アスカ家出をする
「ぐすっ…ひどいよ、二人とも。 家出してやる…」
アスカは転移したあと、王妃様がアスカ用に確保してくれている王城の客室の隅で膝を抱えていた。
「そりゃぁさ、まだ慣れなくて色々失敗してるけど…自覚はしてるもん」
ガチャ。
「でも、あんなに言わなくてもいいじゃん。髪引っ張るし…。結構痛かったんだから」
「アスカ様!?」
「う?」
アスカが顔を上げ振り返るとそこにはユリネさんがいた。
「アスカ様ー! お久しぶりです。ずっとお会いしたかったです!」
飛びかかるように抱きついてきたユリネにより押し倒された。
「アスカ様! アスカ様!」
「ちょ、ちよっと…ユリネさん?あ、こらどこ触って…ふにゃぁぁっ! イヤーー! 誰かーー!」
ドタドタドタ…
「何事ですか!?」
アリアさんの声だ。
「おねがい、たすけて…」
「その声はもしかしてアスカ様ですか!?」
「…はい〜」
「ユリネ、何をしているのですか! 羨ましい! すぐに離れなさい」
「………」今なんかおかしなセリフが聞こえた気が…
なかなか離れないユリネさんを、アリアさんが無理やり引き剥がしてくれて何とか助かっ…
「おかえりなさい、アスカ様!」
…アリアさん貴女もですか。
流石にアリアさんは無茶なことはせずハグされただけだったけど鎧がちょっと痛い…。
あーびっくりした。
でも…未亜ちゃんがあんなに心配して怒ってくれた理由がわかったよ。
無防備過ぎる、警戒心がないって。
ユリネさんに襲われてわかった。
だって私が咄嗟に本気でユリネさんに抵抗したら大怪我させちゃうもんね。 (わかってない…)
「お久しぶりですね。私は王妃様に報告してきます。ユリネ、貴女も来なさい」
「ですが!」
「貴女にもメイドとしてする事があるでしょう?」
「はっ! そうでした。アスカ様、またお話は後ほど。すぐに準備してきますので」
「は、はい…」
そう言って二人は客室を出ていった。
ほんとビックリしたよ。お久しぶりって、まだ数日しか経ってないのに過剰じゃないかな?
王妃様呼んでくれるみたいだし、おとなしく待ってよう。
タタタタ…バーーン!
「アスカ様が戻ってらしたって、本当ですか!?」
この声、王女のシルフィー様?
王女様がそんなバーン! って扉開いたりして大丈夫なのかな。
「はい、お邪魔してます。王女様」
「アスカ様…ちっとも来てくださらないから、もう会えないのかと…」
おかしくない?まだ4日くらいだよね?
「そんなわけ無いですよ。約束しましたし。ね?」
「はい。すぐにお母様も…」
バーーン!
「本当にアスカちゃん!?」
王妃様……親子ですね?走ってくる音がしなかっただけ大人なのかな?
王妃様、王女様とテーブルを囲み、ユリネさんがお茶を淹れてくれる。
アリアさんは扉で待機。ついこのあいだの事なのに少し懐かしくて嬉しくなる。
「王妃様、王女様、突然お邪魔してしまってごめんなさい。少し確認したいことがあって…」
「いいのよー。ここの部屋はアスカちゃんのためにある様なものなんだから」
「そうです。何時でも待ってますから」
ありがたいな、ちょっと滞在しただけの私にここまで言ってくれるなんて。
「でも、ごめんなさいねアスカちゃん。魔法陣の解析はうまく行ってないの。これだけ時間たってるのに…あれから進展してないのよ」
王妃様口調戻ってる! いや、そこじゃなくて時間たってる?
「王妃様?私が帰ってからまだ4日くらいですよ?
流石にそんな短時間でどうにかなるとは思ってないので気にしないでください」
「「え?」」
え?
「アスカ様が帰られてから4ヶ月以上たってますよ?」
どういうことですか?王女様。
なんか噛み合わないって思ってたけど、これって…。
「確認ですが、私がこちらから帰って4ヶ月っていうのは間違いないんですね?」
「そうね、アリア、ユリネ?」
「はい。」
「間違いありません」
「私は、帰ってからこっちに来るまで4日しか経ってないんです」
「「「「!?」」」」
「それって…」
「おそらく時間の流れが違うんだと思うのですが、そうなると説明のつかない事が…前回こちらで3ヶ月ほどお世話になって、元の世界に戻った時も3ヶ月経ってたんです」
謎だよね。
こっちで3ヶ月ちょっと過ごしたから地球でも同じだけ時間が進んだ。
時間の流れが違うならおかしいのだ。
今の話を踏まえたならこっちで3ヶ月なら地球だと3日じゃないとおかしい事になる。
転送の魔法陣に細工をしたからいつものように時間が戻らなかった。
そう思ってたけど…
あの時、単に帰るだけならリングを使えば時間も戻った状態で帰れただろう。けど、性別を戻すために細工をした魔法陣を態々用意してもらった。
まぁ、王妃様は私があのリングに魔力を注いで帰れるまでに一年くらいかかるのを前提にしてたら…元々魔法陣は準備してくれていたんでしょうけど。
「以前、帰る時につかった魔法陣ってまだあります?」
「ええ、一応あの時の魔法陣への細工が上手くいったかわかるまではと。その姿を見てうまく行かなかったのはわかったのですけどね」
申し訳なさそうに王妃様が言う。
「それは気にしないでください。戻った世界に強制力が働いて、私は元々女性っていう事にもうなっているので…」
「そうでしたか…本当にごめんなさいね」
「もう何度も謝っていただいたのでもうそれくらいで」
「ありがとうございます」
「帰るときに使った魔法陣見せていただけますか?」
「勿論。 アリア手配を」
「はっ」




