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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第四章

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街へ



「母さん達が帰れないってどういう事?」

「順番に説明するよ。何があったか姉ちゃんも知りたいでしょ?」

「正直あまり聞きたくはないけど、聞かないとね…」

ユウキから今日の出来事を順を追って説明してもらう。




ユウキSide


〜時間はアスカ達がドラゴンの里へ転移した朝まで遡る〜




妹のシエルが街へ行きたいって言うなら叶えてあげたい。

それは姉ちゃんも同じだったようで…。だけど姉ちゃんが行くのは止めた。

だって、ね…。 絶対なにか起こる。もしくは起こす。

降りかかる火の粉を払ってると言うよりは、火の粉の落ちてくる場所へわざわざ行くのが姉ちゃんだから。

それで、毎回火元もろとも消し飛ばすのは流石だとは思うけど、アキナさんの街でそれは避けたい。


幸い、母さんや未亜姉ちゃん、レウィまで来てくれるのなら過剰戦力にも程がある。

姉ちゃんから好きに使っていいって、とんでもない額のお金を渡されてるのは気にしない様にしよう。

シエル達もしっかりお小遣いは貰ってるみたいだし。

足りなかったら、姉ちゃんに言われた通り少しずつ渡す。

僕も好きに使っていいって言われてるけど、そうそう使うこともないって。



屋敷を出て王族エリアをのんびり歩く。

「シエルはどんなお店がみたい?」

「えっと…服やアクセサリーを扱ってるお店を見たいの」

「わかったよ、せっかくだから楽しまないとな」

「はいなの、お兄様!」

「シエルちゃんは私と手をつなごうね」

「はい、未亜姉様!」

仲よし姉妹だな。


「保護者の私がいるんだから安心して観光を楽しもうね」

「わう! ボクもいる!」

なんだろうなぁ…母さんからは、そこはかとなく姉ちゃんに近い危うさを感じるんだよ…。

気のせいだと思いたい。

レウィのがよほど安心感がある。



王族エリアから街へ出て、大通りを歩きながらシエルが気になったお店を片っ端から覗く。

大人しい子だと思ってたけど、こういう時はアクティブだな…。

新く妹になったシエルの、そういう知らない部分が知れただけでも、今日一緒に来た意味がある。

母さんもシエルと一緒になってはしゃいでて、道を行く人に微笑ましく見られてるのは恥ずかしいけど。

見た目が若いから姉妹にでも見えてるのかもな。


あちこち見て回り、買い物をして…未亜姉ちゃんやシエルが少し疲れてきてる。

お昼も近いから何処かお店にでも入ろうかって話をしてたんだけど、母さんが難しい顔をしてる。

「母さん?どうかしたの?」

さっきまで子供みたいにはしゃいでたのに…。


「うん…街に夕夜が来てる気がする」

「父さんが? 訓練に疲れて気晴らしにでも出てきたんじゃないの?」

「…私もそう思ったんだけど、それなら隠蔽したりする?しかも下手だし!」

「え、そうなの? 良く分かったね」

「私、ドラゴンハーフなのに魔力感知は苦手で…見付けたのもたまたまだけどね」

「あぁ、だからか」

「うん?」

「いや、姉ちゃんなんて魔力量ヤバいのに、秘密の共有する前も母さん気がついて無かったじゃん」

「そう言えば…。でもそれはアスカが偽装してたんじゃないの?」

「ステータスの偽装はしてたけどね」

「…まさか子供達が、なんて考えてもなかったから。 でも、私は気を抜きすぎだね…」

「戦闘中じゃないならそれでいいじゃん。 父さんはほっとく?一緒にお昼食べに行ってもいいけど」

「わう! 一緒にいきたい!」

そういえば…レウィはなんか父さんと仲いいんだよな。

散歩仲間か?


「…うーん、隠蔽してるのが怪しい。ちょっと見てくる!」

「ちょっと母さん!?」

翼を出してすごい速さで飛んでった…。

街の中でいいのかよ!


