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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第四章

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国に歴史あり



時間がかかって焦れたのか、ドラゴンがブレスを放とうとしている。

でもその射線上には、お祖母ちゃんからドラゴン化の方法を学んでる王妃様がいる。撃たせるわけにはいかない!

魔法防壁で反らすだけなら簡単だけど、それだと塔を壊しかねない。

かと言って真っ直ぐ反射させてドラゴンに返して倒してしまってもアウト…。

なら…! ティー、キャンディ私の後ろへ。 (はーい!) ❲わかったわ〜❳


ブレスの射線上に陣取り、大きな魔法防壁を何枚も展開し、部屋中へ配置。

配置の完了とほぼ同時に放たれたアイスブレスは魔法防壁に弾かれて、魔獣を貫きながら次の魔法防壁へ。

それに反射し、また魔獣を貫きながら次の魔法防壁へ…。それを繰り返した事で力を失ったブレスはやがて消滅。

「…なに…?」


「ふぅ…」 (すごい…魔獣がほぼ全滅)

「私の出番なかったわね〜流石ますたぁ〜」

ブレスヤバいわ…。 (いや、ママのがヤバい)

なんでよ!? (あの短時間で的確な位置に魔法防壁を置いて、魔獣まで倒してるの!)

ギリギリだったけどね。 (さすママ!) 



相変わらず魔獣は召喚されてるけど、ドラゴンはブレスを吐くのはやめたらしい。 (また魔獣に当てられるし!)

もうあんなギリギリはやりたくはないけどね。

いくらスキルのおかげでマルチタスクが出来て、一度に色々な事を処理できるとはいっても、流石に限度がある。


リアも遠距離から魔法を使い魔獣の数を減らしてくれてる。

それを見ていたシエルも援護。

未亜!? まさか…。 

怯えながらもしっかりと魔法を放ち、魔獣を仕留める未亜。

頑張ったね…。 (おぉー未亜やったのー!)

試練が終わったら、しっかり褒めてあげないと。 (また仕留めたのー!)



!! (!)

背後ですごい魔力を感じて振り返る。

「待たせたわね!」

王妃様の声。私達はドラゴンへの射線を開ける。

直後、白銀の大きく美しいドラゴンはブレスを放つ。 私の横を通り過ぎたそれは、ドラゴンへ直撃。

「御…見事…」


ドラゴンが消えると同時に、その背後の扉も開く。


……あれ?あのドラゴン…。 ❲王妃様じゃないわね〜❳

「お祖母ちゃん?」 (ええっ! でも確かに魔力はお祖母ちゃん!?)

ああっ…! 思い出した! (なにを?)

ほら、お祖母ちゃんが言ってたじゃない。

人の姿で妊娠すると、赤ちゃんが産まれるまではドラゴンにはなれないって。 (あぁ!!) 


「アスカちゃんにはバレちゃったわね」

「お祖母ちゃんのドラゴン姿、凄くキレイ!」

「ふふっ、ありがとう。もう滅多にならないから見せることも無いかと思っていたけど」

そう言って人の姿に戻るお祖母ちゃん。その後ろから王妃様も顔を出す。

「騙す形になってしまったけど…扉は開いたわね」

これでハッキリしたね。やっぱり親衛隊の人達からアキナさんへ情報がいってない。 (うんうん)

王妃様が妊娠してるのを知ってたらこの試練は出してないだろうから。



お祖母ちゃんも途中まで忘れてたらしく、王妃様のドラゴン化を頑張ってたと。

上手くいかない事で思い出したらしい。

悩んだ末に自分がドラゴン化して、隠れた王妃様が声を出す。バレる前にとさっさとブレスで片をつけたという事らしい。



一息ついた私達は少し休憩することに。今はちょうどお昼くらいだし。

ストレージに入れて持ってきたおにぎりでお腹を満たす。 (ママのご飯〜♪)

おにぎりしかないからごめんねだけど…。 (ううん。美味しいの!)


食事をしないキャンディはずっと私にくっついてるものだから…。

未亜と、リアが遠巻きで不機嫌そうに見てるのは気のせいかな? (知らなーい)


「ますたぁ〜。久しぶりじゃない〜こうやって一緒に戦うの」

「前回は、任せっぱなしだったもんね」

「あれはあれでいいけど〜。また一緒に街へ潜入とかしたいわ〜」

「する必要がないからなぁ…」

「つまんな〜い…」

そんなこと言われても…。 (わがままなの!) ❲たまにしか出てこれないのだからいいじゃない〜❳

それは申し訳ないけど。 ❲ご褒美なににしようかしら〜❳ (ママこいつやばいの!)

