よいではないか~
雪合戦と言う名のラストバトルを終え、ロッジへ戻ってきた。
休憩した後、アキナさんと王妃様は王国へ連絡を取るって事で、もし繋がらなかったら私の出番。
一応、内容は国家機密扱いだから私以外、うちの子達は一足先に屋敷へ帰宅した。
私も繋がるようなら帰るつもり。
「シルフィ?」
”お母様! お身体は大丈夫ですか?“
「ええ。大丈夫よ」
”おめでとうございます、お母様“
大丈夫そうだね?私はアキナさんに手振りで帰るって伝えて部屋を出た。
王妃様の通信が繋がったとしても、居ていいって言ってくれてたんだけど、なんとなくね。
家族の会話を聞いてしまうのも申し訳ないし。
外で待っててくれたチョコ達とまた召喚する約束をして送還。
キャンディは相変わらず激しいスキンシップをしていったけど。
あの子のハグは力が強いんだよ。ねっとりしてるし…。
ロッジへ戻り、部屋の一つにある転送魔法陣に乗って塔の一階へ。
「あ、来たわ」
「リア、ティー待っててくれたの?」
「ええ。なんとなくね。ティーが、多分すぐに降りてくるって言ってたから」
「予想バッチリー」
「他のみんなは?」
「先に帰ってお風呂の仕度よ! 時間的にメイドさんに頼みにくいし、未亜がやってくれるって言ってたわ」
「そっか。そろそろ夕食だもんね。じゃあ私達も帰ろうか」
「ええ!」
「はーい!」
飛びついてきたティーを抱いて、リアに腕を組まれての屋敷への帰り道。
屋敷の前でギルドから帰ってきたであろうユウキ達と合流。
「お、姉御じゃないか。試練は終わったのか?」
「…父さん今度その呼び方したら星にするからね」
「星ってなんだよ!」
「空の彼方までぶっ飛ばすってことでしょ?」
「…やめてくれよ」
なら言わなきゃいいのに。 (いらん事言いなの)
ほんとそれ。
「アスカ、姉御って何かしら?」
「話したくない…」
「ええっ! 気になるわよ!」
「それなら後でティーに聞いて」
「任せてー!」
「それ僕も聞きたい!」
「私も」
「俺も…」
「はぁ…好きにしたら? それよりユウキ、ギルドカードはもらえたの?」
「うん。ばっちり」
そう言ってカードを見せてくれる。 綺麗なゴールドのカード。
「初仕事もバッチリこなしてきたぜ」
「アスカにお土産もあるよーユウキ、渡してあげたら?」
「あぁ…。姉ちゃん使うでしょ?」
ユウキがくれたのは袋に入れられた大量の魔石。
「すごい量だね。いいの?こんなに…売ればお金になったでしょ」
「姉ちゃんに渡したほうが有効活用するでしょ?」
「ありがとね。母さんも父さんもありがとう」
「私達のは数個だけだよ?」
「あぁ。いつ溜め込んでたんだ? さてはユウキはシスコンか…」
「はぁ!?違うし! 渡すの忘れてただけだし!」
「慌てて否定するってことは図星か?」
「くっそ…殴ってやる!」
「前のように行くかよ!」
ユウキに追われて逃げていく父さん。 何してんのよ…。 (ママのパパは人を怒らせるプロ)
確かに…。変なスキル持ってないだろうな? (煽り師)
持ってたら封印させないと…。
「ユウキも変わらないね」
「うん?」
「昔からアスカにベッタリだったでしょ」
「それは母さん達がいなかったから」
「ごめん…」
「今さら責めるつもりもないからいいけど。一番甘えたい時に母さん達が居なかったのは大きいと思うよ」
「そうだよね…だからシスコンに…」
「違うから。どちらかと言うと、大人びてるよユウキは」
「……埋め合わせしないとね」
「頑張って」
「うん!」
「ねぇアスカ、シスコンって何かしら?」
「…知らなくていいよ?」
「嫌よ! なんか、知らなきゃいけない気がするわ」
「リア、…………が…………と一緒」
「ええ、なるほどね…。それなら、まぁ…」
何を話してるのやら。
「愛されてるのねぇ?アスカは」
「何?母さんまでケンカ売るの?」
「なんでよ!?」
「なんとなくそんなニュアンスを感じたから?」
「そんな理由で母親に喧嘩腰にならないで!」
なんか煽られた気がしたんだもの。
「ほら、もうお屋敷につくわよ! 未亜たちも待ってるから早く行きましょ!」
「そうだね」
試練も終わったし、私達も今後の予定を考えなきゃ。
そろそろ一度帰らないと、学校を忘れそう…。 (奈々と麻帆! 覚えてる?)
流石にその二人は忘れてないよ!
お屋敷に帰ってきた私とティーは、そのまますぐにお風呂に入ってる。
未亜達がお風呂の仕度をしてくれていたから、雪合戦で冷えた身体を温める。
「先に入っていいって言われたけど良かったのかな?」
「たぶん?」
「…ねぇティー、脱衣所が騒がしくない?」
「知ってたの」
「…?」
「まだ身体が冷たい気がするわ…」
「早く温まろうね」
「うちもいいの…?」
「大丈夫よ! ほら早く行くわよ」
ちょっと…みんな入ってきたよ!? (予想できたよ…?)
えー。先に入っていいって、みんなでやたら勧めて来ると思ったらこういう事?
「お姉ちゃん、来ちゃった!」
「ふふー大成功ね!」
「人が一杯で恥ずかしいの…」
「…まぁいいけど。 みんな早く温まった方がいいもんね」
「そうよ! アスカに後から来てって言っても絶対来ないでしょう?」
「まぁ確かに…。 あれ?レウィは?」
「レウィちゃんは男の子だから。お義父さん達の部屋のお風呂へいったよ」
「そう。ひとり待たされてるんじゃないならいいよ」
それだったらあまりにも可哀想。
「アスカ、ご褒美の事覚えてるかしら?」
「うん。決めたの?」
「ええ。私と…」
「お姉ちゃん! 私も!」
「ちょっと…未亜?私がまだ話してるのに!」
「何を言うつもりだったの?リアちゃん…」
「それは…………よ?」
「そ、そう。それなら…。………とか言うかと!」
「言わないわよ! それは流石にまだ早いというか…」
何を話しているのやら…。 (リリィ…)
「…それで二人のお願いは何?」
「背中の流しっこしたいのよ!」
「私もう洗っちゃったんだけど…まぁいっか。 未亜は?」
「私は…後でいいかな」
「そう。じゃあリア、洗い場に行くよ」
「ええ!」
何がそんなに嬉しいのかリアは上機嫌。
「じゃあ背中向いて」
「はーい!」
「…どうして翼を出すのかな?」
「繊細なの。乱暴にしたら嫌よ?」
「わかったよ〜。相変わらずきれいな翼だね」
「ふふ〜♪」
背中を洗い、翼は丁寧に泡立ててから手で洗う。繊細だって言ってたし…。傷つけたくはない。
「……んっ…それ…はぅ…」
「大丈夫…?痛かった?」
「違うのよ…大丈夫」
ならいいけど…。
「っ…んっ…ふぁ…」
「ねぇ?本当に大丈夫?」
「そろそろ無理かも…」
「ごめんね、すぐに流すから」
お湯をかけて翼の泡を流す。
「平気?」
「…ええ。次は私の番ね?」
なんかものすごく嫌な予感がするのだけど…。
「良いではないか、良いではないか…」
「ねぇ、なんでそんな手をわきわきさせてるの? ちょっと…背中流すんでしょ? イヤーーーー!」
(ここまでがお約束なの)




