祖母
落ち着いたお姉さんみたいなお祖母ちゃんが王妃様に自己紹介をしてる。
「突然ごめんなさいね、久しぶりだったからつい…。この子の母親、セイントドラゴンのセイナと申します」
「ご丁寧に…この国の王妃、セルフィと申します。 すぐ部屋を手配致しますので…」
「それには及びません、すぐにお暇しますので」
「お母さん、そんな慌てなくても…紹介したい子達もいるから」
「それはわかるけど、あの人も待ってるのよ?何年待ったと…」
数百年だもんね…。
母さんの生まれ故郷へ帰るのに、お祖母ちゃんがドラゴンになってみんなを乗せてくと…。
てことは、ここでドラゴン化するのか…。うーん…。
私が悩んでたら、ここでドラゴンになるのはやめてって母さんが止めてくれた。
リアのお父さんによる襲撃事件の話を聞いてたのかな? (ティー達が話したの!)
ありがとね。またドラゴンが来たって騒ぎになるし。
取り敢えず、母さん達と、お祖母ちゃんは陛下に謁見するらしい。
どちらかと言うと王妃様が頼み込んで、渋るお祖母ちゃんを母さんが説得した感じだったけど。
謁見の準備をする間はここで待機する事に。王妃様も仕度の為に退室した。
なんだけどね、お祖母ちゃんからの圧がすごい…。
ユウキ達は平気そうって事は私だけ敵意を向けられてるの?
なんか気に触ることでもしたかな…。 (警戒されてる?)
うん…。ちょっとへこむ。
「ナツハ、この子達は?」
「あっ! 紹介しなきゃね」
順番にみんなを母さんが紹介してくれる。
「…アスカ…ね。 その魔力量はなに? 何者なの貴女。ハッキリ言いなさい」
「お母さん! 私の娘にそんな言い方…」
「ナツハは黙ってて。 答えなさい」
「…何を答えたら満足なんですか? 元勇者で現在進行形で魔王ですって言えば納得しますか?」
こんなに敵意を向けられると流石にイラってする。 (ママ…)
「魔王…ね。 正直に答えた事だけは褒めてあげる。 それで、何をする気? 世界征服? それとも世界の滅亡でもお望み?」
「お母さん! いい加減にして!」
「ナツハ、この子の力は危険だわ。わからないの?」
「お祖母ちゃんか何か知らないけどさ、姉ちゃんの事を知りもしないで勝手なこと言うの止めてくれないかな」
「ママはいい魔王なのー!」
「お姉ちゃんは…そんなひどいこと絶対しないです!」
「…そうよ。伝説のドラゴンって聞いてたのに…ガッカリだわ」
「お姉様は私達の森を救ってくれたの。なにも酷いことなんて…」
「主様に助けられた命、ここで使わずにいつ使うと…」
みんな…。
私を庇うようにみんなが前に立ってくれる。
ユウキやティーならわかるよね…貴方達じゃ絶対勝てないって。無茶しないでよ…。 (ここは譲れないところなの!)
だけど!!
「貴方達が私の事をどう言おうが気にしませんが…そこの魔王だけは別よ」
「お義母さん、ここはどうか…落ち着いて話を聞いていただけませんか?」
「…貴方もよ。 ナツハを連れて行ってそのままにして…私達がどれだけ待ったと」
「…それはすみません」
父さんも流石に母さんの母親には強く出れないよね。
「はぁ…もういいよ、みんな。帰りましょう。お母さんがこんなわからず屋だったなんて。アスカ、気にしなくていいわ。もう帰りましょう。私はもう二度とこっちへ来ないから」
「ナツハ! 待って。せっかく会えたのに…」
「知らないよ。私の大切な子供に敵意を向けるような人、母親じゃないよ」
お祖母ちゃんがものすごいショック受けて崩れ落ちたけどいいのかな…。
「母さん、いいよ。私だけ帰るから…ティーに言ってくれたら迎えに来るね…」
私はそう言って魔道具を起動。
「ママ!」
飛ぶ寸前に抱きついてきたティーの本体だけ巻き込んで地球へ帰ってきた。
もし、あのまま戦闘とかになったら…お世話になった国にも迷惑がかかるし、家族を守りながらなんて戦えない。 とてもじゃないけどそんな余裕はない。 となると原因の私がいなければいいよね…。
お祖母ちゃんに会うの楽しみにしてたのにな…。
父さんの方の祖父母は私が生まれる前にどちらも他界してるから、お祖母ちゃんって初めてだったのに…。
あんなに敵意を向けられて、あからさまに邪魔って態度をされるのはキツイよ…。
確かにステータス上は今も魔王だよ?でも悪いことなんてしたつもり無いのに。
「ママ…」
「ティー」
心配してくれるティーを抱きしめる。
耐えようと思えば思うほど頬を伝う涙は止まらなくて。
自室のベッドに突っ伏して泣いた。
存在そのものを否定された様に感じて悲しかった?
それとも家族のはずのお祖母ちゃんにあんな態度をされたから?
わからない…。わからないけど悲しくて…。
しばらくして落ち着いてからも、日曜の午前中だとはいえ何処かへ出かける気にもなれない。
ティーも帰ってきてからは大人しくなって話しかけてこなくなったし。
向こうで揉めてるのかな…。
「ママー 大変なのー助けて」
「え? どういう事?」




