魔道具の勉強会 移動教室 前編
食後、休憩を挟んで魔道具のお勉強会をするから、希望者はリビングへってティーに船内放送を頼んだ。
「ママによる魔道具講習会がリビングでひらかれますー。希望者はご参加くださいなの! おやつにはママの手づくりタルト…あれ?タータだっけ?が出るの!」
うん可愛い。ありがとうティー。 (はーい!)
おやつに釣られたのか…魔道具への興味かわからないけど、まさかの全員参加。
とはいっても騎士様たちとユリネさんはお仕事だと思うけどね。
魔刻刀追加しておいてよかったよ…。
念の為追加で十本作ったから元の手持ちと合わせたら、全員使う事になっても余る。
まぁ…未経験者にいきなり渡しても使えないと思うけどね。
「えっと…じゃあまず経験者と、初めて魔道具を作るって人とで分けましょうか」
「そうね、先生はアスカちゃんだし任せるわ」
先生ではないけど…。
結果、王妃様とノワルレイナさんだけが経験者。
あと全員が未経験者…全員?アリアさんやユリネさんも参加するとは…。
問題ないんだけど、びっくりしたよ。
「じゃあまず経験者のお二人に…王妃様、魔刻刀は?」
「勿論持ち歩いてるわ!」
「わかりました、ではノワルレイナさんにもこれを」
魔刻刀を手渡す。
「これは…?」
「私が魔道具を作るために作った専用の道具です。これに魔力を通しながら魔石に術式を刻みます」
「もうこれが、訳のわからない代物なのだけど…取り敢えずわかりました」
初めて見るとそうかもね。
「王妃様、今どれくらい使いこなせてますか?」
「そうね、ようやく魔力操作が安定してきて、拡大表示も出来るようになったわ」
「凄いですね、でしたら少し複雑な術式の見本をいくつか置いておきますので、試してみてください」
「ええ…頑張るわ」
「ノワルレイナさんには使い方の説明をしますね。 魔力操作はどれくらい出来ますか?」
「得意な方だとは思うけど…」
「でしたら、今王妃様が使われてるのを見て、それを真似する形でやってみてください。魔刻刀に魔力を流しながら魔石に術式を刻むだけなので。魔石と見本をいくつか出しておきます」
「いきなり!?」
「まず使ってみて頂けると…それからのが私も判断しやすいので」
「…わかりました」
王妃様はかなり魔力が細く、鋭く魔刻刀へ流れるようになってるし、安定もしてる。
短期間ですごいな…。
「王妃様、すごい上達ですね、以前より魔力が鋭くなって安定してます」
「ふふっ。でしょ?」
それを見てたノワルレイナさんも魔刻刀を使い始めたね。
ただ…魔力がかなり太い。それだと繊細な術式は刻めない。
「ノワルレイナさん、魔力を魔刻刀の先、その刃の鋭さのように細く流してみてください」
「…鋭く、細く? わかりました」
おお…さすが得意っていうだけのことはあるね。飲み込みが早い。
「いいですね。それを維持して術式を刻んでください。魔刻刀の使い方でなにか質問があったら呼んでください」
「…ええ」
初心者組の集まっている方に、前もって色々な形に整えた魔石を何種類も出しておく。
「じゃあ今度は、魔道具初心者チームですね。魔道具がどういう物かは?」
「便利なのー」
膝に乗ってきたティーが答えてくれる。
「そうだね。魔道具は便利だよー」
「私が知っているのは、魔法に類するものを道具にして、魔法の使えない者でも使えるようになる。とか、そういう事でしょうか?」
「アリアさん完璧な答えありがとうございます。 例えば…身体強化の魔道具なら、装着者が魔力を流せば身体強化がかかります」
「お姉ちゃん、それって火の魔法とかでも出来るの?」
「そうだね、人によって魔法の属性に向き不向きがあるから、火の魔法が使えない人でも魔道具なら使えるようになるよ」
「へぇ〜便利!」
「私達騎士は魔力の少ない者が多いのですが…それでも使えますか?」
