意味はあるらしい
明け方に母さんたちが帰ってきたのを感じて目が覚める。
寝てるみんなを起こさないようにそっと部屋を抜け出して、ドラツーの外へ。
「あれくらいで根をあげるなんてね。 まだまだ鍛えたりなかったようね」
「…お母さんもう許してよ! 魔力もカツカツなの…。アスカのくれた魔道具がなかったら私でも何度か死んでたよ!?」
「生きてるじゃない。アスカちゃんに感謝しなさいよ?ケガ一つないんだから」
「メンタルはボロボロだよ!!」
「叫ぶ元気はあるじゃない。 そっちのポンコツは気を失ってるし…更に鍛える必要がありそうね」
「ひぃ…」
ドラツーから外へ出て見た光景はそれはもう悲惨だった。
キレイなはずの母さんの銀髪はボッサボサ…服は泥や返り血だらけ。
父さんに至っては白目を剥いて地面に泥だらけで転がってた。
「おかえりなさい…母さん大丈夫?」
「アスカァ…ひどいのよ! 貴女のお祖母ちゃんはドラゴンじゃなくて鬼だよ!」
「なんとでも言いなさい。鍛え方の足りない貴女達が悪いのよ」
「鬼! 鬼! 鬼!! おにーーー!」
お祖母ちゃんプルプルしてるからやめたほうが…。
「誰が何度でも言えっていったのよ!」
「お母さんだよ!」
いや何度でもとは言ってないよ!
そのまま口喧嘩を始めた二人を止める事もできないから取り敢えず父さんを診ておく。
ちゃんと魔道具は付けててくれたみたいだね。疲労と、魔力がギリギリで気を失ってるだけか。
ピアスに溜まってたはずの魔力もなくなってるし、相当の激戦だったんだろうね。
気を失っても剣だけはしっかり握ってるのはちょっと感心してしまう。
その剣もあちこち刃こぼれしてボロボロだけど…。望むなら直してあげないとなぁ。
「おにー! 悪魔! ヤンデレ!」
まだやってるのか…。
「ヤンデレって何よ! 私を本当に怒らせる気?」
「私はとっくに怒ってるよ! あんな無茶苦茶な事させられて怒らないとでも?」
「そう…ならかかってきなさい。出来るものならね」
「やってやる! お母さんなんて怖くないんだから!」
ちょっと…流石にそれはやめようよ。
私の願いを無視するかのように母さんはドラゴンハーフ姿に、お祖母ちゃんも翼だけ出した姿になる。
二人は拳を振り上げてお互いに突っ込んでいく。なんでそんな事するの!
咄嗟に飛び出した私はちょうど二人の間、ぶつかり合うところへ飛び込んで二人の拳を止める。
「「えっ?」」
「…やめてよ、二人とも。ただの喧嘩でここまでする必要ないでしょ?」
「いくらアスカでもそれは聞けないよ」
「ええ。今は離れていてもらえる?」
「……何か意味のある戦いなら止めないよ?でもこれは違うよね?」
「意味ならあるよ! お母さんを殴りたい! そしたらスッキリする」
「はっ…ナツハの拳が私に当たることなんてあり得ないわ。鍛え方の足りないザコだもの」
「…っ! ちっともお父さんに好かれなくて何度も逃げられたくせに…人攫い!」
「なんですって!?」
「聞いたよー? 今でこそラブラブだけど、最初は相手にもされてなかったんだよね?」
「〜〜〜〜〜っ!」
「追いかけて捕まえては逃げられて…何度そんなことをしたの?」
「うるさいっ! ナツハに何がわかるのよ!」
「わからないよ?私は最初からラブラブだもの。誰かとは違うし」
「ふんっ…、あのポンコツでしょ? ハッ…白目剥いてるわよ?そのポンコツ」
「ポンコツポンコツいうな! そっちなんてお子ちゃまじゃない。ちっこいガキよ!」
「はぁぁ?かわいいでしょうが! ずっとあの姿なのよ?可愛すぎるでしょ!」
ねぇ…なにこれぇ…。私を挟んで何してるのよこの二人。 (ママー?)
起こしちゃった? (あんな魔力がぶつかったらみんな起きるのー)
それもそっか…。
「子供に手を出すとかお母さんはちょっとおかしいよ?」
「今の見た目は仕方ないでしょう? アッチは今でも立派なのよ!」
暴力に訴えなくなったのはいいけどこれはこれで困る。
しかも下ネタ混ざりだしたし…。 (とめないのー?)
もうどうしていいかわからなくて…。 (じゃあ…)
じゃあ? (寝よう!)
…そうだね! そうしよう。
訳のわからない言い合いをする二人を残して私はドラツーへ戻る。
父さんは部屋へ入れといた。引きずってだけど。流石に父さんを抱き上げるのは…。
バッチぃからクリーンはかけてあげたけどね。
よしっ寝よう。ベッドは気持ちいいね。 (うんー!)
ティーを抱きしめて布団へ潜り込む。
「いやいや! アスカ嘘でしょ?アレほっとくの?」
「じゃあ、リア止めてきて。 おやすみ!」
「む、無理よ! 私も寝るわ…」
「えぇ…?お姉ちゃんもリアちゃんもそれでいいの?」
「未亜、もの凄い下ネタの応酬に耐えれるのなら行ってきたらいいよ」
「…無理だね。おやすみなさい」
「お姉様達が寝るならうちもー」
「わふぅ…わぁ…ぅ…」
罪のない顔でアクビしてるレウィが羨ましい。
なんか外が煩いからドラツーの魔法防壁に、外からの遮音効果と魔力の遮断だけ追加して発動。
もう知らない。止めたのに聞かないんだもん。
飽きたらやめるでしょ。
おやすみなさーい。
ユウキSide
!! なんだよ今の魔力!
飛び起きて窓を開けると母さんとお祖母ちゃん?その間に…姉ちゃん?
ケンカの仲裁でもしてるのかな? 姉ちゃんがいるならいっか。
と言うか姉ちゃんしか手に負えないよな。
お祖母ちゃんに対抗できるのなんて、多分この世界で姉ちゃんくらいでしょ…。
ふわぁ…全く。朝っぱらからうちの家族は騒がしいな。
王妃 アリアSide
っ! 何?今の魔力は?
「王妃様、部屋から出られませぬよう」
「わかってるわ」
隣の部屋からすぐに来てくれたアリアが窓を開けて外の確認をしてるけど…
「何が起こってるかわかるかしら?」
「それが…セイナ様とナツハ様が戦うのをアスカ様が止めたようです」
「ちょっと意味がわからないのだけど…親子喧嘩かしら」
「詳細までは…しかしアスカ様が出られているのであれば…」
「そうよね。私達が行っても足手まといにしかならないわ」
「はい。隣の部屋に居りますので何かあればお呼びください」
「何度も言うけどアリアも休んでいいわよ。ここより安全な場所なんて何処にもないわ」
「はっ…では失礼いたします」
「ええ、おやすみ」
ショタジジィSide
「むにゃ…すぅ…。 やめろーセイナ…縛られるのはもうイヤだ…むにゃ…」




