ペット枠うまりました
フェンリルも小さくなってくれた事だし、一緒にドラツーへ戻った。
「主様、主様! これなんですか?」
「私の作ったドラゴン型の乗り物だよー」
「ドラツーって言うんだよ! ティーが案内するの」
「じゃあティーに任せるね? 私は朝食の仕度をしておくから」
「はーい」
二人はドラツーの中を駆けていった。
走るときは四足なのか…。
「アスカ姉ちゃん、おはよ」
「ユウキ、おはよー」
「あの子どーすんの? 窓から見てたけど、フェンリルでしょ?」
「うん。 …いつから見てたの?」
「姉ちゃんがフェンリル出した時にすっごい魔力感じて、びっくりして目が覚めたんだよ」
あぁ…ユウキもフェンリルの魔力は流石に驚いたのね。起こしちゃって申し訳ない。
リアは起きなかったのか。まぁ驚かせずに済んだのならいいや。
「ドラツーの窓を開けて見てたから経緯はわかるけど、会話まではわからないから教えてくれる?」
「うん、説明するつもりだったから」
ユウキに一通り説明をして、今は名前を考えてる最中なのも伝えた。
「名前かぁ…ふっといいのか浮かぶんじゃない?」
簡単に言ってくれるね…。
キッチンで昨日作っておいたクレープをだして、飲み物を準備してたら未亜も起きてきて手伝ってくれた。
そろそろリア達も起こさないとね。 (ティーが行ってくる!)
じゃあお願いしちゃおう。
「アスカ、おはよー」
「ティアねえ様、おはよー。長老様達は?」
「二日酔い。 自業自得だからほっといていいよ」
そうもいかないでしょう…今日の午後にたぶん謁見だよね?
まだ時間はあるからもう少しゆっくりしててもらおう。
それで落ち着かないようなら私が治すしかないね。
シルフィ様と王子もユリネさんやルニアさん、セナさんとキッチンに来たから朝食を出した。
初めて見るクレープにシルフィ様が興奮してて。それを見た、ちょっと手伝ってくれた王子がマウントを取りにいったものだから…。
「我は昨日ちゃんと手伝いをしたであるからな! クレープの事も詳しいのである」
「…お手伝いは偉いと思いますが、たった一度で詳しくなるわけがないでしょう?」
確かに…包んでただけだしなぁ王子。
「何もしてない姉上よりは詳しいのである!」
「っ! 私は他にやることがあって…」
姉弟喧嘩に口は出さないほうが無難だよ。リア達ので学んだ。
「ママー案内終わったの。リアとシエルも起こしてきたよー」
「ありがとー。じゃあみんなも朝ごはんにしようね」
「わぁーい。ママのご飯!」
「みんなが手伝ってくれたものだよー」
それぞれが作ったものを渡してあげる。
「それよりアスカ…この子の説明をしてほしいのだけど?」
椅子に座って器用に両手でクレープを食べてるフェンリルをリアが指差す。
「ティーから聞いてないの?」
「ママに聞いてって教えてくれなかったのよ…」
「真っ白のもふもふ…お姉ちゃんこの子どうしたの?」
丁度みんないるから説明するにはいいね。
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「と言う訳で、この子があのフェンリルだよ」
「主様に仕えるフェンリル、名前はまだないよ!」
今考えてるから…。
みんな呆気にとられてるね。無理もないけど。
「アスカ殿、この状態なら我に譲ってくれても問題ないのでは?」
まぁそうなんだけどさ…。意志がしっかりしてるから、それを無視したくはないんだよね。
ちゃんと本人に決めさせてあげたい。
「フェンリルはどうしたい? 貴方の意思で決めていいよ」
「…えーこんな弱っちそうなのが主とか絶対ヤダ」
はっきり言っちゃったな?
王子はかなりダメージ受けてるし、シルフィ様はさっきの仕返しとばかりに笑ってるよ…。
「それに、恩人の貴女以外を、主って呼ぶつもりもないよ」
そっか…。となるとこの子も連れて帰るしかないなぁ。
四足で歩いてたら普通に真っ白な犬だし大丈夫よね?