「ユウキ君、お義母さん大丈夫かな?」

「いや、心配だから追いかけるよ! みんなついてきて」

「わう?それならボクに乗って!」

そう言うとレウィは馬くらいのサイズになる。


「ありがと、助かる。未亜姉ちゃんとシエルは乗って! 僕は走るから」

二人がレウィに乗るのを確認した後、母さんの魔力をたどりながら走る。



何本か通りを抜けてたどり着いたのは…。

「父さんの馬鹿野郎…」

前に僕を連れて行こうとした店のあるエリアかよ!

あの時、入れなかったからチャンスを伺ってたのか…、くそっ…!

こんな事ならあの時行かせておけば…。こんな所、未亜姉ちゃん達を連れて入れるわけがない。


「未亜姉ちゃん、シエルとここで待ってて。レウィ、二人を守って」

「わう!! 任せて」

「…ユウキ君、ここって…」

「絶対に入ってきたらダメだからね?」

「わかったよ」

「はいなの…」

こういう所は大体裏組織が元締めをしてる。母さん、早まらないでよ…。

アキナさんの国で厄介事とか申し訳なさすぎるから!

イヤ、むしろ質の悪い組織なら壊滅させたほうがいいのか?


ドゴーーーン!!

「…遅かった」

角を曲がる直前に響いた破砕音。間違いなく母さんだろう。

慌てて建物の影から顔を出すとドラゴンハーフ姿で建物を殴り壊してる母さんが…。

「何だ何だ? おい、誰か騎士様に通報だ!」

騎士に通報? って事はここは合法なのか…。そうなると下手に手出しできないじゃん。


「やめてくれ! 俺の店に…」

「夕夜ぁ!! 出てこい!! 出てこないなら!」

ドゴーーーーーーン!!

