噛みしめるもの
「こんな事もあろうかと… これならお料理しても大丈夫よね?」
着替えるためにドレッシングルームになってる部屋に来てリアに見せられたのは…。
なんでメイド服!?しかもスカート短い!
「着ないから! 魔法使ったりもするからそれは無理!」
「ちっ…」
舌打ちしたよこの子…。
「お姉様、ならこっち…」
シエルぅ…それなに?どこの魔法少女!?
いやたしかに魔法つかうんだけどね?
「シエル、それは絶対違うよ?」
「そうなの?可愛いけど…」
その後も二人が出してくるのはコスプレのような衣装ばかりで…。
「…二人とも私で遊んでない?」
「「…?」」
キョトンと首を傾げてるのは可愛いけど!! 真面目にこれなの!?
「取り敢えず時間ないからごめんね」
二人には申し訳ないけど着てるドレスをストレージへ仕舞って普段着に着替える。
あんなに衣装をいつの間に用意したのやら…。しかも特殊な衣装ばっかり。 (ママの渡した色々な本…)
漫画とかもあったものね。元は私の責任かっ! まったくもう…自分が恨めしい。
リアがまだゴネてたけど、早くハンバーグの仕込みをしないといけない。
急いでツリーハウスの外に出て、バーベキューの下準備をしてくれてる未亜と合流。
「待たせてごめんね…」
「お姉ちゃん、なんか疲れてる?」
「ちょっとね…」
魔力ドームで玉ねぎをみじん切りにしつつミンチの下準備。
必要なものが揃ったところで、味付けの分量を未亜に教えつつタネを混ぜる。
今回は炭焼だから細長く棒状に近い形に整えておく。
「あ…お料理のスキル上がった!」
「良かったねー。ならこのまま焼くのも任せようかな?」
「うん! 任せて」
数があるから私だけじゃ間に合わないからね。
「アスカ姉ちゃん、忙しいのにごめん。 アリアさん戻ったから打ち合わせいい?」
「そうだね、そっちもあったよ」
「お姉ちゃん、こっちは大丈夫だから任せて!」
未亜がそう言うならと、任せてユウキとアリアさんたちの元へ。
ツリーハウス近く、森のそばにちょっとしたテーブルとかがあってそこが打ち合わせ場所らしい。
「アスカ様、お忙しいところ申し訳ありません」
行ったり来たりしてるアリアさんこそ大変そうなんだけど…。
イルミネーションはバーベキュー開始と同時に点灯。
これは用意できるから大丈夫。
問題は花火の方だね。
打ち上げる場所は決めてあるらしく、既にルニアさん、セナさんと数人の騎士様が現場にいるらしい。
その辺も私達が到着してから、ユウキと王子がアリアさん達に話して手配してくれてたんだって。
花火を知ってるのユウキだけだからね。ご苦労さま。
バーベキューの終わりくらいから打ち上げを始めて欲しいと。
その時になったらアリアさんが迎えに来てくれるんだとか。
シルフィ様と王子が、陛下と王妃様を展望デッキ改め、ペントハウスにご案内。
打ち上げる時はユウキがファミリン通信で連絡くれるらしい。
元々はバーベキューしつつ王妃様に花火を見てもらう予定だったけど、私の突然の提案で予定変更。
急な予定変更になってしまった事を謝ったんだけど…。問題ないって。
「お客様の宿泊はどうしましょう?」
「護衛の騎士と、メイド数名を残し、街へお帰りになります」
「結構遅くなりませんか?」
「ええ、ですが国王陛下と王妃様が、なるべくお二人でゆっくり出来るようにとのご配慮かと…」
なるほど、せっかくの特別な日だものね。
「わかりました。私達も夜はドラツーに戻ります」
「はい、そうして頂けると…ただ、王女様と王子様はそちらへお邪魔するかと思います」
「わかりました、そのつもりで準備しておきます」
「はっ、お願い致します」
そうなると多分騎士様も数人くるよね…。
長老様もいるから多分ユリネさんとかも。
部屋を追加しないとだね。
乗り込んだ人数見てからでいっか。
どうせドラツーの中を掃除とかするつもりだし。
陛下と王妃様も丁度外に出てこられたみたいだしバーベキュー開始かな。
「姉ちゃん、イルミネーションいける?」
「いつでも!」
「ティー、お願いね。姉ちゃんと合わせて」
「任されたのー」
司会進行はまたティーがしてくれるのね。 (うん!)
バーベキュー会場はテーブルが並べられ明かりも灯されてて、すごくいい雰囲気。
メイドさんと未亜があちこちに作ったグリルにバラけて忙しそうにしてる。
「お集まりのみなさまー、まもなくバーベキューの開始となりますー! でも! その前にこちらをごらんくださいなのー」 (ママ!)
了解だよティー。
ツリーハウスのイルミネーションを点灯!