「ええ。ルニアさん達騎士様って王妃様からマジックバッグを支給されていますよね?」
「はい。 それと同じ感覚ですか?」
「そうですね。 勿論、魔力の多いほうが、威力や使える回数に影響はでますが…」
「それだとやっぱりうまく使いこなすのは難しそうね〜」
「そのままだとそうなります。なので、私が魔道具につける定番が魔力の増幅とか、魔力を貯めておける魔力電池ですね」
「アスカ様、私の頂いたこの鍵の魔道具にもつけて下さいましたよね?」
「はい、もしもの時の保険ですね。普段から少しずつ魔力を貯めておくので、いざって時にそこから魔力を補充できます」
回復スピードは違えど誰でも魔力は自然回復する。 自分の魔力量の分母を超えた分が魔道具に溜っていくようになってる。
「私もつけてもらってるわ」
「うん、リアのも、ティーのにもシエルのにもついてるね」
「お揃いなのー」
「う、うちも!」
リアは最初魔力が漏れ出てたから余計にね…。
「シエル?いつ貰ったのよ!」
「えっと…うちの作った服のお礼にって…」
「私とティーに可愛い服作ってくれたからね」
「「可愛い服!?」」
未亜とリアが食いついたなぁ…。
「シエル。よかったら二人にも服つくってあげて?素材が必要なら渡すから」
「わかったの!」
「お姉ちゃん、私のに魔力貯めておく機能は?」
「未亜は魔法がまだ使えない時だったからね。付けてないけど、欲しかったらつけてあげられるよ?」
「お願い」
「わかったよー。じゃあ渡してもらえる?」
「うん。ありがとう」
まさかこんな直ぐ魔力に目覚めると思わなかったからね…。
異世界に来ることになるとも思わなかったから。 それでも魔法防壁はつけてある。まぁ保険だね。
「他に魔道具の事で聞きたい事とか疑問があれば…」
「あのー」
「フレアベルナさん。どうぞ」
「そもそも、この魔石の色の違いって何なのかしら?」
「色の違いは魔力の容量だと思ってくだい」
以前未亜にも教えた色の違い、容量の順を伝える。
「そんな違いが…それなら複雑な物や魔力消費が多い魔道具だと…」
「はい、それに合わせて魔石を選ばないといけませんね」
「アスカ様、そうすると魔石の大きさも影響しますか?」
「ユリネさん、正解です。ランクが上の物でも小さければ容量は減りますし、術式を刻む難易度が上がりますからね。ただ、どんなに大きくても色の違いまでは超えられません」
「そうなるとお値段も…」
「まぁそうですね…。透明の魔石でそれなりのサイズってなるとかなり高額で取引されますが…」
「使いこなせる人があまりいないんじゃないかしら?違う?」
「うん、リアの言うとおりだよ、使い勝手のいい色とサイズが一番需要はあるからね。人間界だと青くらいまでで十分かな」
「アスカ…じゃあ私が貰ったこれも高いものじゃないの?」
「私が集めた魔石だし、作ったのも私だから実質タダだよ?」
ティアねえ様が心配そうにしてるけど、過去に集めてきたものだからね。
「そういう問題じゃないよー! 良かったの?貰っちゃって…」
「勿論。それにそれはティアねえ様専用なんだから、ティアねえ様が使ってくれないと…」
「ありがとう、アスカー!」
そう言うとティアねえ様にまた抱きつかれた。
本当、ティアねえ様はスキンシップするの好きだよね。 (ティーもママとくっつくの好き!)
そうだね、安心するもんね。 (うんっ)
「アスカ様、私もありがとうございます。魔道具のおかげで母にも勝てましたし…」
「使いこなしたのはアリアさんの実力だと思いますよ?説明してなかったですからね」
「はいっ、ありがとうございます」
「じゃあ、次は実演してみようー。実際に私が魔道具作ってみるから見てくださいね」
「アスカちゃん、私もそっちに行っていいかしら?」
「王妃様?大丈夫ですよ」
「それなら私も…」
ノワルレイナさんもだね。
実演兼ねて、サプライズするつもりだけどね?