パーティは気分も踊る
ホールが少し明るくなる。
陛下にエスコートされて…お二人は中央のケーキの元に。
陛下と王妃様が二人でナイフを持ち、私達が用意したケーキにナイフを入れる。
うん、これ結婚式だわ。テレビとかで見たもんこの光景。
お二人とも美形だからものすごく絵になるけど。
教えたの誰!?
え?カメラのフラッシュ?
ユウキか…いつの間に。 スマホで写真撮ってるよ。
きっと帰ったら印刷して、今度持ってくるんだろうね。
「お二人に拍手をー。 王妃様、お誕生日おめでとうございまーす!」
拍手の中ティーがこっちにかけて来る。天使だよね。
…てててて。
「ママ、お仕事かんりょーです」
「お疲れ様ティー。今日も完璧だったね!」
「ふふー。ママの子ですからー」
思わず抱きしめてしまったよ。
「あ、ティー?マイク貸してもらえる?」
「ママもなにかするの?」
「ううん、ちょっとね?」
このマイクみたいな魔道具、一応音楽もかかるけど放送用だからね。
スマホに入ってる音楽の中からクラッシックを流す。
「いい雰囲気じゃない?」
「さすママ!」
「もし、また放送する時は音楽止めてもいいし、ティーの好きにしていいよ?」
「はーい」
スマホとマイクを小さな魔力ドームで包んでティーに渡してあげる。
多分ティーに任せたほうが間違いないし、波長が同じだからティーがこのままドームの維持もできる。
このドームの中に入れておけばスマホの音だけ拾うようにしてあるから、会話とかは拾わない。
メイドさん達によって私達の作ったケーキが切り分けられて配られる。
私達も貰ったよ。 丁度、青色の魔石ゼリーのあるところだった。
これ、うちの家族のカラーに近いなぁ。
王妃様の周りには陛下と、王妃様のご両親がお祝いを伝えてるみたいだから…。
落ち着いたら私達もお祝いに行かないとね。
そういえば騎士様達が王妃様の傍に居ないね。
いや勿論、陛下付きの騎士様は数人はいるんだけど…アリアさん達がいないんだよね。
ユリネさんはメイドさんたちと忙しくしてるし、どこ行っちゃったんだろう?
心配になって周りを見渡していたら、後ろから声をかけられた。
「アスカ様、今よろしいですか?」
「はい、シルフィ様」
「嫌ですけど、ご紹介しておきたい方が…」
あ、そういえば一人知らない人が居たね。 それにしても嫌だけどって…。
「お母様の弟様で、セイン様です」
「セインです。 よろしくお願いします。 それにしてもお美しい…」
「アスカです、初めまして…」
誰かに面影が似てると思ったら王妃様かぁ。
髪と目の色が同じだし、整った顔立ちをしてる。
そういえば弟や妹がいるって言ってたね。
「あの…」
「はい?」
「ご婚約は…?」
この人いきなりなにを…
「してませんよ!?」
まだそんな歳じゃ…って異世界だと早いんだっけか。
婚約だけなら六歳とかでもしてたりするもんね。
「ならば…私と…」
「叔父様? 何をふざけた事を…」
「その呼び方はやめてほしいと言ったはず! 私はまだ二十代だ」
「叔父様は叔父様です。 アスカ様にちょっかい出すのだけは許せません」
「いや、なぜ許可がいる?」
なにこれー。魅了切ってるよね私…。
不安になるからやめてほしい。
それに私、婚約も結婚もするつもり無いよ?
「ママー?」
「ティー、どうかした?」
「王妃様にお祝い言いにいくのー」
「そうだね、行かなきゃ。 シルフィ様、セイン様。そういう訳ですので…」
「ええ、お母様も待ってますから。こっちは任せてください」
「いや待っ…答えを…」
知らない知らない…あの人には近づかない。
シルフィ様が嫌がってた理由はあれか。
リア達はもう王妃様の所に行ってるし、遅れちゃったよ。
未亜があのタイミングでいなかったのは救いだったね。 (また暴走?)
うん、さっきも危なかったのに。 アレ何とかしないとなぁ…。 (無理だと思うー)
いや、諦めちゃだめじゃないかな!? (だってー。ならママが未亜のものになるのー?)
