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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第四章

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ダンジョンツアー



未亜Side



ボス戦へ行くお姉ちゃんたちを見送り、私達も動きやすい服に着替えた。

ダンジョンツアーにスカートで行く訳にもいかないし。


「お姉様の許可がもらえてよかったの」

「うん、危ないからダメって言われるかもって思ってたからね」

「わう! 主様の魔道具があるなら大丈夫!」

今回このツアーへ参加したかったのは、私になにができるか、それを知るためでもある。

お姉ちゃんの役に立ちたいから…。

リアちゃんとも話したけど、まずは色々やってみる事に。これもその一つ。 

ただ…シエルちゃんの言うように、本当にお姉ちゃんがすぐに許可をくれたのが意外だった。

もっと説得が必要かと思ってたから。


ダンジョンツアーにはシエルちゃんも興味があるみたいで付いてきてくれるし、レウィちゃんはお姉ちゃんを説得するための護衛として頼んだ。

二つ返事で引き受けてくれたレウィちゃんには、何かお礼をしないといけないね。




えっと、隊長さんの話だと、ダンジョンの入り口、屋台の並ぶ通りに受付ができてるって話だった。

試験初日に、リアちゃん達と屋台でミノウシの串焼きとかを買った、この通りで合ってるはずなんだけど…。

未だに屋台は賑わっているし、人出もすごい。


「未亜姉様、受付ってあれかな?」

シエルちゃんが指差す先に、待機所で見慣れた装備の親衛隊の人が何人かいるのが見える。

綺麗な紅葉色の鎧だからわかりやすい。

街を警備してる兵士さんたちとは明らかに装備が違うから見分けもつきやすい。

「ぽいね、結構並んでるみたい。急ご」

少し足早に受付へ向かう。


近くまで行ったら親衛隊のノディさんが気がついてくれて、並ぶまでもなく番号の書かれたバッヂを渡してくれた。

「それをつけて、案内をする親衛隊メンバーの指示に従ってくださいね」

「ありがとうございます」

私は腰に、シエルちゃんは腕に。レウィちゃんは流石に自分では付けられないから服の背中につけてあげた。


「バッヂをつけて準備のできた人はこちらへー!」

「わぅ?行かないと」

「うん、シエルちゃんいこ」

「はいなの」

既に大人3人と子供二人の5人集まっている。 

ある程度集まると出発するらしく、ちょうどダンジョンへ入っていったグループが見えた。


「8人ですね、ではまず簡単に説明しますから、しっかり聞いてください」

親衛隊の人のお話は、このダンジョンがどういう物かという事から始まり、中で遭遇しうる危険についても教えてくれた。魔獣や罠等についての説明もしっかり聞いておく。


「ここまででわからないことや、質問があったら、遠慮なく聞いてください」

「あの、ダンジョンって他にもあるんですか?」

「そうですね。 天然の洞窟などに魔獣が住み着き、内部を拡張していったりすると大きくなります。それをダンジョンと呼ぶ場合。 後は太古の遺跡等もダンジョンと呼ばれます」

魔獣の巣や、遺跡かぁ…。どっちも危険そう。


「巣の場合、いろいろな魔獣が中で棲み分けて、共存していたりするので入るのは危険です。 ただ…様々なものを溜め込んでいたりもするので稀に本当の宝物があったりもします」

聞いている人たちから、おぉーって歓声が上がる。


「ですが! そんな事はまずありません。それに危険に見合った物が手に入る訳でもありません」

そうだよね。ゲームじゃないんだから宝物が定期的に補充されたりする訳が無い。

さっき歓声を上げていた人があからさまにがっかりしてる。


「遺跡の場合は許可が必要なので、上位の冒険者でなければ入ることはできません。ただ、稀に新しい遺跡が見つかったりすると、見つけた人には許可が出る場合もあります」

発見者だけの特別処置ってことなのかな?


「他には何かありませんか…?   無ければいよいよダンジョンへ出発します!」

私以外は質問する事もなかったので、ついにダンジョンへ。


「わぅ、ボス部屋で待ってただけだから、入り口から入るの楽しみ!」

「そっか、レウィちゃんはボス部屋から出たりしてないんだね」

「わう!」

「…未亜姉様、手を繋いでもいい?」

「うん、いいよ」

私も楽しみなのもあるけど、緊張してるし…少し怖いから有り難い。

レウィちゃんは私達の少し後ろからついてきてくれる。


ダンジョンへ少し入ったところで先頭を行く親衛隊の人が止まる。

「内部はこのようにある程度の明るさは確保されていますが、当然屋外よりは暗くなっています。魔法や魔道具で明るくするのがおすすめです」

そう言って親衛隊の人が明かりの魔道具を付けてくれて先を照らす。

「ただし、魔獣によっては明かりへよってくるタイプもいますので、お気をつけください」

何だろ。街灯に集まってくる虫みたいな?コンビニとかで夏によく見るよ。


その後もダンジョンを進みつつ、いくつかの罠を見せてくれたり、実際に魔獣が出てきて親衛隊の人が倒してくれたりと、驚きの連続だった。


「武器や魔法の使える方が居られましたら実際に戦ってみますか?」

魔法は使える。お姉ちゃんに習ってある程度の制御はできる…でも、怖いよ…。お姉ちゃん…。

「未亜姉様、戦ってみるの」

シエルちゃんもある程度の魔法は使えるらしく、レウィちゃんも援護してくれるって言うから覚悟を決める。

自分で言い出したことだから…。取り敢えず一人でやってみる!

