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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第四章

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帰るべき場所



「セルナは自分で鑑定使えたよね? 自己鑑定してみなさい」

「…?はい、お祖母様。  はぁぁ!?ちょ…えぇっ? 種族ドラゴンって、どういう事?前は人だったのに!」

アキナさんの指示で自己鑑定した王妃様が叫ぶ。

前は人だったんだ。それなら無理もないと思う。私も種族が”人?魔王“になってるのを見た時、同じような気持ちだったし…。


それから私とアリアさんが、試験の戦闘中に起こった事を説明し、お祖母ちゃんが補足してくれた。

「セルナは種族がドラゴンになる事は、決まってたんだよ。だからこそ貴女の名前に私の名前をいれたんだよ?」

そっか…王妃様の本名は”アキセルナ“だったね。 (まんま入ってるの)

うん、理由を聞いたら納得だよ。



「でも、私の継承権は低くて…」

「子供の時から期待をかけられたら、重荷にしかならないでしょ?いつ覚醒するかもわからないのに」

「ですが…成長してからでも話しておいてほしかったです」

「よく言うよ! 私の話なんて聞かずに勝手に冒険者を始めて帰ってこなかったり、挙げ句には黙って国を飛び出していったのは誰?」

「うっ…それは申し訳ありません」

「こうなってくると、こっちへ帰って来てもらわなきゃいけなくなるね」

「…そんな! アクシリアス王国には陛下も子供たちもいるんです! それだけは…」

「無責任に勝手な行動をした報いだよ。自分の行動には責任を持ちなさい! 高位の継承権を持つセルナを簡単に国の外へやれる訳が無いのが理解できない訳じゃないでしょ」

「……それでも私は、帰らなければいけません」

「そう、ならその覚悟を示して。 そして私を納得させてみなさい」

「何をさせるというのですか…?」

「塔の試練、それを自分の力でクリアしなさい。当然だけどアスカちゃんの魔道具は使用禁止だからね」

「そんな…」

アキナさんの言い分もわかるけど、王妃様が帰りたい気持ちもわかるし…。

私達が口を挟める内容じゃないから何もできないのが辛い。


「…考える時間をください」

「いいよ。でもまた勝手に逃げ出したら許さないからね。今度は何処までも追いかけていくから」

「はい…」

アキナさんはそれだけいうと部屋を出ていってしまった。

王妃様もアリアさんも表情は暗い。


うーん…。ねぇ、ティーどう思う? (う?)

アキナさんのアレ本気かな? (どゆこと?)

多分、本気で帰らせないつもりは無いんじゃないかな。 (え?)

だって、そうなら条件なんて出さないでしょ? 塔の試練って多分、継承権を持つ人が挑んで王位を受け継ぐやつだよね。 (なるほど…じゃあなんであんな意地悪いったのー?)


多分だけど、試練の最中にドラコンになった事で変わってしまった力を使いこなせるようにさせたい。

後は、国を出ていくのならアキナさん自身が安心して送り出せる様になっててほしいとか…そういう事な気がしない? (うーん…)

考え過ぎかなぁ…。 (当たってそうな気がするのー)



「アスカちゃん、助けてくれてありがとうね。またお世話になっちゃったわね」

俯いていた王妃様が、顔を上げて無理に笑顔をつくりそんなことを言う。

「いえ、それはいいのですが…」

「…アスカちゃん。私の事、鑑定したわよね?」

「はい、状態を確認するために已む無く…すみません」

「それはいいのだけど…、じゃあ見たわよね?」

「…はい」

「誰かに話した?」

「いいえ」

「ありがとう、そのまま誰にも言わないで。ティーちゃんもお願いね」

「わかりました」

「あい!」

言える訳がない。 (うん、国家機密レベルなの)

だよね。 多分、お祖母ちゃんも鑑定した時に気がついていると思うけど、話したりしないと思う。

今のやり取りにも口を挟まなかったくらいだし。


「王妃様はこちらへ残られるのですか…?」

「私は帰るわよアリア。私の居場所はアクシリアス王国にあるのだから」

「はい…。しかし、塔の試練とは具体的にどんな事をするのですか?」

「それはね…」



塔の試練。

今回はギルドの試験会場として使っていた塔、それ本来の使い道。

最上階で待つ現女王陛下の元へたどり着き力を示す事。

認められれば王位を受け継ぐ。

ただし今回の場合は王妃様の希望を通す為の試練となる。


ルールとしては、仲間は連れていけるけど、自分が戦って倒した相手のみ。

内部の敵や罠についての詳細は不明。

期限はないけど、一度入ったらクリアするかギブアップする迄、塔から出ることは許されない。

当然ギブアップしたら、王妃様の希望は叶えられないって事になるんだろう。


「…アスカちゃんに付いてきてもらえたら心強いけど、そもそも私がアスカちゃんを倒すなんて不可能だし…」

「王妃様、それって…倒すのは戦闘でだけに限った話なのですか?」

「え?」

「例えば、戦闘にしても、魔法戦なのか、近接戦なのか…または、頭脳戦でも戦いですし」

「確かに、戦いの種類までは決められていない…その発想はなかったわ」

王妃様はそのまま考え込んでしまった。


これも一種の試練なんじゃないかな? (そうなの?)

例えばだけど…慕ってくれる人が多ければ、必ずそこに気がつく人がいるよね? (うん)

国を纏める人に、必要なのって強さだけじゃなく、仲間。力になってくれる人だよ。 (今日はママが鋭い)

失礼ね…。これでも一応魔王として統治してたんだから。 (そうだったの)



「それなら私と戦いましょうか」

「お祖母ちゃん?本気なの?」

「…これは独り言だけど、私はずっと森に籠もっていたから人間界の常識や歴史には詳しくないのよね」

そういう事か…。


「よろしいのですか?」

「ええ、多分アキナも本気で言ってる訳ではないはずよ。 仮に本気で家族を引き離そうっていうのなら私が締め上げてやるわ」

「ありがとうございます…」

お祖母ちゃんもやっぱりそう思ったんだ。 (うんうん!)



 



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