閑話 未亜
両親が海外へ転勤になった。
帰れないと言うか完全に移住して帰る気が無いような口ぶりだった。
私には一切の相談もない。結果だけ突きつける。
そうだよね。普段から私と会うことも殆どないもん。
お母さんは定期的に電話をくれるし心配もしてくれてるみたいだけど…本心かはわからない。
心配する母親を信じられないほど私の両親への想いは稀薄だった。
そこへ突然海外に行くから一緒にいこう?そしたら一緒にいられる?
全部がどうでも良かった。一緒にいられると言われても嬉しさなんかない。戸惑いと拒否感だけ。
しかも電話でだよ?
「いかない」それだけ言って私は電話を切った。
それから何度もスマホは鳴ったけど私が出ることはなかった
おばあちゃんがいてくれた時は良かった。一緒にご飯も作ったし料理も教えてもらった
夕方に一緒に行ったお散歩
献立を一緒に考えながら行ったスーパー
そんなたくさんの一緒を経験したのはおばあちゃんだった
でもそんなおばあちゃんが亡くなった
初めて会う親戚の叔父さん達がお葬式をしてくれて
両親はこなかった
帰らなかった
中学に上がって友達と過ごす時間も増えておばあちゃんのいない寂しさが少し紛れるようになった。
部活も楽しかったし充実してたと思う。
でも家に帰ると独りぼっち
誰もいない家
ただいまって言っても何も返ってこない
学校や友達がいたからなんとかなってたんだと思う。
私の狭い、とっても狭い世界
自分で狭めてる自覚はあった
でもどうしたらいいかわからなかった
優しい友達だけが唯一の支えだった
そこにあの電話
受け入れられる訳がない
数日後電話に出ないから急遽帰って来たと言う両親
”心配した”
”なんとか予定をあけた”
感謝しろとでも?
「私のせい?」
”そうじゃない、一緒にーーーーーー大丈夫ーーーーー”
「いかない」
”ーーーーーーーー!ーーーーーーー!?”
全く心が揺れなかった訳ではないよ?
もし行ったら何かが変わるのかもしれないって期待も少しだけあった
ただ両親より友達のが大切
この人たちの言葉は私には響かない、聞こえない。
結局両親は諦めたのかすぐにまた出かけた
うん、だよね
わかってた
ただお母さんから一通だけメールが来た
私が電話に出ないからだよね
読まずにおこうかと思ったけど何故か読まなきゃいけない気がしてメールを開いた
そこには、無理に連れて行こうとしたことへの謝罪
私の事を親友に頼んだ事
そこの家には私と歳の近い兄弟がいる
そこの家族と同居する事になったと。私が。
学校も変わらない
そんな事が書いてあった。
また勝手に決めた
でも歳の近い兄弟。家族。
それにすごく惹かれた。
淡い期待。大きな不安。
そんなある放課後、友達と別れ 帰る独りの家…
その日は…そうじゃなかった。玄関に知らない女の人がいた。




