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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第四章

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限界をこえて



父さんと母さんのせい…というか自分のせいでもあるんだけど、25階層のボスまでする羽目になって忙しい。

しかも最終日にこの階層へやっとたどり着くような人達は、初心者をようやく抜け出したような冒険者が大半。

加減するのも大変で…そっちへ気を使う分余計に疲れる。 

本当に、戦闘力がわかる魔道具を作って良かったよ。


リアやレウィが手伝ってくれると言ってくれたけど、昨日までここのボスは母さんが一人だったのに、変える訳にもいかないかなって。 まして相手が初心者みたいなものだし。

なので評価役だけ頼んで来てもらっている。



数十組のパーティーの相手をして、通過できたのは3割ほど。

落としたのは、単純に戦闘力が足りないのは勿論、私を見て舐めた態度を取る人や、イヤラシイ視線を向けてくる人もいた。

やっぱり、低ランクで人数が多いからか質の悪い冒険者もそれなりに多かった。

きっちりレポートにまとめた上で、あまりに酷い人は、アキナさんに言われた通り徹底的に叩き潰した。


心もプライドもバッキバキにへし折っておいたから、改心するでしょ。 (最後変な呼ばれ方するようになってたけど…)

知らない! 誰が姐御よ! まったく…明らかに私より年上ばかりなのに。 (ママ、45階層に誰か来た!)

ありがとう、一度戻るね。 はぁ…もぅ! 忙しすぎるよ…。


待機部屋で、未亜とシエルに手伝ってもらい早着替え。 45階層のボスへ向かう。

25階層は黒髪、忍者姿で行ってたからね。

親衛隊の人達が言うには低階層にはもう殆ど人はいないらしい。

そうなると、レウィもようやくお役御免かな?



ティーやリアがついて来たがったけど、我慢してもらった。

多分、ユウキ達か王妃様達でしょうからね。


母さんの私への八つ当たりにうちの子を巻き込みたくない。

王妃様達だった場合は、約束したからね。次はちゃんと戦う…って。



45階層ボス部屋、さて先にくるのはどっちかな…。

順当に行けばユウキ達だと思うけど。


部屋に来たのは、王妃様とアリアさんだった。

さすがの二人も今回は疲れてるっぽいね。

 

「ここは45階層、私と戦って力を示し上層への証を手に入れてください」

「アスカ様、お一人ですか?」

「はい、お約束ですから」

「ふふっ、アスカちゃんありがとう! アリア、頑張るわよ!」

「はいっ」


「突破条件は2つのうちどちらか、一つ。 2分後にお二人ともが意識を保ち立っていること、もう一つは私へ一撃でいいので入れてください」

「前より時間が短くなったわね?」

「はい…おそらくアスカ様の魔法が解禁されるのでは無いでしょうか…」


私は以前アキナさん達のパーティへと使ったのと同じ威圧を部屋中へ飛ばす。

「ひぅ…なにっ、これ…」

「くっ…身体に力が…足が震えて…」

「さて、舞台は整いました。頑張って凌いでくださいね」


「うぅ…アリア、行くわよ」

「っ…はい」

残念ながらお二人はここの規定戦闘力を満たせていない。

それでも威圧で気絶しなかったのはすごい。アキナさんの様に相殺も難しいだろうに。


そう思っていたんだけど…。 王妃様の魔力が膨れ上がった。まるで母さんがドラゴンハーフになる時のように。 規模は母さんのより小さいけど、それでも戦闘力は倍程へ跳ね上がった。


ピンチで覚醒したとでも言うの? 王妃様もドラゴンの血が流れているのだからありえないとも言えない。

王妃様から無数の魔法が飛んでくる。魔法防壁で防ぎつつ、斬り込んてきたアリアさんを迎え撃つ。

「はぁぁぁ!」

アリアさんの攻撃も前より重い。 どういうこと?アリアさんにまでバフがかかってる?