できる範囲のお願いにしてね? ❲もちろんよ〜❳ (……)



「休めたし、そろそろ出発しましょう」

王妃様の指示で私達は進む。


「この先は罠も魔獣もいなかったわ〜」

「みたいだね…また魔法陣で転送されてくる可能性もあるけど」

「多分大丈夫じゃないかしら」

だよね…王妃様の言うとおりだと思う。 (これって…王国の歴史?)

そうみたいだね。


一本道のゆるい階段状になっているダンジョンの壁には、王国の始まりから順番に、絵を交えて書かれている。

多分…国を受け継ぐ人に知ってもらいたいからって事だろうね。 (うん。すごいの…)

「試験の時はこんな場所通らなかったわ」

「はい…それにこんな一本道じゃありませんでした」

45階層までは来ている王妃様とアリアさんが見てないって事は、試練専用のルートか。

何処まで手が込んでるのよ、このダンジョン。

キャンディが埋めてくれたマップにもこの通路以外は何もない。 ❲ここ以外は広いだけでなにもなかったわ〜❳

道もつながってないもんね。 ❲ええ〜だから念の為、隙間から抜けて見て回ったけど、な〜んにも❳

そう、ありがとうキャンディ。頼りになるよ。 ❲ふふ〜♪❳ (……イラッ)


「ママ、この先もなにもないのー?」

「え? うん。マップ見る限りこの通路が最上階まで続いてるね」

「じゃあキャンディはもうバイバイなの!」

「ひどいわ〜。用事が済んだらもういらないなんて〜。そんなこと言わないわよね?」

「うん、まだお願い事も聞いてないからね」

「むー」

ティー、どうしたの? (ママがキャンディばっかり頼る!)

ダンジョンだとどうしてもね。普通に戦って進むのならティーにも頼れたんだけど…ごめんね。

❲ヤキモチかしら〜? ママとられたーって?❳ (むっきゃーーー!)

キャンディ、ティーをいじめないで。私の大切な子なんだよ? 

❲は〜い。ほら拗ねないの〜大切な子って言ってもらえてるのよ〜?それにティーは私と違っていつも一緒に居られるでしょ〜?❳ (……! うん。そうなの…ごめんなさい)

二人ともいい子だね。 みんなが壁の歴史を見ながら進むからペースは落ちるし、のんびり行こう?

❲そうね〜❳ (はーい!)


私達も壁を見つつ進む。 なんか歴史資料館みたいだなぁ…。

千年の歴史か…。確かにそれを受け継ぐ人は相応の責任という重圧を背負うことになる。

この試練の意味というのもわかるような気がするね。 (みんなで試練をくぐり抜けて、みんなで歴史を知る?)

そう。そのみんなで、これからを支えていくんだよ、って言うメッセージじゃないかな。


「お祖母様…たった一人でこれを…」

「それは違うわ…。支えてくれる人達がいたからよ。ほら、ここを見てみなさい」

「はい……。 ”一人では成し得ないことも仲間や家族がいれば成し遂げられる。それを忘れるな。一人で出来る事になど限りがあるのだから“ …その通りですね。今回私がここまでこれたのも…」

王妃様はそう言ってみんなを見渡す。

「ふふっ、私は本当に人に恵まれているわね」

「はい。王妃様」

「アリアもその中に含まれるのだからね?」

「…勿体ないお言葉です」

跪くアリアさんは嬉しそうで…。


「これ、アスカもちゃんと覚えておいてほしいわ…」

壁を見ながらリアが呟く。

「え?」

「うん。お姉ちゃん、すぐ一人で何でもしようとするから」

「お姉様、もう無茶はしたら嫌なの…」

「わう! ボク達がいるから」

「ますたぁ〜?言われてるわよ〜?」

「身に覚えがありすぎて反論できない…気をつけます…」

「そうなの! ママはもっとみんなを頼ればいいのー」

「そうよね〜。私達も召喚さえしてくれたら力になるわよ〜?」

「みんなありがとう」

アキナさんが書いたであろう教訓を、私自身しっかりと胸に刻んでおこう。 (約束ー)

そうだね。 (破ったらお仕置きなの)

…はい。


壁画の後半は、まぁ…うん。 (惚気日記!)

言っちゃったよ。

確かに、可愛い奥さん貰ったーとか、産まれた子が可愛いとかそんなのばかりだけど…。

逆に言えばこの頃には国が安定してきて、アキナさんに余裕が出てきたとも言えるね。 (ふむー)


「娘の絵日記を見ているようでいたたまれないわね…早く行きましょう」

「…はい。 お祖母様はハーレムを楽しみすぎです」










 






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