ダンジョン ボス待機部屋
アキナさんからの情報で、現在のAランクパーティーの平均的な強さが判明。
今回は、45階層でAランクになるから私はそれを意識して戦う。 (数値はー?)
冒険者のプライバシーだから内緒だよ。 と言うかティーは戦う時にわかるでしょ。 (そうだった)
リアの指輪とレウィの首輪にも同じ機能は追加済み。
40階層でB、35はC、30D…25E…20F…15G、とランクは下がっていく。
15から上がランカーとなり、それより下は見習いみたいなものらしい。
10から下は一層ずつ細かく区分けがあるみたいでボスも一層ずつにいる。
うちの家族は、20階層のレウィからだね。
各階層に求められる戦闘力も知らされてるから、私達はそれをしっかり意識して戦う。
25階層の母さんもあくまでも人の姿で戦うらしい。ドラゴンハーフだと、強すぎるのもあるけど、王族関係者だとバレると相手もやりにくいでしょ?って事らしい。
私達は身バレしてないからいいけど、母さんは知ってる人がいてもおかしくない。
何度かこの国へ遊びに来てたり、近くに現れた魔王を討伐してるんだから。
今回、ドラゴライナ王国へ来た最初に、警戒して囲んできた兵士さんも、母さんの名前じゃなくて”蒼白の巫女“でなら全員知ってたくらいだし。
私は1つ思いついたことがあって、試してみるつもり。 (うんー?)
40階層の時に魔力体を作って、意識のリンクして操作しようかと。 (おー。それならバレにくい?)
かなぁと思って。魔力体にも魔力隠蔽の魔道具を装備させればいいからね。 (姿はー?)
それを悩んでるんだけど…いいのないかな? (前の魔王…)
それもありか…。 (怖い方はヤーなの)
あれはねー。威圧感がすごすぎるから使わないよ。 (潜入に使ってた女の子?)
…そう…だね。 油断を誘えるし。シエルの作ってくれた服も着られるよね。 よしそうしよう。 (ママも策士…)
悪者みたいに言わないでよ。戦う相手側が飽きないようにって考えてるんだから。 (あはっ)
低階層のボス役を務める親衛隊の人達はめちゃくちゃ忙しそう。
交代で行ったり来たり…、ケガして戻ってきて治癒してもらったりと大変そうだ。
だから人数が多かったんだね。治癒師も混ざってたみたいだし。
親衛隊隊長のサージェさんは色々指示を出しつつ、冒険者の情報を纏めたりしてるっぽい。
「わかった、452と453は冒険者資格取り消しだな。報告ご苦労」
取り消しまであり得るのか。何したんだろ。
「隊長、そろそろ出番だと思いますので、私が変わります」
「そうだな、頼む。 お前は今回は戦えないんだったか」
「はい…すみません。陛下から止められてますので…」
「仕方ないだろう。大切な身体だ、無茶をさせたくないのだろう」
「…はい。 なので、雑事はお任せください」
「わかった、最終確認は私もするから気負わずにやれ」
「はい!」
体調悪いのかな?あの親衛隊の人…。 (あの人も女王様のお嫁さんなの)
あー。 なるほど…わかったよ。
お昼になって、メイドさんが食事を持ってきてくれたから頂く。
まだ出番はない私達は気楽なもので、のんびりとランチだった。
「ユウキ君たち大丈夫かな…」
「大丈夫よ、ユウキだってかなりの強さよ?」
「そうかもだけど、やっぱり心配だよ…」
「未亜はユウキの戦う姿をあまり見たことないもんね」
「うん…お姉ちゃん、大丈夫だよね?」
「問題ないよ。ユウキは私が背中を預けて、一緒に戦ってきたんだよ?」
「…うん」
そう言っても戦わない未亜にはわかりにくかったかな…。
私も勿論、怪我とかの心配はしてるけど、ユウキなら問題なく私の所まで来ると思っている。
ボス役の私達は倒されるとかではなく、規定の戦力を満たした戦いができていれば通過させるからね。
じゃなきゃ、参加者の殆どがドラゴンのリアかティーの所で詰む。 (ふふん!)
もっと言ったら、レウィがフェンリル化したらそこで終わる可能性も。
親衛隊の人達は食事もままならないくらい忙しそう。
食後まもなく、隊長のサージェさんも親衛隊二人を引き連れて魔法陣で出動していった。
思ったより早いなぁ。これは、レウィの出番も意外に早いかもしれない。
私もそのつもりで心の準備をしておこう。
「わぅ…主様、ボクが行く時はついてきてくれる?」
「うん、隠れてるけど近くには居るからね」
「わう! それなら安心!」
出番が近そうなのを感じ取ったのかレウィがちょっと不安そうにしてたから撫ぜてあげる。
「心配ならティーも行くの!」
「わうぅ! 一緒に行く!」
それでもいいね。この子達ならちゃんと加減はできるし。 (任せて!)
「やれやれ…まさか私が手も足も出せずに終わるとは…」
「はい、我々は見向きもされずに終わりましたし…」
「あの冒険者は新顔だよな? まだまだあんな猛者が埋もれていたとは」
「はい、過去に記録はありません。 今年から導入された魔道具での測定でも一人は飛び抜けてますね」
「道理で例年より私の出番が早いはずだ。この後も人数を増やして相手をする事になるが…」
「相手にされないでしょうね…」
出動してから、すぐに戻って来た隊長さん達がそんな会話をしてる。
もしかしたらだけど、ユウキと父さんかな? (かも?)
ティーは見に行ってないの? (うん、楽しみにしておくのー)
そっか、それもいいね。 (戦うとこをママに見てもらえるから!)
ふふっ、そうだね。でも怪我だけは気をつけてね。 (はーい!)
その後も親衛隊や隊長さん達は何度が出動しては戻ってきてる。
「例の冒険者には完全に手加減されて翻弄されているな。 しかも一瞬で気絶させられて、我々に怪我さえさせない…何者だ彼らは!」
「わかりません、詳しい情報は記されていないので…。もしかしたら何処かの国からのお忍び?」
「あり得るが…。そんな事をするのは一人だけで勘弁してほしいのだが?」
「ですね。 でも毎回の事なので私は諦めてます」
「あぁ、そうかお前は…。 やりにくくないのか?」
「いえ?むしろ全力で殴りに行きますよ」
「…はは。怖い怖い。副隊長の自覚さえあるのなら何も言わんさ」
「お任せを」
会話から察するに…多分アキナさんもこっそり参加してるっぽいなぁ。副隊長って多分奥さんでしょ? (正解!)
お話した人? (うん! 面白い人だったのー)
奥さんが沢山いる事でのヤキモチをぶつけてるんだろうか…。 (かもー?)
怖いなぁ…。まぁ私には縁のない話だね。 (………)
「主様、ボクの出番!」
魔道具の20階層を示す場所が光ってる。やっぱりエレベーターに見えるなぁ…。
「本当なの…お姉様、マスクを」
「そうだった。 ありがと、シエル」
シエルから布を受け取り顔を隠す。
「レウィ、ティー、行くよ!」
「「はい!」」
私達はボス専用、転移魔法陣で20階層へ向かった。




