…無事に帰ってこなきゃ絶対に許さないから!」

「うん、約束するよ」

すごい力で抱きしめられて苦しい…でもこれが母さんの想いなんだとしっかりと心に刻む。


「ユウキも、絶対無事で帰ってきなさい」

「当然! ちょ…苦しいって」

「…うるさい」

ユウキの苦情を一蹴する母さん。


「ティーちゃんもだよ!」

「はーい! ぐえっ…くるしっ…」

ティーまでやられてる。 ありがとう母さん…。


「行ってこい。必ず無事に帰ってこいよ」

「ありがとう父さん」

父さんへは私からハグをした。

「お、おう…なんだこれ。めちゃくちゃ照れるな」

抵抗がない訳ではないけど、今回の事では感謝してるのは本当だし。今日だけは…。


ユウキは父さんと拳をぶつけ合ってる。何それカッコいい…。

「アスカとティーの事、ちゃんと守れよ」

「わかってる」


うちの子たちともハグをして、必ず戻ると約束をする。

ユウキ、ティー、それに自身を魔力ドームで包む。

「ティーの分体はママの部屋にいるからー。行ってきまーす!」

「軽いわよ! …わかったわ。こっちの事は任せて。ティー、アスカ達のことお願いよ?」

「任されたのー」

「お姉ちゃん! ユウキ君、ティーちゃん…。気をつけて…」

「アスカ、帰ったらデートだからね」

「ねえ様!?」

「わかったよ。約束だからね」

揉めだしたドラゴン姉妹はいつもどおり。ちょっとホッとする。


「お姉様、お兄様、ティーちゃん、気をつけてなの…」

「わう! 帰りを待ってる!」


「とっとと行け。母さんの気が変わらんうちにな」

「……」

笑顔の父さんと反対に母さんは泣きそうな、それでいて怒ってるような…そんな顔をしてた。



「ユウキ、ティー、いくよ!」

「うん」

「おー!」

私達はリビングから転移した。多分、行き先は懐かしいあの場所…。










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