定時連絡
アリアさんの案内で、王妃様のお屋敷へ入る。
お屋敷の造りは、アキナさんに貰ったお屋敷とさほど違いはない。
内部の装飾が豪華なくらいだろうか…。
「こちらです、アスカ様」
「はい」
案内されたのは客間かな。
ソファにテーブル、過度な調度品もなく、落ち着いた雰囲気の部屋。
「アスカちゃん、ごめんね…こんな時間に」
「それは大丈夫ですが、なにか緊急事態ですか?」
「いえ…違うのよ。 王国への通信をつないでほしくて…」
「あぁ! ちょうど、私も定時連絡を入れる予定だったので、繋ぎますね」
多分、陛下に色々報告するんだろう。
気が付かなかった私も悪い。
ストレージから出したティアねえ様専用通信魔道具をつなぐ。
“やっとかかってきたー! 遅いよー!”
「ごめんね、ちょっと込み入ってて…」
“なにかあったー?”
「ルナティアちゃん、申し訳ないのだけど…陛下に代わってもらえるかしら」
“王妃様!? わかりました、すぐに!”
しばらくして…。
“セルフィか、どうしたのだ?”
「大切なお話がありまして…」
内容はプライベートだから詳しくは伏せるけど、予想通りの内容。
ドラゴンとしての覚醒の話から始まり、試練を受けて、アキナさんに認めてもらうまでは帰れない事。
それと…お腹の赤ちゃんの事。
あ…、ダンジョンに挑んだのは内緒にするんだ? (言ったら怒られる!)
だよね…。
“そうか…継承権が高い者を国の外へ出せないと言う王族の気持ちもわかるが…”
「私は戻らないほうが良いのですか…? 帰るとご迷惑ですか…?」
”そんなはずはない。王族として理解はできるというだけだ。気持ちで納得はできん…”
「はい…」
“アスカ殿達の協力が得られているのなら試練は達成できると見てよいだろうが…女王陛下が納得するのだろうか?“
「…おそらくは。 だめでも絶対に…絶対に、説得して私は帰ります。私の居場所はアクシリアス王国ですから」
“わかった。 だが無茶はするでないぞ。大切な身体だ“
「はい…ありがとうございます」
私も陛下からくれぐれもセルフィの事を頼むとお願いされてしまった。
当然そのつもり。何をしてもいいのならダンジョン攻略なんてすぐに終わる。 (あれ使うの?)
あれとか言わない。ダンジョンに関してならあの子ほど有能な子は居ないよ。 (そだね!)
「ティアねえ様。一つ確認したいんだけどいい?」
”なにー?“
「ツリーハウスにエルフの人達が来てるらしいけど、把握してる?」
”勿論だよー私が代理で会いに行ったし“
「そう、ならいいの。ありがとう」
”確認ってそれー? もっと私にも興味示してよー“
そんなこと言われても…。 あ…気になる事あった!
「ティアねえ様は慣れないお仕事で体調崩したりしてない?元気にしてる?」
”うん! 元気。 ふふっ、ありがとね、心配してくれて“
「ううん。安心したよ。無理しないようにね。 また定時連絡の時に」
”もちろんだよ! またねー“
「ありがとう、アスカちゃん。これで、安心して試練に挑めるわ」
「はい、私達が絶対にお守りします」
「頼もしいわね。 本当にみんなが味方でいてくれて良かったわ…。 それに、エルフの人達、到着したのね。思ったより早かったわ」
「ですよね?距離がありますし」
「連絡だけは使い切りの魔道具で送っておいたのだけど、それを見てすぐに動いたみたいね」
「なるほど…そんな魔道具が」
「アスカちゃんの通信魔道具があると霞んじゃうけどね?」
だとしても、そっちはそっちで知りたいなぁ…。でももう時間も遅いし、聞くのは今度にしよう。
あまり長居をしても身体に良くないのでお暇しようとしたら…。
「もういいかしら?」
部屋に一人の女性が入ってきた。
見た目で察しはつく。そっくりだもん。
ミルフィさんのご両親は髪色等から雰囲気がよく似てるって感じだったけど、それより更に似てる。
当然か…。あちらは親戚で、こちらの女性はお母様でしょうし。
「お母様、もう大丈夫です。 紹介しておくわね。こちらがアスカちゃんよ」
「貴女が…娘がお世話になって…。 お転婆だからご迷惑おかけしたでしょう?」
「お母様!!」
「いえ…お世話になってばかりなのは私の方なので」
「話には聞いていたけど…本当に美人ね。それにいい子だわ」
「お母様! 絶対にダメだからね?」
「何も言ってないわ…」
どういう事…話が見えない。
「アスカちゃんに手を出したら、伝説のドラゴンのセイナ様だけでなく、お祖母様まで怒らせるわよ?」
「だから何も言ってないでしょう?」
「アスカちゃんごめんなさいね…早く帰ったほうがいいわ。 アリア! アスカちゃんを送ってあげて」
部屋の外に待機していたであろうアリアさんが部屋へ。
「失礼いたします。 アスカ様、私が責任を持ってお送りいたします」
「え? はい…お願いします。 お邪魔しました…」
「セルナは意地悪だわ」
「そういうセリフは自重という言葉を覚えてから言ってください!」
王妃様と、お母様への挨拶もそこそこに追い出されるようにお屋敷を出た。
何だったのだろう…。
「慌ただしくてすみません」
「いえ…私、何かしてしまいました?」
「そういう訳ではないのですが、すみません私の口からは…」
それはそうだよね。騎士様が主の事をペラペラ話したら問題だ。
「私に失礼があったのでなければいいのですが…」
「そういう訳ではありませんから。 ご安心を」
アリアさんは私を家まで送ると王妃様のお屋敷へ帰っていった。
ちょっと遅くなっちゃったし、私ももう寝よ…。
部屋へ戻ると、見慣れない姿の見慣れた二人が。
ティー?何これ…。 (ママの言い方が悪かったと言うか…)
えー。どういう事…。 さっきからこんな事ばっかり!
「さぁ、アスカ! ベッドに入るわよ!」
「お姉ちゃん、あの…その…」
「二人はどうしてそんなセクシーな格好してるの?」
「勝負下着よ! 素敵でしょ?」
「うぅ…恥ずかしい…でも…」
「うちの自信作なの」
いや聞いてるのはそこでは無いのだけど…。
「早くアスカも着替えて。アスカのもあるから」
渡されたのは、スケスケの黒いキャミソール? (ベビードール!)
そうなのね…。
リアに急かされて仕方なく着替える。
色違いなだけでデザインは同じなのね。未亜はピンク、リアは水色。
寝るだけならこれでも別にいっか。
シエルがサムズアップしてるのは何なのだろうか…。 (…ティーは今日、レウィーと寝るの)
そうなの?
シエルもなぜか一番遠いベッドに潜り込んだし。
あの子は戦闘が初めてってわけではないみたいだし、耐性も持ってたから大丈夫だとは思うけど、そんな遠くに行かなくても。
リアに引っ張られてベッドへ。
「お姉ちゃん、し、失礼します」
「何を緊張してるの?今までも一緒に寝たりしてたのに」
「それは…」
「ふふー♪」
やたら緊張した未亜と、テンションの高いリアに挟まれてベッドへ入った。 (………)




