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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第三章

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閑話 妻か母親か



ナツハSide



お母さんにポンコツ扱いされ、アスカの力を目の当たりにしてから夕夜がおかしい…。

時々、私が話しかけても上の空で考え込んでる。

部屋にいても筋トレしたり、私が預かってる剣まで出してほしいって…それで素振りをしてる。


何を考えてるのかはわかる。長い付き合いだし…だけど、無茶はしないでほしいよ。

もうあんな思いをするのはイヤ! 絶対に。 だから私が守る、何があってもこの命をかけても。

ドラゴンハーフの私ならそれができるから。



そんな時、ユウキが顔を見せない夕夜を気にして様子を見に行った。

嫌な予感がする…。

部屋から出てきた二人はアスカが召喚獣を見せてくれた広い場所へ向かうみたい。

止めなきゃ! 慌てて二人を追いかける。


「二人とも何をするつもり!?」

「……」

「父さんに頼まれて練習相手だよ」

夕夜は答えてもくれない。そんな焦らなくていいのに! ゆっくり力をつければいい。

私と契約をしている夕夜も寿命なんてないに等しいのだから…。



アスカは発着場って言ってたっけ…そこで二人は向かい合う。

お願いだから無茶はしないでね?

そんな私の願いも虚しく夕夜は全力でユウキへ攻撃を放つ。

「貴方!! ユウキ大丈…え?」

夕夜は確かに全力だった、それをユウキは片手で構えた剣であっさり受け止める。

「うそ…」


その後も攻撃を続ける夕夜だけど…ユウキに完全にあしらわれてる。

そんな…ここまで力の差があるの!? 夕夜は魔王を倒してきた勇者なんだよ?

ユウキが軽く振った剣を受け止めたけど吹き飛ぶ夕夜。

「ユウキ! もう止めて!」

「…ナツハ、止めるな。俺が頼んだ…事だっ はぁ…うっ…」

「でも!」

「…手応えなさ過ぎ。もう息上がってるの? スタミナもなさ過ぎでしょ」

「だから、鍛えて欲しいって…頼んだんだろうが!」

「はぁ…加減するのも大変なんだからさ。そんなんじゃ姉ちゃんには到底及ばないよ?」

そんな…なんで親子の二人がこんなことを…。

誰か二人を止めて! 


そんな私の願いが届いたのか、いつの間にか来ていたアスカが、夕夜へ睡眠魔法をかけてくれた。

よかった…。 もう無茶ばかりして!

夕夜を抱き起こしてる私にアスカがとんでもない事を言ってきた。


「母さん、私と戦って」

「え? なんで…アスカ本気なの?」 

この娘は何を言ってるの?


「いいから。 なにしてもいいよ」

「…舐めないでもらえる?いくらアスカでもドラゴンハーフの私を相手に…」

「そう思うのなら試してみたら? 母さんが良かれと思って父さんにしてきた事が本当に正しいかわかるよ」

アスカが強いのも魔力が高いのもわかってる。だけど…ドラゴンハーフの私を舐め過ぎだよ。

それに娘と戦えるわけないじゃない。



「早くして。それともそのまま父さんを巻き込んでもいいの?」

今、アスカはなんて言った?夕夜を巻き込む? させないよ! そんな事!

「…元魔王だからって調子に乗らないで! 私だって魔王は倒してきた。夕夜を巻き込む?それだけはさせないよ!」

夕夜のあんな姿は二度と見たくない。それだけは絶対に…絶対にさせない!


「早くしてよ。待ってあげてるんだけど?」

「アスカ! いい加減に…しなさいよ!」


ドラゴンの力を開放してアスカに殴りかかる。

怪我するだろうけど、言い出したのはアスカだからね!


殴ったつもりが視界が一回転して飛ばされる。 今、投げられた? 

「ちっ」

加減しすぎたかな。なら今度は加減なんかしな…

「ぐっ…つぅ…舐めるなー!」

何が起こった?避けられたかと思ったのに私がダメージをうけた。どういう事?

もういい、ほんとに加減なんてしない。知らないからね!


拳を振り上げるけど…

「…えっ?」

殴りかかった場所にアスカはいなくて背後から蹴られる。

「うぐっ…いったいな!」

やっぱり蹴られてもこれくらい? それなら耐えられる。

ドラゴンハーフの頑丈さを舐めないでよ。


「直線的過ぎて読みやすいんだよ。それでよく父さんを守ってこれたね?」

「うるさいっ!」

なんでこの子はそんな事を言うの?やっぱりまだ私達の事、怒ってる?

それなら乗ってあげるよ! でもこれっきりにしてね…。


フェイントをかけてアスカの死角から殴りつける。

「うがぁっ! あっつぅ…。 っ! そんな…翼が…」

殴ったはずなのに手応えはなく、よろけた所をアスカに翼を焼かれた…。 そんな、そこまでするの?

「もう飛べないよ?どうする?」

「っ…」

そう…わかったよ。ならこれをくらってもその生意気な口をきける?

虎の子のブレス。本気で何度も撃てば大陸すら沈められるのは実証済み。

それを対魔王用出力でアスカへ放つ。

お母さんがいるから大丈夫。どんな怪我をしても治してくれ…は?


