お誕生日は盛大に
王妃様のお誕生日パーティー。
陛下のご両親に、王妃様のご両親。王宮魔術師のミルフィさん。
聖女様はいないけど…。 忙しかったのかな。
晩餐会のときのメンバー大集合だね。
一人知らない男の人がいるけど…誰だろ。
私はリアに呼ばれてホールに来てから、階段下のキッチンの隅っこで極力目立たないようにしてる。
リアはシエルの着替えの手伝いに戻っていったし…。
「お姉ちゃん、キレイ…」
未亜も着替え終わったんだね。というかよく私を見つけたね?隠れてたのに…
「未亜も今日は大人っぽいね?キレイだよ」
「ありがとう! 嬉しいよ…」
普段可愛い服が多いから新鮮だね。
薄いピンクのタイトなドレス、私もこれくらいの露出にしてほしかった…。
「アスカ、なんでそんな隅っこに隠れてるのよ?そろそろ主役の登場なんだからそんな所にいたらダメよ!」
戻って来たリアに引っ張られてホール中央にあるケーキがよく見える所へ連れ出されてしまう。
シエルもここに居たのね。
スレンダーな体型によく似合う白と薄いグリーンのドレス。
「シエルもドレスよく似合ってるね、可愛いよ」
「お姉様! ありがとう…うちこんなパーティーとか初めてで…」
森からあまり出られないからそうなっちゃうのかな?楽しんでくれるといいけど。
「ママー!」
「ティー!」
呼ばれて振り返ったら天使がいたよ…。可愛すぎる!
普段、ズボンだったり短パンだったりと動きやすい服を好んでるから…。
スカート姿は初めて見た。何着てても可愛いんだけどね? (♪)
私と同じ色のワンピース、背中には大きなリボンがついてて、動くたびに揺れてるの。
「あぁ…もぅ可愛いよ…」
「ふふっ、大成功ね! 私を見た時よりリアクションが大きいのは悔しいけど…」
「ティーちゃんは仕方ないよ。 お姉ちゃんが蕩けてる…」
ティーと手をつないでるとようやく落ち着いてきた。 (ふふーん♪)
ドレスには慣れないけど…。 (ママキレイなの!)
ありがとうティー。
「アスカー。…すっごいね、そのドレス。私ももう少し露出すればよかったなぁ」
「ティアねえ様! …なんで角出てるの?」
「オシャレじゃない?」
「確かに…キレイな角だし、ドレスにも合ってて素敵だけど、びっくりしたよ」
「ふふん、翼も出したかったんだけど、邪魔になるかなーって」
テーブルとかにぶつかりそうだもんね。でも、そういうオシャレもあるんだ。素敵かも…。
ティアねえ様と、長老様二人は魔力でドレスを作ってるらしい。
長老様二人はもうなんて言うか…大人の色気!! って感じ。さすがだよ…。
それぞれ髪に合わせた、赤と黒のドレスなのはイメージカラーなんだろうなぁ。
ティアねえ様も髪と同じ薄緑のドレスだし。
「姉ちゃん…なんて格好してるのさ」
「ユウキ…何も言わないで。 お願い」
「まぁ…どうせルナリアあたりが選んだんだろうけど。嫌なら断ればいいじゃん」
「できると思う?」
「姉ちゃんには無理だろうなぁ…」
わかってるなら言わないでほしいよ。
「ユウキはそのスーツどうしたの?カッコいいじゃない」
「あぁ…王子様が用意してくれたんだ」
へぇーあの王子がねぇ…。センスはいいんだ。
「うわっ…ユウキ君、凄いカッコいい! お姉ちゃんと並ぶと絵になるね」
そう未亜に言われて。ユウキと顔を見合わせて、何故かお互い距離を取る。
いや、なんか恥ずかしくてね?
「何を付き合いたてのカップルみたいな反応してるのよ! 姉弟でしょ?」
いや、そういうのじゃないんだって。慣れないから…。
「姉ちゃんとカップルとかやめてよ、冗談キツイよルナリア」
……なんだろうなぁ?そういう言い方されるとそれはそれでイラってするわ…。
「ユウキ…そんなに私がキライなんだ?」
「ちょ…いやそういう訳じゃなくて! それ反則だって! ホント誰だよ姉ちゃんに怖いこと教えたの…」
「お姉ちゃんと…ユウキ君が…カップル?」
リアが変なこと言うからまた未亜が暴走しそうだよ!
そうだ!
「ねえ、未亜。せっかくだし後で皆揃って写真撮ろうか?」
「写真…うん! そうだね。素敵な思い出になるよ!」
この姿が写真に残るのはアレだけど、今は未亜の暴走を止めないと。
それに…ティーの可愛い姿は写真に収めておきたい。 (写真はマネージャーを通してなの!)
誰だよ! ティーのマネージャー! (ママ?)
ならいいじゃない…。 (おっけーなの!)
びっくりしたわ。またどこで覚えてきたのやら…。
「ママ、ティーはちょっとお仕事があるから!」
「え? ちょっとティー?」
せっかく手をつないでたのに…それにお仕事ってなに?
「姉ちゃん、そんな落ち込まなくて大丈夫だから。頼んだの僕だし」
「そうなの?」
「ほら、ドラツーで船内放送してくれてさ?好評だったから今回も司会を頼んだんだよ」
「あぁーなるほどね。いいキャスティングだよユウキ!」
「はいはい、ティーの事になると姉ちゃんはバ…」
「なによ?」
「なんでもないから! 威圧はやめてね?あれマジでシャレにならないから」
まったく…。
ホールが薄暗くなり、みんな静かになる。
「それではー今日の主役のご登場でーす!」
ティーの声だけがホールに響く。
階段の明かりだけがついて、そこにドレス姿の王妃様が…。
「賢者として、この世界を脅かした魔王を倒し! 今もこの国をいろんな事で支えるー
唯一無二の王妃様! 麗しきセルフィ様に盛大な拍手をー」
ティー凄いな…。
拍手と共に王妃様は階段を降りてくる。
階段の下には陛下が待機してるのね。
「セルフィ、誕生日おめでとう。いつも苦労をかけてばかりだが…これからも傍にいて支えてくれ」
「…陛下。 はい…勿論です」
なんだか素敵だなぁ…。
あのお二人がいるからこの国は温かくて、平和なんだなって思える。
そんな素敵な光景だった。
「それでは! 国王陛下と王妃様による、ケーキ入刀です!」
え? いやそれ結婚式じゃん!!
まぁいっか…。




