祖父の待遇
ご実家へ帰る王妃様とアリアさんと別れ、私達のお屋敷に帰ってきたんだけど…。
「ちょっとお母さん! アレはあんまりだよ! 可哀想がすぎるよ」
玄関を開けた途端、待ち構えていた母さんがまた怒ってる。 何事!? (あー…みちゃったのかぁ)
どういう事? (お留守番してるお祖父ちゃんのあつかい?)
はい? (縛られてるの)
マジで!? (マジなの。お祖母ちゃんを呼びに来たときに縛るのを見ちゃったの)
理由はもう言わなくてもわかるけど、見ため子供のお祖父ちゃんが縛られてるのとか想像したくないんだけど!? (ベッドに縛られてるの)
また事案だよ! ヤンデレヤバいわ…。
「何よ、ナツハは何が不満なの?」
「お父さんが可哀想だって言ってるの!」
「安全のためよ。またフラフラ出歩かれたらって考えたら心配で出かけられないわ」
「家に誰もいないから探してて、縛られてたお父さんを見た私の気持ちわかる!?」
「知らないわよ」
「…はぁ。もしかして私を迎えに来た時も? だから帰った時に外で待たされたのかぁ…」
「当たり前よ。あの森は危険なのよ」
数日縛られてたの!? 魔力体でよかったね…いや、良くはないけど。 人だったらって考えたら…。 (漏らしてるの)
それで済めばマシな方だよ!
「早く解いてあげてよ! 私じゃ解けなかったから」
「わかってるわ。あれは特殊なの。ナツハでは絶対に解けないわ」
そう言ってお祖母ちゃんは二階へ。それを母さんは複雑な表情で見送る。
お祖母ちゃん一人で出かける時は、お祖父ちゃんを毎回縛っていってる説。 (ありそう…)
「アスカ、私もアスカを縛っていいかしら…」
「やめて!?なんでそうなるの」
「だって…ねぇ、未亜」
「…うん」
「ママを縛れるわけないの」
「「……確かに」」
「主様はペット枠?」
「違うから!」
それはレウィでしょう…。
お祖母ちゃん、ちょっと恨むよ?うちの子達が変なこと覚えちゃったよ…。
しばらくしてお祖父ちゃんを抱いたお祖母ちゃんが二階から降りてきた。
「やぁ。みんなおかえり」
「ただいま、お祖父ちゃん」
「ただいまなのー」
お祖父ちゃん慣れきってるなぁ…。
「お父さんも怒りなよ! あんな扱いされて…」
「うん?何をだい?」
「…もういいよ。お父さんがいいなら何も言わない」
「それがいいわね、ナツハ」
帰りが遅かった理由をユウキ達に軽く説明しつつみんなで夕食。王妃様の詳しい事は伏せておく。
「じゃあ、姉ちゃん達は塔の試練へ行くんだね」
「そうなるね。まぁすぐ終わらせるよ」
王妃様の身体に負担をかけないためにも。
ドラゴンへの適応は今は考えてられない。身体が大事。
理由を知ればアキナさんもわかってくれると思う。
「…あの塔をすぐにかよ…。まぁ、あの戦力なら当然か。 ユウキ、それなら俺達はギルドで仕事しないか?」
「そうだね、せっかくギルド証も貰えることだし」
「それなら私も行くよ」
ユウキと両親はギルドへ行くのね。 ってことは試練が始まったら、またお祖父ちゃんは… (ママ、考えたらだめなの)
…そだね。お祖父ちゃんが受け入れてるのなら。 (愛のカタチは色々なのー)
またどこで覚えてきたのやら。
夕食後に、親衛隊の隊長、サージェさんが訪ねてきて、試練は3日後。詳細はまた後日。
生憎サージェさんは運営側に回るということで、同行できないらしい。
王妃様達にも同じ内容を既に伝えてあると。
試練までの空いた時間を私達はどうしようかって話になって…。
シエルがドラゴライナ王国の街の洋服事情を知りたいらしく、私がついて行ってあげたかったんだけど…。
「姉ちゃんが街へ行くのはやめて! 心配なら僕がついていくから大人しくしててよ」
「なんでよ!?」
「…絶対になにかトラブルに巻き込まれるか、トラブルを起こすでしょ?」
「そんな事は…」
「アクシリアス王国のギルドで、何があったか忘れた訳じゃないよね?」
「うっ…。わかったよ! ユウキの意地悪!」
「何とでも言って。何かあってからじゃ遅いんだし」
「意地悪! 意地悪! 意地悪!」
「何度でも言えなんて言ってないからな?」
「お姉ちゃん、私もついていくから」
「主様、ボクも!」
「なら私も行くよ。みんなで街へ遊びに行こうね」
「…わかったよ。母さん、みんなの事任せるね」
やれやれ…。私もちょっと街を散策したかったな。
「アスカちゃん、それなら私達はドラゴンの里へ仔ドラゴンの確認に行きましょうか。転移できるのよね?」
「フィアね! アスカお願い。妹に会いたいわ」
「そうだね、じゃあ転移の準備だけしておくよ」
座標の確認をして魔道具へ刻むだけだし。 (何度も言うけど、それママ基準…)
便利なんだからいいじゃない。 ティーはどうする? (当然ママといくのー!)