私の放ったブレスは片手で払うように弾かれて上空へ。

魔王でさえ倒せるほどのダメージを与えられるブレスだよ?

「そんな…嘘でしょ?」

「もう終わり? ならこっちから行くよ!」

そう言ったアスカが視界から消えたと思った途端、もの凄い衝撃を身体に感じて吹き飛ばされた。

もう何が起こってるのかわからない。 見えない壁に背中から叩きつけられてようやく止まる。

体中が痛い…。 私ドラゴンハーフなんだよ? それなのに、無茶苦茶痛い…。

「うぅ…くっ…なにこれ…」

「母さんがドラゴンハーフで強いっていってもこの程度なんだよ。私とユウキはね、お互い信じて支え合って戦ってきたんだよ。この意味わかる?」

アスカは何を言いたいの…?


「助けるだけ…? そんな事してたら私達は生き残れなかったんだよ! 母さん達だってギリギリだったんじゃないの?」

「っ…」

確かに危ない事もあった…それでも私なら守れる。いや、守ってみせるんだから。


「母さんは守って来たつもりかも知れないけど、結果的に父さんは成長出来ずに今、追い込まれてる。原因は母さんなんだよ?」

「違う! ちゃんと夕夜も戦ってたよ!」

確実に倒せる相手だけを任せて戦って、少しずつだけど成長してるはず…。


「…母さん自身もそんなに成長してないでしょ?」

「……そんな事ないっ」

私は…ドラゴンハーフだもの。初めから強いんだから。


「そう。 ならもう言うことは無いね。 知ってる?私は魔法特化なんだよ?」

そう言ったアスカの周りに意味のわからない数の氷の槍が浮かび上がる。 な…に、これ…

こんなのくらったら私でも無理だよ? アスカは信じられないくらい冷たい目で私を見てる。

本気だ…この子!

「そん…な… 嫌…止めて! ユウキ、アスカを止めて!」

「………」

私が頼んでもユウキはこちらを見ようともしない。 そんな…私ここで娘に倒されちゃうの?


「嘘…でしょ?私は母親だよ?」

「…だからだよ」

そう言ってアスカは更に魔法へ雷も纏わせて、直後…凄まじい威圧感と恐怖に震えて、もう逃げることもできない。

「あ…ぁ…」




私の記憶はそこまで。気がついた時にはアスカが用意してくれた部屋のベッドに寝かされてた。

夕夜は!?

よかった…隣に寝てる。怪我もないし、無事だったんだ…。 

でも私、生きてる?怪我もないし痛かった身体も何ともない。 どうして…あの魔法をくらったんじゃ?

「ナツハ、ようやくお目覚め?手加減された娘に気圧されて気を失ってた気分はどうかしら?」

「お母さん…。  ん?ちょっと待って! 手加減された?あれで?」

「ええ、アスカちゃんは私と同等かそれ以上なのよ?本気だったらあんなものじゃ済まないわ」

私はそもそもお母さんの本気を知らないよ…。


それからお母さんに説明をされてようやくアスカの意図を理解する。治癒もアスカがしてくれたらしい。

それじゃあ…あの子はそれを私に知らせるためにわざわざ憎まれ役を買って出たの?

それなのに…私は…理解しようともせずあの子へブレスを使った…。

ホコリを払うかのように、あしらわれて終わったけども…。

何してるんだろ私は…。


「私ならあんな生易しくなかったわよ?ナツハを動けなくなる程度に叩きのめした後、見てる事しかできないナツハの目の前でそのポンコツをボロボロにしていたでしょうね」

「っ…」

私では敵わない、そんな相手に出会ったら間違いなくそうなる。

今回がまさにそうだった。アスカは夕夜には一切、手出しをしないでくれたけど…。

これが本当の実戦で、私が気絶したら?倒れたら? 夕夜は確実に……死ぬ。 そして当然私も。

「わかったでしょ?ナツハが守りたいのはわかるわ。でも本人も強くならなきゃ最悪の事態は起こりうるのよ」

「…うん。よくわかったよ。アスカの言葉の意味も…。 信じて支え合う、か…」

「あの二人は貴女達よりよほど大人よ?強さだけじゃなく考え方もね」

なにも言い返せない…。私は夕夜を失いたくない一心で守ろうとして…結果、夕夜を弱くしてしまった。

ユウキと戦う姿を見てわかった。想像以上に夕夜は…。


アスカとユウキは信じ合い、支え合ってたきたからこそ二人とも強く成長してる。…自慢の子供達だよ。 

ねぇ、夕夜。 私達が傍にいなくてもあの子達は立派に成長してくれたよ。

親として何もできなかった事が寂しいし悔しいけど、嬉しくもある。 ただ…完全に親の立場がないなぁ。

実力主義の世界では当たり前に起こることだけど、実際に体感するとへこむ。

「まだ理解できないようなら私が相手するわよ?」

「やめてよ、お母さん…。ただでさえ娘にボロ負けして落ち込んでるとこへ止めを刺さないで」

「ふふっ、冗談よ。 今はいい顔してるわよ、ナツハ」

「そう?それならアスカとユウキに感謝しなきゃね」

「ええ。私がやらなきゃいけない事をナツハに恨まれるのを覚悟でしてくれたんだから。 子供達に愛されてるわね?」

「うん! 自慢の子供達だよ!」






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