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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第三章

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秘密の多い人



翌朝。


それぞれ部屋を借りた母さん達は、出発前に私の部屋へ集合する事になっている。


私の部屋には未亜、リア、ティーにシエル、床にレウィと既にかなり集合してるけどね。

みんな別の部屋へ行くの嫌がるから…。

おかげで狭くなったベッドで転がってきたリアに乗っかられて、少し早く目が覚めた私は窓を開けて外を眺めてた。

こっちはもう冬らしいのだけど、寒くもなくて心地良い。

麦の刈り取られた穀倉地帯には何もなくて…それを見てやっと冬を実感する。 


ん? 廊下にこちらへ向かってきてるアリアさんの魔力を感じる。

まだちょっと早いはずだけど、どうかしたのかな?

みんなを起こしたくないから私から廊下へ出る。



「アスカ様、おはようございます」

「おはようございます、何か用事でしたか?」

「はい、王妃様からの言伝が…」

「…なにか言いにくいことですか?」

「少し話があるので、今から時間を頂けないかとの事で…」

「まだ皆寝てますし、私だけなら大丈夫です」

「ありがとうございます。では、ご案内いたします」


アリアさんに案内されて到着したのは…謁見の間!?

え?ちょ…なに?アリアさんは扉開けちゃうし。


謁見の間には当然、陛下と王妃様。

それはそうだよね?ここ謁見の間だし…。


「朝早くからすまないな…アスカ殿に折り入って頼みがある」

改まって陛下がお願い事って…余程の事?

「セルフィを、里帰りさせてやってはもらえないか?」

「え?」

「陛下…その為にこんな事を?」

「これくらいせねば、お前は断わるだろう…」

「それは…」

えっとどういう事だろう?


「ごめんなさいね、アスカちゃん。朝早くから」

「それは大丈夫ですけど、状況がわからなくて…」

その後、陛下から詳しい話を聞かせてもらった。


家出同然で国を出てきている王妃様は、距離が遠いのもあって一度も帰郷していないと。

船で帰るのは時間もかかるし危険も大きい。 でも私のドラツーなら危険はまずない。


それで今回、私達がお祖母ちゃんの住む場所へ向かう時に王妃様を一時帰郷させてほしいって事らしい。

王妃様も、陛下が私へ何の話をするのか聞いていなかったから完全な不意打ちらしく、戸惑っている。


「本来ならば夫としてワシも挨拶に行かねばならぬが、立場上そうもゆかぬのでな…」

国王陛下が国を空けるのは問題だものね。 しかも行く先は国交もない国だし。

「でも陛下…私は…」

「家族に会ってくるがよい、随分時間が経ってはしまったが…セルフィも会いたいのではないのか?」

「………」

俯いて返事をしない王妃様が何を考えてるのか私にはわからない。

ただ…私は、長く会っていない家族の再会なら力を貸したいって思う。

お祖母ちゃんとアキナさんも再会できるかもしれないし…。



「陛下のお気持ちは嬉しいのですが…私は帰りません」

「…何故だ?」

「私は、故郷を捨てました。そしてこの国へすべてを捧げる覚悟で嫁ぎました」

「……」

「その私が、捨てた故郷へどのような顔をして帰れますか?この国への私の覚悟はどうなりましょう?」

「…セルフィよ。 いや…今は敢えてこう呼ぼうか、アキセルナ。 その気持ちは大変嬉しく思う。 だがな、お前も一人の人だ。わしの大切な妻であり、子供達の母親であるように、娘で姉で妹ではないのか?」

「…はい。 ですが、それでも私は…」

私は二人の会話をただ聞いている事しかできなくて…。

王妃様の名前って偽名だったのね。 


「では、こうしようか…公務として、女王陛下への手紙を届けてもらいたい」

「…陛下、私の覚悟はお邪魔なのでしょうか?」

「いや、その覚悟があるからこそ、信じてこの手紙を託すのだ。国の今後を左右しかねないからな?」

「わかりました。ありがとうございます陛下…」

陛下へ抱きつく王妃様を見ている訳にもいかなくて慌てて背を向ける。

あの二人、絶対私がいるの忘れてる! 


めっちゃ気まずい…。 (あれー?ママがいないの…)

ティー、おはよ。 王妃様からお話があるって呼ばれてるよ。 (おはよー。りょーかいなのー)

みんなが起きたら伝えてもらえる? (うん、任せてー)

ありがと。



「おっと…すまないな、アスカ殿」

「あっ…ごめんなさいね、こっち向いて大丈夫よ」

終わったみたいね。


「そういう訳だから、またよろしくお願いね。アスカちゃん」

「わかりました。うちの家族へはなんて説明しましょう?」

「そのまま伝えてもらって構わん。セイナ殿や英雄殿達に嘘をつく訳にはいかぬからな」

そういう事なら…。


後、すっごい気になった王妃様とミルフィさんとの関係は、姉妹ではないけど一応親戚なんだとか…。

そもそもアクシリアス王国へ来るときに乗った商船が親戚の船で、そのツテで昔にこちらに移住していたミルフィさんの家族にお世話になったのだとか。

王族へ嫁ぐってなった時に、正式にミルフィさんの家の養子として身元を保証したりとか色々あったらしい。

王妃様の知る限りアクシリアス王国にいる親戚はミルフィさんの実家だけとの事。


女王アキナ叔母さんから何代も続く家系は遠く離れたこの国にも根付いてるんだね。

王妃様曰く、他の国にも親戚はいるらしい。

と言うことは、私達にとっても遠い親戚? まぁ遠すぎてもう他人と変わらないんだろうけど。


「アスカちゃん、私の本当の名前は内緒にしておいてね?」

「はい、女王様の名前が入ってますもんね…」

「ええ…。こちらでは知ってる人はまず居ないとは思うけど。念の為ね」

「わかりました」


「急な頼み事であったが、快諾してもらって感謝する」

そう陛下が締めくくり、謁見は終わった。



部屋へ戻る廊下をアリアさんと歩く。

朝から情報量が多すぎて…。どっと疲れた。 (ママお疲れ様ー)

うん、早くティーをぎゅってしたいよ…。 (捕まえてごらんなさ〜い?)

またどこで覚えてきたのよ。 本気出すよ? (それだと一瞬なの!)

そうだね。 (ズルい…)

イヤならしないけど… (やじゃないのー)


部屋の扉を開ける前に飛び出してきたティーが抱きついてくれる。

ありがとティー。癒やされるよ〜。 (ティーもー♪) 







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