なにそれ…。私は誰のものでもないよ! (ティーのママだよ?)
それはそうだよ。 (ふふん♪)
ケーキの近くで未亜達と談笑してる王妃様の元へ向かう。途中でユリネさんに飲み物を渡してもらった。
これお酒じゃないよね? …大丈夫か。 異世界って子供でもお酒飲むから不安になる。
「アスカ様、ドレスが大変お似合いで…眼福ですー」
久しぶりにユリネさんの鼻息がちょっと荒くなってた。
主役である王妃様の元へ到着。
「王妃様、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうなのー!」
「アスカちゃん、ティーちゃんもありがとう! 二人ともこの事知ってたのね?」
「はい、ユウキから連絡を貰っていたので」
「あんな素敵なケーキまで…。 本当にありがとう」
「いえ、みんなのおかげですから。ティーも頑張ってくれたもんね?」
「うんっ! 王妃様ー、魔王の話、ごめんなさいでした…」
「え? あぁ、もしかして鑑定した種族の話? ティーちゃん、気にしないでね」
「でも…」
「私はあの旅の思い出も、一緒に戦ったメンバーも大切な誇りなの。だから何も変わらないわ」
「相手は魔王を名乗ってましたものね」
「そうよ?あれは魔王! とっても悪いね。ティーちゃんの知ってる魔王とは違っただけよ」
「…わかったの!」
そう言ってティーを王妃様は撫ぜてくれてる。
ティーも気にしてたからね…。王妃様の優しい対応に感謝だよ。
なにかお返しにできたらいいのだけど…パーティーかぁ。 あ、それなら!
「王妃様はダンスってされますか?」
「え? ええ…嗜みだから一通りは…」
「わかりました。 でしたら陛下と踊られませんか?」
「それは…できたら嬉しいけど、そんなスペース…ってまさかアスカちゃん?」
「お任せください。 ティー」
「わかったのー!」
「みなさまーただいまより王妃様と国王陛下がダンスを披露されますー。ママがスペースを作るので、壁際に移動してくださいーお願いしますのー」
ありがとうティー。 (あいっ)
壁際に皆が寄るのを待って床に手を添えて魔力を流す。
流石にパーティーで聖剣を出すわけにも行かないからね?
空間拡張で、ダンスができるだけのスペースを確保する。
「それではー、国王陛下、王妃様、どうぞー!」
私は演出に専念しますかね。
真ん中に陛下と王妃様が移動、待機してるから…
ホール一杯に魔力ドームを広げて、お二人に可視化した魔力をスポットライトの様にし、追従するようにしておく。
ティーがいいタイミングでしっとりとした音楽流してくれたね。 (ばっちしー)
ダンスするお二人が楽しんでくれるといいなぁ…。
私も必要に迫られてダンスは覚えてるけど…あんなうまく踊れる気がしない。 (そろそろ音楽変わるの!)
ジャンルは? (少し明るい曲!)
わかったよ!
曲が変わるタイミングで演出を変える。
カラフルな明かりが舞うように…。曲のテンポに合わせてキラキラと。
お二人のダンスも激しくなったね。かっこいい!!
ユウキはずっとカメラマンに徹してるのがちょっと笑ってしまう。
写真を印刷したらアルバムにして渡さないとだね。
音楽がとまり、お二人が礼をしてるね。
「お二人に盛大な拍手をー。素敵なダンスをありがとうございましたなのー。
ダンススペースはこのまま残りますのでーみなさま、ご自由にダンスをどうぞー。
音楽のリクエストがありましたらティーまでお願いします!」
ふふっ、ありがとうティー。 (ママ、ティーと踊るの!)
え? いいけど…大丈夫? (うんっ)
背の差とかあるけど、まぁいっか。
ティーが明るい音楽を流してくれたから、手を繋いでホールの端っこへ。
他にも陛下のご両親とか、王妃様のご両親も踊ってるしね。
「じゃあティー、行くよ?」
「あいっ!」
ティーを振り回すみたいになっちゃうね? (あははっ! たっのしー!)
喜んでるからいっか…。