わかったよー。 (フィアにあえるのー)
交代でお風呂へ。私はティーと二人で最後に入って、クリーンをかけてお風呂場の掃除。
メイドさんのお仕事を少しでも減らしておきたい。
お世話になりっぱなしだし…。美味しいご飯とか。
「お部屋に戻ったらティーの分体にリンクして、座標みてくるのー?」
「そうだね、そしたらすぐに行けるし…」
ティーと話しながら、脱衣所から部屋へ戻る。
未亜たちは私とティーがお風呂から出るのを待っててくれたらしい。
「先に寝ててもよかったのに。 あっ…そうだ、未亜。今日は私と一緒に寝ようか?」
「え? それって…」
「アスカ! それなら私も一緒に寝るわ!」
「うん、いいよ」
多分というか、確実に未亜はうなされる。 私やユウキがそうだったように…。
初めての戦闘っていうのはそれくらいメンタルにくる。
魔道具で緩和してあげる事も考えたけど、この先のことを考えたら自分で克服して耐性を手に入れる方がいい。 (そしたら次からはマシになっていくの)
そうだね。だからしばらくは辛いだろうけど…。 私には近くにいてあげる事しかできない。
リア達が何やら盛り上がって準備してるけど、私はティーの分体へのリンクを試すね。 (あい!)
すでにリンクしてるティーから、さらに分体へ…。
これ…、一体幾つ置いてるのよ!? (ありとあらゆる所?)
自宅や学校まで…。ざっと3桁は超えてるな。 (センサーみたいなものだし…)
選んだ分体を意識するだけで、景色や音、空気感まで…まるでそこに居るかのように感じられるね。 (うん!)
この辺はドラツーへリンクしたときと同じだね。
あちこち見てみたい気持ちもあるけど、今は取り敢えずリアの故郷、ドラゴンの里へ。
座標の確認…。よし。 フィアの事も気になるけど、明日会いに行けるし、リアに先んじて見に行くのもなんだか申し訳ない。
あと一つだけ確認しておきたいところがあるから、借りるね。 (うん! どこ?)
ツリーハウス。 (あぁー)
えーっと…居た! ティーの言ってた様に髪が葉っぱみたいになった、見た目は私より年上?
ペントハウスのベッドでぐったりしてるな…。
「だれー?てぃー?」
気づかれたか。 (そこの分体は隠蔽がゆるくしてあるから)
なるほど。
「ティーではないけど…」
「じゃあ、ままの方?」
「そうなるね、ごめんね急に」
「ううんーお礼、言いたかったから。樹を想ってくれてー、貰った温かい魔力は忘れないーありがとー」
「いいよ、負担かけたのも私だからね」
「感謝ー。 そういえばーエルフが何人かこの森へきたよー」
シルフィ様が王妃様に話して連絡したのかな?それにしても仕事が早い…。
「仲良くやっていけそう?」
「大丈夫ー。挨拶とお供え?にフルーツたくさん貰ったー」
「それは良かったね」
後で定時連絡の時にティアねえ様に確認してみよう。
「ままも一度会いに来てー」
「そうだね、時間が出来たら行くよ。エルフの人達の事よろしくね」
「はーい」
樹の精霊にまでママと呼ばれたのだが? (ある意味合ってるし…)
確かに私の魔力が元になったんだもんなぁ。 (二人目おめでとう?)
…まぁいいけど。それなら余計にちゃんと会いに行かないとね。
座標を拾っておこう。 転移して会いに行けばいいし。 (その時はティーも行くー)
わかったよ。
意識を本来の身体に戻す。
あれ?お屋敷の玄関にアリアさんの魔力反応? 何かあったのかな…。
急いで玄関へ向かう。 (どうしたんだろ…)
メイドさんが応対してくれてたけど、やっぱり私に用事だった。
「すみませんアスカ様、夜分に…」
「大丈夫です。何かありましたか?」
「王妃様からの伝言を…」
メモを渡される。 えっと…。
”何も言わずに家に来て“
詳細は!? いや、緊急かもだし…すぐに行こう。
「ティー、未亜達に伝言お願い」
「はーい!」
ストレージから外着を取り出して着替える。緊急だから場所とか気にしてられない。 (大胆!)
「アリアさん、行きましょう」
「ありがとうございます。ご案内致します」
お屋敷を出てアリアさんについていく。
…って、数件お隣なだけじゃん! まぁそうだよね。ここのエリアは王族関係者しかいないんだし。




