やまい
両親がみんなへ、私が前回聞いた話…、父さん達が私達と同じ召喚の被害者だって話をする。
そして母さんは偽装を解く。
「お姉ちゃんにそっくり…」
「確かに母さんのその姿を見ると、アスカ姉ちゃんが元々女の子だったって言われても納得するね」
そうなんだよね…。あまりにも似てるから。
「貴女…いえ。私が言うことじゃないわね」
「リア?」
「ううん、なんでもないわ」
「未亜ちゃん、貴女のお母さんも異世界の人なの」
「…え? 確か、外国人だって聞きましたが…」
「未亜ちゃんのお母さんも姿を偽装してたのよ」
「……」
「それと、未亜ちゃんに直接話すべきだと思って、アスカにも話してない事なのだけど…」
そう言って母さんが話したのは…
未亜のお母さんは異世界から地球に来てすぐに未亜を産んだ。
その後に体調が悪くなった。
所謂魔力不調。
異世界人との間に子供を産んだからなのか、単に病気なのかわからない。
ただ…渡りの力を使って異世界へ行くと落ち着くらしい。
そう母さんは未亜に話す。
だから帰りたかったのか…。単に故郷へ帰りたいっていう自分勝手な理由じゃなかったんだね。
「そう…ですか。 今はどうしてるんですか?」
「何度も異世界へ渡って、ようやく故郷へ繋がったの。だからそこへ帰ったよ」
「私を連れて行こうとしてたのって…」
「うん、異世界。 ミナの生まれ故郷ね」
「帰れたのなら無事なんですね?」
「連絡手段がないから断言はできないけど…異世界なら魔力があるし大丈夫のはずよ」
この魔力不調って…シエルのと同じじゃないのかな? (そんな気がするの)
だよね…。
「ねえ母さん。未亜のお母さんの不調ってさ、魔力が回復しなくなって身体を流れる魔力が不安定になるとかじゃなかった?」
「なんで知ってるの!? そうよ。魔力の枯渇は命に関わるから、長くこちらへ留まれなかったの。 魔力回復薬も使ったりしてなんとか引き伸ばしたりしてたのだけど…」
やっぱり…。
異世界へ行ってこちらへ戻るときには、大量に魔力回復薬を確保してきてたらしい。
「アスカ、どうしてそれを知ってるんだ?俺たちは話してないよな」
「シエルも同じだったから…」
「え?それじゃあここにいたら危険じゃない! 早く異世界へ返してあげないと! 行き来できるのよね?」
「対策済みだよ。 大切な家族だもん、ちゃんと守るよ」
「「え?」」
両親にも今朝みんなへ話したのと同じ事を説明。
「そんな…じゃあミナもアスカに頼めば何とかなってたの?」
「そうらしいな…俺たちが嘘をつき続けてたせいだ」
「……」
未亜…。 怒りたいのに、理由を聞いてしまったから怒れない。そんな顔をしてるね…。
取り敢えず抱きしめておく。 今、私にできるのはそれくらいしかないもの。
「っ…、っ…おね、えちゃん…」
「うん、泣いていいよ…」
「うぁぁぁ…ん…なんで…どうしてなの…お母さんとお父さんなんて…キライ。そう思えてたほうが…」
「…そうね。未亜は優しいね。理由知っちゃったら、責められない?」
「…うん…だって…っ仕方ないもん、魔力なくなったら…あの時のお姉ちゃんみたいに…」
「そうだねぇ。私は大丈夫だったけど、普通の人だと…」
「…うっ…ん。でも…話してほしかったよっ…うぁぁ…ぁん」
「そうだね、知らないのも辛いよね」
「っ…ぅぅっ…」
暫く泣いてる未亜を抱きしめていた。
私から離れて涙を拭く未亜。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「ん、落ち着いた?」
「うん! 大丈夫。私にはこんなに優しいお姉ちゃんがいるもん」
「そっか…」
いつか未亜も両親に会わせてあげたいね…。
一度くらい帰ってきてくれたりしないかな。 (そしたら会えるの)
まぁ望みは薄いかもね…命がけになる訳だし。 (うん…)
「母さん、僕も偽装されてるんだよね?」
「うん、ごめんなさい…こっちで目立たないようにって思って」
「気持ちはありがたいけどさ、正直頭にくるよ、勝手すぎる」
「ごめんなさい…」
「それ解くことはできる?」
「うん、私がかけたものだからね」
「解いて」
「いいの?」
「うん、本来の姿を知らないままなのも気持ち悪いから」
「わかったよ」
これは私も興味あるな。 女の子だったらどうしよう…? (ユウキちゃん)
やめて、想像しちゃうから。
母さんが魔法を使ったのは確かに感じたけど…。
あれ?変わってないじゃん! (つまんない…)
ほんとよ! どうなるか期待したのに…。
母さんも父さんも、あれ?って顔してるわ。
「姉ちゃん、どうなった? 怖いから鏡見たくない。先に教えて」
いや…これなんて言えば…。 あれ?でも… (中二病…)
やめてあげて!?
「ユウキ、見た目はほどんど変わってないから大丈夫。ただ…」
「ただ…?」
「左目だけ私と同じ紫色…」
「はぁぁ!?」
ユウキは洗面所へ走っていった。
どういう事?って母さんを見たらふいって目を背けられた。
「母さん、ふいっ じゃないんだよ。説明して」
「お腹にいる時に偽装をかけてたから、私達も初めて見たのよ…」
「一度くらい確認しなさいよ! そうしたら私の事もハッキリしてたかもしれないのに!」
「「……」」
この二人もしかしてちょっと抜けてるの!? (さすがママのママとパパ…)
おいこらティー。 (つい…)
ついじゃないわ! (ごめんなさいー)
まったく…。
「姉ちゃん、これかっこよくない?」
洗面所から戻ったユウキの第一声はそれだった。
「お、おぅ…ユウキが気に入ったのならいいんじゃない?」
「うん、ユウキ君かっこいいよ! うん!! 私はいいと思うよ!」
未亜ナイスフォロー! (でも焦ってる…)
「ユウキって患ってるのかしら?」
「リア! しー!」
慌ててリアの口を塞ぐ。
「む〜!」
なんでこの子はそんな事知ってるのよ。 (ティーとアニメ見てたから…)
なるほどね!
「お兄様。とっても素敵なの! かっこいい!」
「だよね! 魔眼とか使えそうだし。 姉ちゃんなんかそんな魔道具作ってよ」
「…わかったよ、考えておくから」 (重症なの…)
まぁ…リアルに中二だしユウキ。 (そういえばそうなの)
何年かして落ち着いた頃に悶絶するだけだよ。 (黒歴史!)
そうそう。 ただシエルが乗っかったのは想定外だよ。
母さん達はユウキが怒らなかったことでホッとしてるし…。
シエルと何やら盛り上がってるユウキはそっとしておこう。
私には理解できない会話をしてるからね…。 (眼帯作るみたいなの!)
…好きにして。 いっそもう、その眼帯にやまいも封印してくれないかな。




