召喚と送還の理
王女様は王妃様について来ないように言われて悲しそうに自室に戻っていった。
またイレギュラーがあっても危ないし次期国王陛下への対応として賢明だと思う。
帰るときに使った魔法陣。流石は王妃様で記録もしっかりつけてあった。
それを見せてもらってわかった事がいくつか。
まっ先に送還する時間に関するところを確認したが、何故か時間が戻るようになって無かった。
代わりにこちらの時間経過に連動するようになってた。
それを見た王妃様は心当たりがあったみたいで
「私のミスです。 …たぶん、焦ってたんだと思います」
「焦ってた、ですか?」
「はい、息子の不始末で、自分の子供と変わらない年齢のアスカちゃんにとんでもない事態を招いた。にも関わらず解析も進まず、治す手立ても見つからない。なのに時間だけは過ぎていく…」
責任感が強く、本当に優しい人だよね。
「1ヶ月経ち、2ヶ月たち経ち…ついに3ヶ月。そうやって時間を意識しすぎてたんだと思います」
過ぎていく時間を気にしすぎてそのまま反映されたのかな…。
魔法陣に書き込む過程でも想いや、その強さって反映するのか。
どおりで召喚されてから地球へ戻るまでの時間がバラバラなわけだ。
召喚した人がその日時をしっかり記憶してる?大雑把な記憶の日時に戻されてた可能性もある。
日時を記録してたとして、それを細かく魔法陣へ書き込んだら複雑になるし消費魔力も膨れあがる。
でも、召喚した日から不都合がないくらいの時間経過で戻る、みたいなイメージ程度なら?
魔法陣は複雑にならないし消費魔力も抑えられるよね。
魔法や魔法陣がイメージや思いの強さで、威力とか変わるのを解ってたのに気がつかなかった。
「ありがとうございます、王妃様。今まで謎だったことがわかってスッキリしました」
「え?どういう事かしら」
よくわからないって感じの王妃様に今まで経験した召喚と送還の理の謎が解けた、その内容を話した。
私の話を真剣に聞いてた王妃様は
「アスカちゃん、これ結構大きな発見じゃないかしら?」
「どうでしょう?だって考えてみてください。そんな頻繁に召喚と送還を経験する人います?」
「………」
無言で私を指ささないで。わかってるから。
「私以外で、ですよ。大きな発見だったとして役に立つのか怪しいです」
「うーん…でも今まで分からなかったことに説明がつくのだから凄いことよ」
「そうならいいのですが…」
「アスカちゃん、これまとめて報告してもいい?勿論アスカちゃんの名前で出すから」
「やめて! いえ、やめてください私の名前でとか。王妃様のお名前で出してください」
「そういう訳にはいかないわ。もしかしたら利権が絡むもの」
「王妃様。私、この世界の住人じゃないんですよ?あくまでお邪魔してるだけで」
「あ…。 でもじゃあアスカちゃんの世界で発表したら?」
「……私の生まれた世界には魔法も、魔法陣もないので誰も知りません。相手にされません」
「そうなの…?そんな世界があるのね。また詳しく聞きたいわ」
「はい。それはもちろん構いませんが」
「でもこの発見をこのままにするのも…」
「あ、じゃあこうしませんか?今私が借りてる客室、それの借料って事で」
「それはダメよ! あれは息子の不始末へのお詫びの一環なんだから」
じゃあどうしたら…私は別に利権とかいらない。
ストレージに換金できるものも腐るほど入ってるし…。
「あぁっ!」
私が今回ここに来た本来の理由、それを忘れてた…
「どうしたの?アスカちゃん!?急に叫んだりして」
「いえ、私が今日こっちにお邪魔した本題を忘れてました」
「アスカちゃん…」
そんな残念な子を見る目で私を見ないで?最近よくその目されてるからぁ!
すごく効くの…
「王妃様、いえ、これは王様に許可もらわなきゃいけない事だと思うのですが…」
「うーん、謁見ってなると手続きに時間かかるから私で判断できるものか聞きましょうか?」
「そうしてもらえると嬉しいです」
「じゃあ一旦部屋に戻りましょ」
私専用みたいになってしまった客室へ戻り、またユリネさんが淹れてくれたお茶を飲む。
「それじゃあ聞きましょうか?アスカちゃんのお願いというのを」
「はい。この頂いた転移リングですけど、解析しました」
「…え?」
あっ…また王妃様固まった。
どうしよう…?チラッとユリネさんを見たら、にっこり。あ、どうも…
いや、そうじゃないから。
「王妃様?」
「…アスカちゃん、何処まで?何処まで解析したの?」
「…全部です。魔石の容量まで」
バターン!
王妃様はまたテーブルに突っ伏した。
あ、今回もユリネさんがカップ避難させたーすごーい!
ユリネさんドヤ顔してる。うん、流石だよー!
「アスカちゃん、私ほっといて、なにをユリネとニコニコと…」
いえ、ちょっとした、現実逃避を…
「アスカちゃん!」
「はい!?ごめんなさい?」
「ほんとにもぅ! 貴女どれだけ規格外なの?それ、解析は愚か誰も作ることのできない魔道具なのよ?」
あー口調がまた戻ったー!
「聞いてる?」
「は、はい…ではこの魔道具って?」
「詳しい事はハッキリしないのよ…。ただ異世界から来た人だけが使える物なの。自分の世界へ戻ったり、こっちへ来たりね。賢者時代の貰い物でね。解析して知識にしたかったのだけど…何にもわからなかったわ」
「そんな物を頂いてしまってよかったのですか?」
「ええ、だって私達は誰も使えないもの。それに、アスカちゃんなら有効活用してくれるでしょ?」
「ありがとうございます」
「いいのよ。それでお願いって?」
「えっと転移できる範囲がそこそこあってですね、必要な魔力だけ充填すれば3、4人転移できるんです」
「………嘘よね?」
「いえ、事実です。ただ条件があって、私の魔力を一緒に転移する相手に循環させなきゃで」
「それって実質無理に近いんじゃない?よほど信頼してて身を任せないとよね?」
「そうなりますね。それで…弟と、妹をこっちへ遊びに連れてきてもいいですか?」
「うん?連れてくるのは構わないし、アスカちゃんの家族なら私の判断で許可しても大丈夫よ」
「いいんですか?」
「夫…、陛下には私が話せばいいし。 でも条件クリアできるの?」
「そこなんですよね。二人に確認して、そんなの嫌でしょ?って聞いたら、なんで?って言われて」
「あははは! アスカちゃんすごい信頼されてるのね?」
「それはないと思うのですが…」
「話聞く限りそうよ?」
「そうだったら私今日、家出してないです…」
「ちょっと待って。アスカちゃん今日って話があったんじゃ?家出してきたの!?
……どういう事か説明してくれる?」
「…はい」