王妃様へ牽制で氷の槍を飛ばしつつアリアさんと斬り結ぶ。

ガキーン…

何度目かの打ち合いの後、半ばほどから折れた刀身が宙を舞う。

うそっ…私の剣が折られた!? 確かに安物の数打ちでしかない鉄の剣だけど、多少の魔力を纏わせていたのに!

慌てて魔法防壁で斬撃を防いで別の剣を取り出す。


でもそこへ王妃様のファイアボールが降り注ぐ。

うわぁ…マジかぁ。 魔法防壁でファイアボールを防ぎながら王妃様を確認したら翼がはえてたよ。

角と尻尾はないけど…ドラゴンハーフだよねアレ。


アリアさんも魔法の合間にしっかり追撃してくる。

剣に魔力を纏わせて斬撃を受け止めながら王妃様を見てると、角も増えてきた!!

しかも、今は目が虚ろで危なそう。どういう事…。

「アリアさん! 王妃様が…」

「はい? いえ、その手には…ってアスカ様がそんな手を使う訳がありませんね」

「様子がおかしいんです!」

振り返ったアリアさんも王妃様の姿を見て慌てる。


「ドラゴンハーフ…?」

「はい、最初は翼だけでした。その後、魔法を撃ってたら角が…」

「今は尻尾もありますよ!?」

そうなんだよね、翼とかの色もアキナさんに近い。完全にドラゴンハーフ。


目は虚ろなままで…撃つ魔法がデタラメになって乱射してる。

これは流石にまずいと思って、魔法から守るためにアリアさんと王妃様を魔法防壁でつつんでから、王妃様を睡眠魔法で眠らせる。

倒れた王妃様は、未だドラゴンハーフのまま。


「王妃様!!」

「診てみます」

「お願いします! どうか…王妃様を…」


魔力ドームで包んで鑑定。

以前魔力循環した時より魔力が十倍以上になってる、状態異常は…睡眠。 いやこれは私の魔法だ。

えっと、魔力暴走に混乱? これ、レウィが急に魔力を大量に取り込んで暴走してたのに近い?

取り敢えずこれは解除しておく。


今回は魔力を取り込んではいないよね。 となると…これか。

称号に覚醒ドラゴン。先祖返り…。 先祖返り!?ってことはアキナさんか、お祖母ちゃんの事だよね?


種族もドラゴンになってる。どうしよう…これ私のせい!? (覚醒を促しただけ?)

あぁもぅ…またやらかしちゃったよ。 お世話になった人なのに…。 (悪いことー?)

私にはわからないよ…。王妃様が嫌がるのならいいことでは無いね。 (誰かに相談するの)

だね、取り敢えずアリアさんに説明して…、聞くとしたらお祖母ちゃんだろうなぁ…。 (呼んでくるの!)

お願い。 今日は、借りてるお屋敷でお祖父ちゃんとのんびりしてるって言ってたから。 (あい!)

それにこれ…王妃様は気がついてるのかな? 

戦闘なんてしてて大丈夫なの!?


「アスカ様、王妃様は…」

「今は眠っているだけです」

鑑定でわかった事をアリアさんへ隠さず説明をした。

ただし、一つを除いて。これは王妃様に確認しないと口外できない。


「先祖返り、ですか…」

「はい…種族もドラゴンになってます。前の種族は何だったかアリアさんは知っていますか?」

「いえ、さすがにステータスをお聞きしたことはありませんから。 ですが…いくつか気になる事は私もあります」

アリアさんが言うには今回のダンジョンアタック中に、王妃様が魔法の威力が上がった気がする、と言っていたと…。最初は単に戦闘を繰り返したことでスキルレベルが上がったんだと喜んでいた。

でも、その後の休憩中に自己鑑定した王妃様が、何やら考え込んでいたらしい。



「それが43階層だったかと…。41階層からは特に魔獣が強く、私もスキルなどのレベルが上がりましたから」

レベルが上がった事で覚醒した?わからない。取り敢えずこのままにはできないからアリアさんを連れて待機部屋の方へ移動することに。

眠っている王妃様はアリアさんが抱き上げる。その直後に王妃様の翼とかが消えた。

慌ててもう一度鑑定したら、魔力は下がってたからドラゴンハーフ姿を解いた、みたいな事かも?