シエルちゃんは心配そうだけど、私が自分でやらなきゃ…。


親衛隊の人からダンジョンの狭い通路での基本的な戦い方を教わり、私が先頭で前へでる。

「初めてだと緊張すると思いますが、この階層に配置されているのは一番危険度の低い魔獣なので、リラックスして挑んでみてください。もしもの時は魔道具もありますし」

そう言われても…やっぱり怖いものは怖い。

「がぅぅ…くる!」

レウィちゃんが教えてくれたから、深呼吸。落ち着いてお姉ちゃんに教わった通りにしっかりイメージをして魔法の準備。


曲り角から飛び出してきたのは、猫ほどのサイズのネズミ?

お姉ちゃんのマネをして氷の槍を狙って飛ばす。 だけど…

「当たらなかった! どうしよう!」

あっさり躱されて、こちらへまっすぐ向かってくる。 ヤダ…怖い! ムリムリムリ!

「わぅ!」

後ろから飛び出してきたレウィちゃんが一撃で倒して助けてくれた。

倒されたであろうネズミみたいな魔獣は跡形もなく消えていった。


「うぅ…こわかったぁ…」

へたり込む私をシエルちゃんが支えてくれる。

「未亜姉様、もう大丈夫なの…」

「ぅぅ…ありがとう…」

「わう?」


「大丈夫ですか? 初めてはみんなそうなりますから。 やってみようと頑張った勇気だけでも凄いことです」

そう親衛隊の人は言ってくれたけど…。 

お姉ちゃんが言ってた、恐怖でトラウマになるっていうのを身を持って体感した。

まだ身体は震えてるし、涙も止まらない…。


その後はとてもじゃないけど魔法を使えるような状態ではなく…。

シエルちゃんが魔法であっさりネズミ魔獣を倒すのを見たり、小さな子が剣で向かっていって返り討ちにあって怪我をするのを目の前で見た。

私より小さな子のが逞しいよ…。

私なんてお姉ちゃんの魔道具があるから怪我なんてしないのに、それでも怖くて無理だった…。



ダンジョンツアーが終わり落ち込みながらの帰り道。

やっぱり、私が戦闘でお姉ちゃんの役にたとうなんておこがましかったんだ…。

一度落ち込むとどんどんネガティブになっていく。これも私の悪い癖。

これも直したいから色々やってみようと思ったのに、その結果がこれなんて…。

「私、お姉ちゃんの傍にいていいのかな…」

「…未亜姉様、うちもその気持ちわかるの…。だって私のせいで森は…お姉様は…」

「わぅ……」


三人でどんよりとお姉ちゃん達の待つ、待機場所へ戻る足取りは重い。


またリアちゃんに怒られちゃうなぁ…。



いやダメだよ私! しっかりしなきゃ!

落ち込んでばかりなんていられない。戦闘がダメだったってだけ。それに親衛隊の人も言ってた、最初はそんなものだって。


自分で決めた事なのに、一度の失敗で落ち込んでたら本当にお姉ちゃんの隣にいる資格なんてなくなっちゃう。リアちゃんと同じように、隣に立てるようになりたいんだから。

お姉ちゃんはきっと気にしないって言ってくれる。優しくて大好きなお姉ちゃん。

でも…私はそんなお姉ちゃんだから役に立ちたいんだ。


そう、これは私のわがままなんだから。 私が自分で頑張らないと。

今は一人じゃない。 支えてくれるみんながいる。

私は頑張れる!


私の巻き添えで落ち込ませてしまったシエルちゃんと、レウィちゃんにはミノウシの串焼きを買って渡した。

「二人とも付き合ってくれてありがとね! ちょっと失敗しちゃったけど…」

わざと明るくおどけてみせる。

「未亜姉様…。ううん、うちもお姉様の為にできること増やしたいから、頑張るの」

「わぅ! 主様の為なら!」

私達の想いは同じなんだね。お姉ちゃんの役に立ちたいって。


それに…今は決して一人じゃない! だから頑張れる。


三人で手を繋いでの帰り道はきれいな夕日に照らされていて、前より少しだけ前向きになれた気がするよ。





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