ゆっくりランダムに点滅させる。
「ツリーハウスイルミネーションなのー。それではバーベキューをお楽しみください。ママ特製のハンバーグもあるからお楽しみに!」
ふふっ、ティーが楽しみみたいね。 私も調理に戻らないと。
未亜の近くにあるグリルの1つが私の受け持ちらしい。
なんかちょっと屋台みたいよね…。 (これが屋台?)
うん、まぁ本物とは違うけど、そっちは今度一緒に行こうね。 (楽しみー)
ハンバーグや野菜、ストレージから出したおにぎりに、みりん醤油を塗りつつ焼いていく。
この醤油が焼ける香りは食欲そそられるよね。
トウモロコシ欲しかったなぁ…。
ティーとリアはお皿持って私の目の前で待機してるし。
シエルはまだ少し遠慮してるのか少し後ろにいるね。 (呼んでくる?)
そうだね、一緒に渡してあげたいし…。 (わかった!)
ありがとね。
ティーに手を引かれシエルもグリルの前に。
そろそろ焼けるから渡してあげないとね。
三人のお皿に同じように盛ってあげる。
「お姉様、ありがとう…」
「ん、せっかくだからシエルもちゃんと楽しんでね」
「…うん」
「シエルーあの場所がいいの! イルミネーションきれいに見えるー」
「ティー私も行くわ。ほらシエル行くわよ!」
ティーに先導され、リアに手を引かれていったね。
「アスカちゃん、私ももらえるかしら」
「王妃様、すみません。持っていかなきゃだったのに…」
「いいのよ。これがバーベキューの醍醐味なんでしょ?」
「そうですね。 お好きなもの盛りますから、選んでください」
「ええ。 じゃあ…、これとこれ…それと、このいい香りはどれ?」
「この焼きおにぎりだと思います」
「ならそれもお願い」
「わかりました」
バーベキューの事、周知させたのもユウキだろうなぁ…。
「それにしてもすごいわね…いつの間に準備してたの?」
「ナイショです」
「ふふっ。 ありがとう、アスカちゃん。こんな素敵な誕生日を迎えられて…私は幸せよ」
そう言ってツリーハウスを見上げてる王妃様は本当に幸せそうで。
このサプライズに協力させてもらえて良かったって思えた。
王妃様を迎えに来た陛下にもお礼を言ってもらって、勿論ハンバーグとかも盛って渡したよ。
イルミネーションが見える、一番いい場所にお二人のテーブルは設置してあるらしくそこへ向かったみたい。
「アスカ様! 私にも頂けますか?」
「シルフィ様、どれになさいますか?」
「えっと…どれも美味しそうで、悩んでしまいます」
「姉上、早くするのであるー」
王子も来たのね。いいけどさ。
見た目が以前より健康的になってきても口調は変わらないんだよなぁ…。
「アスカ様、叔父様は近づけさせませんからご安心くださいね?」
「ありがとうございます、本当に助かります」
…近くのグリルに未亜もいるし。
シルフィ様は王子と言い合いしながらお皿を抱えて戻っていった。
なんだろ、どこも姉弟ってあんな感じなのかな。
うちの弟、ユウキは未亜の所で貰ってるみたいだね。
未亜の方でも焼きおにぎり出来るように渡しておけばよかった。
まぁ欲しかったら取りに来るでしょ。
「ママーおかわりー!」
「はーい。今度はどれがいい?」
「んとね、これとこれ!」
「わかったよー」
ティアねえ様と、長老ドラゴン二人もあちこちのグリルをハシゴして、私のところにも来てくれた。
「このお肉美味しい! 他のところには無かったよ」
ハンバーグかな?
「そうだね、私と未亜の所だけだよ。数が作れなかったから…」
「特別感があっていいわね。 このいい香りのももらえるかしら」
三人にも焼きおにぎりを渡した。
今日はお酒もあるらしく山盛りになったお皿を両手に持って長老ドラゴンはそこへ向かった。
ティアねえ様は飲まないらしく、ついて行くというか…ストッパーだね、あれはきっと。
もう既にヤレヤレって顔してたもの。
陛下のご両親と王妃様のご両親は揃って来てくださった。
ハンバーグと焼きおにぎりは、はずせないって。 王妃様に聞いてきたみたい。
お城のパーティーとは違う雰囲気が楽しいって喜んでたからユウキに伝えてあげないとね。
そのユウキは焼きおにぎり取りに来ないけどいいのかな?
大好きだったはずだけど…。
ストレージに入れておくか。
ミルフィさんも王妃様からハンバーグと焼きおにぎりの事を聞いたみたいで取りに来た。
「前も作ってくれたけど、本当美味しいわね。 凄いのは魔法だけじゃないんだ…」
私も頑張ろう…とかブツブツ独り言を言いながら行っちゃったよ。 大丈夫かな?
「アスカ様、そろそろお願いします」
「わかりました」
アリアさんが迎えに来てくれたし、私はこれからもうひと仕事だね。