でも種族とかはそのままだった。



待機部屋へ戻るなりリアに怒られてしまった。

「アスカ、アリアさんはこっちへ来たらダメじゃない! って王妃様どうしたのよ?まさかアスカ!」

「緊急事態なの。リアにも相談するかもだから」

「ええ、そうよね。アスカが加減を間違えるはずないもの」

そっちの心配されてたの!? いや、私のせいなのは間違いないか…。


「お姉ちゃん、それってさっきティーちゃんがレウィちゃんに乗って飛び出していった事と関係があるの?」

「うん。未亜、悪いんだけどソファーを一つ空けてもらえる?」

「わかったよ! タオルとかもあるから」

未亜とシエルがすばやくソファーを整えてくれて王妃様をアリアさんが寝かせる。


「何かありましたか?」

親衛隊の人達も心配して様子を見に来た。

「セルナ様!? どうしてここに…」


「ママー! お祖母ちゃん呼んできたの!」

ティーとレウィを抱えて、飛んできたっぽいお祖母ちゃんが室内へ。到着が早い! (がんばったの)

ありがとね。

「ティーちゃんからおおよそは聞いたけど、私も診てみるわ。後で詳しい話も聞かせてもらえる?」

「うん。わかった…」


お祖母ちゃんは王妃様へ手をかざして鑑定してる。

「なるほどね…。すごいわ、この子いずれ私に匹敵する力を持つわよ。取り敢えず何があったか教えて」

まずアリアさんが最初にあったことを話し、それから私との戦いの話をする。

親衛隊の人達もみんなが話を聞いていた。


「…今わかるのは、この子は覚醒してドラゴン種へ進化したって事ね。 元々、ドラゴンの血が入っていたのならありえない事ではないけど、先祖返りって言うのはものすごくレアケースね。 発端の私、セイントドラゴンになるって事よ」

やっぱり…ドラゴンの先祖っていったらお祖母ちゃんだもんね。

セイントドラゴンって聞いて親衛隊の人達がザワついてる。そういえばお祖母ちゃんって伝説のドラゴンだった…。


「きっかけは今回のダンジョンでの戦闘。それからアスカちゃんとの戦いで自ら限界を越えようとしたからね」

「また私のせいで…」

「それは違うわ。いずれ必ずどこかのタイミングで覚醒はしていたわ。早いか遅いかだけ。 場所がダンジョンだったのは幸いね。 それに近くにアスカちゃんがいて止められたから助かったの」

「どういう事ですか?助かった…?」

「貴女はこの子付きの騎士ね? そのままの意味よ。 覚醒時に暴走して無意識のまま魔法を暴発させて魔力が完全に尽きたらそのまま死んでしまうわ。止められる人が居なかったら確実にそうなっていたでしょうね」

「っ! では、アスカ様が止めてくださらなかったら…」

「ええ。 良かったわね、うちの可愛い孫が傍にいて」

「そんな…。 アスカ様ありがとうございます! また私のお守りするべき御方を助けて下さり…なんとお礼を…」

「私は何も…」

「この子はいずれ私と同じレベルのドラゴンになるのよ?そんな子の魔力暴走を止められたのは私か、アスカちゃん貴女だけよ。 救ったのよこの子を」

そう言われても実感が…。眠らせただけだし。

王妃様は種族もいずれセイントドラゴンになるってお祖母ちゃんは言ってた。


お祖母ちゃんがしばらく傍にいて様子を見ててくれるらしいから任せる事に。

ドラゴンのお祖母ちゃんがいてくれて本当によかった…。






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