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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第三章

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誰でも失敗はする



森から帰ってきてから母さんの様子がおかしい。

普段、明るいから大人しいと違和感が凄い。 

何があったか大体の想像はつくけど。父さんが怪我をしてるし…。

なんで怪我を治した直後に渡してある魔道具を外すかな…。感覚が違うでしょうに。

戦いに身を置くのなら少しの感覚のズレが致命的になる事を知らない訳がないでしょ?


ユウキはなにやらお祖母ちゃん達に話をしてるから、森での出来事を報告してるんだろうね。


「父さん、怪我治そうか?」

「ん?そうだな頼む」

左腕に魔獣の爪で引っ掻かれたであろう裂傷。毒がなくてよかったよ。 

いつも通り治療し、しっかり完治させる。


「父さん、魔道具をどうして外したのかは予想がつくけど…母さんに心配かけてまで無理する必要があったの?」

「確かにそう言われるとな…迂闊だった。 大丈夫だって安心感があると修行にならない気がしてな」

「そういうセリフは、せめてまともに戦えるようになってから言ってくれる?」

「辛辣だなぁ…でもそのとおりだ。ユウキやレウィは俺が一匹倒してる間に、かすり傷さえなくあっという間に三匹も倒してたしな」

「直ぐにそこまでなれ、なんて誰も言わないよ。私達だって弱かった時もあるからね。 ただ母さんがああなった原因は父さんにもあるんでしょ?」

「…おう。全くそのとおりだ。すまん…」

「取り敢えず、自信を持って戦えるようになるまでは魔道具は外さないで。わかった?」

「わかったわかった。 まったく…どっちが親かわからんな」

「…心配だから言ってるだけだよ」

「おっ?アスカがデレたか?」

「バカな事言ってると殴るよ?」

「冗談だって…うちの娘は魔獣よりおっかねぇな」

失礼な…。心配してるのに、茶化す方が悪いよ。 (うんうん!)



落ち込んでる母さんは父さん共々、お祖母ちゃんに捕まって再び森へ連れて行かれた。

大丈夫なの?アレ…。お祖父ちゃんが止めても今回はお祖母ちゃんも折れなかったし。




ちょっと不機嫌なユウキからみんなで詳細を聞く。


「ユウキ君、トラウマ抱えてるお義母さんに言い過ぎだよ…」

「そうかしら。戦いの場面で取り乱してたら即、命に関わるわよ?」

「うちはお兄様がちょっと言い過ぎたと思う…。失う怖さは簡単には消せないの」

家族の中で意見が割れてるな。私はどちらも間違ってはいないと思うけど、難しいね。

 

「なんで僕が悪者みたいになるのさ…」

「そうは言ってないよ。ただ言い方の問題だと思う」

「でも未亜、危険地帯の真っ只中だと仕方ないと思うわ」

「それはうちもわかるけど…お母様の気持ちも考えてあげてほしいの」

ティーと、現場にいたレウィは私の隣にいて口を出すつもりはないらしい。

私もなんて言えばいいかわからなくて。 姉として情けないな…。


「みんなそこまでよ。 ユウキ君やルナリアちゃんの言ってることも間違ってないし、未亜ちゃんとシエルちゃんも間違ってないのよ。私も戦いに身をおいていたし、失う怖さも体験してるからね」

見かねた王妃様が助け舟を出してくれた。


「みんなはそれぞれ相手の立場になって考えてみるといいわ。ユウキ君とルナリアちゃんは、もしアスカちゃんを失うかもしれない、ってなった時に冷静でいられる? 現にルナリアちゃんは一度体験してるわよね?」

「…っ! あんな思い二度とゴメンだわ…冷静でなんていられるものですか!」

「ルナリア、どういう事?姉ちゃんに何があったのさ?」

あ…ユウキには詳しく話してなかった。 ヤバっ…。



逃げようとしたけどユウキに捕まり詳細を吐かされた…。

めちゃくちゃキレるやん…。 (仕方ないと思う…)



「…まぁ、あっちはおいといて。 未亜ちゃんとシエルちゃんは戦わないからわかりにくいかもしれないわね」

王妃様ひどい…。助けてほしいのだけど。

「おい、姉ちゃん。聞いてるのかよ?」

「ひぅ…」


「…戦ってる時って一瞬の判断ミスで取り返しがつかない事が起こるのよ。 そうねぇ…例えばだけど。 二人は、お料理ってするわよね?」

「はい。今、お姉ちゃんとお義母さんから習ってます」 

「うちもお手伝い程度なら…」

「お料理の最中に失敗して、お鍋が燃え上がっちゃた時にアタフタして対処が遅れたら危ないって思わない?」

「はい、火事になってしまいます」

「そしたら火傷とか…大変なの」

「でも、その時に冷静に判断できたらどうかしら?」

「ちゃんと火を消して、換気したり対処ができます。 ユウキ君が怒ってたのはその対処が遅れて大変なことにならないように…?」

「それなら怪我したりもしないの…」

「そうね。確かに言い方はキツかったのかもしれないけど、緊急時には仕方ない時もあるわ。燃えてるのにアタフタしてる人へ、のんびり注意してたらダメよね?」

「はい…」

「早く伝えるか、消し止めないといけないの」

「そうよ。ユウキ君は火を消した上でアタフタして対応できなかったお母様を叱ったのよ。同じ事を繰り返さないようにね」

「…よくわかりました。ありがとうございます」

「ありがとうございますの…」

「いいのよ〜二人ともユウキ君と話しておいで。 ついでに助けてあげて」

「わかりました」

「お姉様がピンチなの…」



「なんでそんな無茶するのさ! 一度にやらずに時間を置けばよかった事だよね?」

「…うん。 でも私魔王だし。大丈夫だから…」

「そういう問題じゃないって何度言ったらわかるんだよ! 心配する人が沢山いるんだっていい加減…」

「ユウキ君、さっきはごめんね、大変だったのに…」

「いや、それはもういいけどさ。 未亜姉ちゃんも言ってやってよ!」

「もう散々言ったよ…だから許してあげて?」

「お姉様は私達エルフを助けてくれたから…」

「…まったく。姉ちゃんはこれだけ想ってくれる人がいる事を自覚するべきだよ」

それは自覚してるよ勿論…。それでもやらなきゃいけない時はあると思うんだ。 (ママ…?)

わかってる。もうあんな心配かけるような事はしないよ…。 (うんっ!)



ユウキのお説教から開放されて、ドラツーで就寝の準備をする。

お祖父ちゃんはお祖母ちゃんの部屋へ案内しておいた。設備とか諸々の説明はユウキがしてくれるって言うから任せた。 あの姿のお祖父ちゃんに、よく違和感なく接するなぁと感心するよ。

私はまだ慣れない…。



お祖母ちゃんに連れ去られた母さん達だけど…結局そのまま三人とも帰ってこなかった。


探索で少し森の中を見てたんだけど、お祖母ちゃんが大量の魔獣を追い立てて二人に戦わせてた。

なんてスパルタ…。 ちゃんと渡した魔道具をつけてるなら怪我をすることはないけど…。

精神的にはボロボロだろうなぁ。


帰ったらゆっくり休めるようにしてあげないと。









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