「王子様、これだけ意志のしっかりしてる子に無理強いさせたらだめだって」
「ユウキ殿…。 仕方ないのであるな。会話のできるペットとか憧れたのであるが…」
ちょっと申し訳なくなるけど、諦めてもらうしかない。
「お姉ちゃん、それじゃあこの子も家族になるの?」
「そうなるね、みんなよろしくね」
シエルはちょっと複雑かもしれないけどね…確認したいこともあるから後で話をしないと。
名前かぁ。 白…雪…スノウ、なんかピンとこないんだよなぁ。 (ママが悩んでる)
だからネーミングセンスないって言ったのに…。
クレープを食べてるみんなを眺めながら頭を悩ます。
「お姉ちゃん、大丈夫?難しい顔してるけど…」
「え? あぁ…うん。ちょっと考え事してるだけだから」
顔に出てたか。 (ママは大体いつもそうなの)
くっ…。
「私で力になれることなら言ってね?」
「ありがとね、未亜。 でも大丈夫だから」
確かに知恵を借りたいけど…主って慕ってくれてる以上私がちゃんと考えないと。
「じゃあせめて後片付けはしておくよ」
「助かるよ、ありがとう。 あ、シエルは少し話があるから後で私の部屋に来てもらえる?」
「…わかったの」
悩みながら部屋に戻ってきて、作ってた花火の魔道具が目に止まる。
あっ…レウィとかどうだろう? (かわいい! でもゆらいはー?)
岩花火って花があってね。それの正式な名前がレウィシアって言うの。
花火みたいに見えるお花で白色もキレイなんだよ。 (おぉーママすごい)
早く本人にも伝えてあげないとね。 気に入ってくれるといいけど…。 (うんっ)
「お姉様、シエルです…」
「入っていいよー」
「…お邪魔します」
うん?なんでそんな緊張してるの…。 (ママから校舎裏への呼び出し…)
そんなつもりじゃないよ!? しかも呼んだの部屋だし!
「シエル、そんなに身構えなくていいよ。いくつか確認したいことがあっただけだから」
「うん、わかったの」
「シエルは王都で服のお店を出してみる気はないかな?って思ってね」
「お店!? そんな…うちなんかが…」
「シエルの服作りの腕は間違いないからね。そこは保証するよ」
「……ありがとう、お姉様」
「私達の世界へ付いて来たいのなら魔力循環をしない方法も用意したから、シエルが好きな方を選んでいいよ?」
「お姉様達と一緒にいたい! でも、服のお店も憧れるの…」
ふむ…。 それなら…
「じゃあシエル。こうしない? 取り敢えず私達についてきて、そこで色々な服とか見てみて、まずは知識を蓄える。その後でお店のことを本格的に考えてみるっていうのは?」
「うん、新しい服は見てみたいの。お姉様の生まれた世界は、本で見ただけでも斬新なのがいっぱいあるの。でも…」
「でも?」
「お店を開くようなお金はないの…」
「あぁ…その事なら大丈夫だよ。最初の資金や素材は出してあげるから」
「そんな…そこまでお世話になれないの」
「全部じゃないよ? その後はシエルがちゃんと自分でお店を運営しなきゃいけないんだから。大変だよ?私が出してあげるのは最初のお金だけ。もちろん協力はするけどね?家族なんだから」
「……ありがとう」
「色々な選択肢があるってわかってほしかったの。せっかく好きな事があるならって思ってね」
「今はお姉様達についていきたいの…」
「わかったよ。その後の事は、またゆっくり考えようね」
「うん」
「それと…フェンリルとは仲良くできそう?」
「あの子も私の被害者なの…だから出来ることはしたいから…」
「一緒にいることが辛かったりはしない?」
「え? 可愛かったの。フワフワだし…」
大丈夫そうかな?抵抗感とかないみたいなら良かった。
「じゃあ、あともう一つだけ。これはお願いなんだけど…フェンリルに服を作ってもらえるかな?」
「任せて! デザインはどうしよう?」
「うーん、そうだなぁ…やっぱりそこは本人とシエルに任せるよ」
私はセンスないし…。 (魔道具はすごいの)
魔道具”は”って…。 言われても仕方ないけどさ。