「ひぃ…誰かあのドラゴンを止めてくれ!!」

母さんめちゃくちゃだよ…。 アレだ、姉ちゃんより余程ヤバいわ。

姉ちゃんは自分や家族に危険があるのならある程度力を使うけど…こんな事はしないもんな。

はぁ…。酷いこと言ってごめん姉ちゃん。 姉ちゃんに任せたほうが遥かにマシだったよ…。


降りかかる火の粉に飛び込むのが姉ちゃんなら、火元を作るのが母さん…。

どっちがヤバいかなんて言うまでもない。

母さんのは父さんが絡んだ時だけって限定ではあるけど。


しばらくしたら街の騎士様が大人数で駆けつけてきた。

「取り押さえろ! 女王陛下の治める街での暴力行為は絶対に許すな!!」

「「おう!!」」

いくら母さんが強いとはいえ、相手もドラゴンハーフや獣人の鍛えられた騎士。

しかも大人数には勝てない。

いや勝てたとしても流石に母さんも騎士相手に暴れたりはしないから…。


うわぁ…目の前で母親が逮捕されて連行されていくんだけど。どう思ったらいいのさ、これ。

鎖で繋がれるドラゴンハーフ姿の母さん。

それと…瓦礫となった店舗の奥から助け出された客の中に父さんが。

ブチギレてる母さんが怖くて隠れてたなアレ。そのせいで店が…。

「夕夜ぁ!!!」

「ひっ!」

捕まって尚、威嚇してる母さんに見つかって、真っ青な父さん。

「暴れるな! おい、鎖を追加しろ!」

「はっ!」

もう見てられない…。


「すみませんが、客である皆さんには治療と、事情を聞きますので、詰め所までご同行お願いします」

助け出された人達も騎士に連れられて行ってしまった。


取り敢えず姉ちゃんに連絡しておこう。

多分、未亜姉ちゃんが経緯は伝えてるだろうけど…。


…………

………

……



そうだよな、姉ちゃんの言うとおり、アキナさんに頼むしかない。

未亜姉ちゃん達は家に戻ってるらしいから、無事帰れたかの確認だけしたら、直接アキナさんの屋敷へ行くか…。

アキナさん本人がいなくても、家族の誰かがいれば連絡を取ってくれるだろうし。




未亜姉ちゃん達の帰宅の確認は取れた。後は…

街を抜けて、王族の居住エリアへ入り、アキナさんの屋敷を目指す。


「早くしろ! 全く誰だ、この忙しい時に! 街への破壊活動だと?」

「はい。 先程、街の方から連絡が…色街がやられたと」

「サージェには?」

「使いを出しています」

「わかった、行くぞ。直々にツラを見てやる」

ちょうど屋敷から出てきたのって、あれアキナさんと親衛隊の人達か…。

すでに情報がきてるのか、めちゃくちゃ怒ってる。 無理もないけど。



止めるというか、伝えておかないと! 急いで駆け寄る。

「アキナさん!」

「ユウキ君。 すまない、今は緊急事態でな…急ぐからこれで失礼するよ」

「街で暴れたの母さんなんです! ごめんなさい!」

「え?……は? お姉ちゃんが!?」

「…はい」

「詳しく話してくれる?」

あ、口調戻った…じゃなくて!



街での出来事を、見たまま報告。

「頭痛い…何してるの、お姉ちゃん。私の街で」

「本当にすみません…」

「ユウキ君は悪くないよ。それどころか知らせてくれて助かったよ。 私が直接話を聞いてくるね」

「お願いします」

「任されたよ。   お前たちは街の復旧の手配だ! 必要な資金は私が出すと伝えろ」

「「はっ!」」


「ユウキ君は家で待ってて。すぐに釈放させるから」

「ありがとうございます…」

「…まぁちゃんと責任は取ってもらうから」

そう言って…悪い笑顔をしたアキナさんがちょっと怖かった…。




アスカSide



ー現在ー


「それで、責任を取ってもらうって…」

「姉ちゃんは知らないかもだけど、再来年が建国千年の記念の年らしくてさ」

「…知ってる」

クイズでだけど…。 (ティーのおかげー)

だね。ありがと。 (♪)


「マジかよ。珍しいな」

「うっさい…それで?」

「ほら、母さん達って一応英雄じゃん?」

「破壊神じゃなくて?」

「言いたい事はわかるけど…続けるよ」

「うん」

「勇者と蒼白の巫女として協力してもらうってさ」

「なるほど… え?なにするの?」

「さぁ?そこまでは…」

となると、まるっと一年以上こっちに滞在って事?


「私達は?」

「いや?別に何も言われてないよ」

「母さん達の不始末だし、私達もできるだけ協力はしないと」

「そうだね…」

「店の方は?」

「それがさ…そっちは笑える結果になったよ」

「どういう事よ?」

「いや、復旧は国がしてくれるし、暴れたのが蒼白の巫女と勇者って事で、オーナーは大喜びでさ」

「ちょっと意味がわかんない。店壊れたのよね? 被害者は?」

「店の宣伝になったって事だよ。しかも店は新築になる訳だし。客もみんな獣人とかで丈夫だから、擦り傷程度だってさ」

「頭痛い…。死傷者が出なくてよかったよ」

「まぁね。 店に関しては笑うしかなくね?」

楽しそうだなユウキ。私よりよほど達観してるわ…。


「それで、コレは?」 (ボロ雑巾!)

「あぁ…釈放された母さんが帰ってくるなり…ね? 先に帰ってた父さんは玄関で土下座してたんだけど」 

「そうなるよね…。 その前科者の母さんは?」

「姉ちゃん言い方。 部屋でふて寝してるよ」

「子供かよ!」

「いや、本当にそう思う。姉ちゃんと行ったほうがよほど良かったよ、ごめん」

「それはいいけど。私もやらかした自覚はあるし…」


放置されたボロ雑巾、もとい父さんは、母さんが治癒した後、またボコってたのは翌朝の話。








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