王国へ向けて出発
長老衆の準備も二日かからず終わったようで、ティアねえ様がドラツーへ案内してきた。
フレアベルナさんと、もう一人は真っ黒な髪に赤い瞳の一見すると怖そうな女の人。
「シャドウドラゴンのノワルレイナです…お世話になります」
見た目と違って丁寧で大人しいから、ちょっと拍子抜けしてしまった。
王妃様とはすでに顔見知りだからか普通に談笑してる。
でも私には怯えててへこむんだけど…。
「レイナは上位種でもあって、長老衆の中でも強さなら最強クラスなんですが…おとなしい性格で争い事とか好まないから、アスカさんの魔力にちょっと怯えてますね」
フレアベルナさんがそう教えてくれたけど、上位種なんだ…。
シャドウドラゴンは赤い瞳の色が上位種の特徴らしい。
通常は瞳も黒なんだとか。
ティアねえ様には前もって同乗する長老衆の為に用意した部屋の事とか伝えてあるから、
案内してくれるし任せてしまって問題ない。
リアはギリギリまでフィアと一緒にいたいって言うから、出発直前に私とティアねえ様で迎えに行った。
ルナシアさんに挨拶をしたかったし、フィアにも会いたかったからね。
フィアは寂しそうにはしてたけど、魔力の繋がりがあるからか、わがまま言ったりしなかった。
逆にルナシアさんがついて来るって言って、リアとまた揉めて…ティアねえ様が止めたりと…
最後までにぎやかだった。
ドラツーへの帰り道、フィアと離れたのが寂しいのか、リアが私にべったりになってしまった。
私からフィアの魔力を感じるのかな…?
リアがまたフィアに会う時に移動の手間を減らすため、転移リングを改造。
座標登録できる数をいくつか増やしたから、この里を座標登録しておいた。
王国からでも、自宅からでも飛べるから便利になったはず。
勿論ティアねえ様を通じて長老衆の許可はもらってる。
いつでも里へ来ていいって言ってくれたらしい。
挨拶したかったのだけど、忙しいみたいで時間が合わなかった。
怖くて拒否されたんじゃないよね…?
ドラツーに戻ってからも傍を離れないリアはやっぱりどこか寂しそうで…
「アスカ、またフィアに会いにつれてきてくれるかしら…?」
「勿論そのつもりだよ。ここへ直接飛べるようにしたから、いつでも来られるよ」
「ありがとう! アスカと離れたくないけど、フィアにも会いたかったから嬉しいわ」
あれだけ可愛がってたからね。気軽に来れるようにして正解だったよ。
ユリネさんと、アリアさん達騎士様は同乗する長老衆二人の世話もあるから忙しそう。
食事とかは用意するからって伝えておいたけどね。
やっと通常に戻ってくれた未亜も手伝ってくれるそうだし。 (暴走少女…)
たしかに最近多いよね。 ちょっと心配。
シエルも多少は料理ができるからって名乗りを上げてくれてたから期待してる。
ティーはドラツーの操作と、船内放送を担当してくれるよ。 (うん。任せて!)
ユウキにファミリン通信で、そろそろ帰る旨だけ伝えておいたし…。
後は…あ、フェンリル。どうしよう…。
ずっとストレージに入れたままも可哀想だしなぁ。
かと言ってあのサイズだし、どうしたものか…。
帰ったらもう一度王妃様、もしくはギルドマスターに相談してみようかな。
王国まではドラツーで数日。
ティーの船内放送が出発を知らせる。今の時間はお昼を少し過ぎたくらい。
「ドラツーへご搭乗ありがとうなのー。本船はまもなくアクシリアス王国へ向けて出発しまーす。のんびりお寛ぎくださいー」
ティーありがとね。 (ママも寛いでてー)
そうしたいけど、そろそろ夜ご飯の仕込みをしないとね? (ママのご飯!)
エルフの森で野菜や果物、狩りで取れた肉とか、凄いたくさん貰ったからこれでなにか作ろう。
私への献上品とかアリアさんが言ってたけど…深く気にしないことにする。
鶏肉っぽいのが多いから唐揚げでも作ろうかな。
「お姉ちゃん、手伝うよ」
「ありがとう未亜、唐揚げ作るから鶏肉を適度なサイズに切り分けてもらえる?」
「わかったよー」
「お姉様、うちは?」
「シエルはなにができるー?」
「焼く?煮る?」
あ…これダメやつじゃないかな?
「じゃあ…この野菜を一口サイズにちぎってもらえる?」
「わかった!」
レタスっぽい物やいくつか野菜を手渡したけど、これくらいなら大丈夫でしょう? (不安…)
だ、大丈夫だよ。たぶん…。
ティーとリアもお手伝いで、お皿を出してくれるらしい。 (任せてー!)
「アスカ、お皿ってどれがいいのかしら?」
「大皿何枚かと、小皿を人数分お願い」
家からストレージへ沢山食器類を持ってきてて良かったよ。
それをドラツーのキッチン収納へ収めてあるからね。
私は唐揚げの漬け込みタレを作った。
未亜が切ってくれた鶏肉をどんどん漬け込んでゆく。
人数増えたし、沢山いりそうだからね。
それを魔力ドームへ。
「お姉ちゃん、それは何をしてるの?」
「魔力ドーム? 熱をかけない圧力鍋みたいな物かな」
「味を染み込ませてるの?」
「そうそう。漬け込み時間の短縮だね」
シエルは…流石に大丈夫みたいね。
丁寧にちぎってくれてるよ。丁寧すぎてものすごい時間かけてるけど…。
揚げ終わるまでに出来てればいいからこのまま任せよう。
肉を漬け込んでる間に、沢山あるフルーツでタルトを作ることに。
前に作ってストレージに入れたままになってたクッキーを砕いて、ミルクと混ぜて簡易のタルト生地に。
未亜がフルーツのカットをしてくれてるから、私はカスタードを作る。
前に作ったプリンと似たような物だし、すぐ出来る。 (プリン!!)
ちょっと違うけどね?楽しみにしてて。 (あい!)
「ティー! お皿持って飛び跳ねたら危ないわよ!」
「ごめんなさい…つい」
本体まで喜んでたのね…。 (うっかり…)
気をつけてね。怪我とかしたらやだよ? (はーい)
タルトも何種類か出来たから冷やしてるし、漬け込みもそろそろ良いかな?
「お姉ちゃん、揚げるのやってもいい?」
「いいよー。なら、衣つけてくから、揚げるのは任せるね。ヤケドしないように気をつけて」
「わかった!」
未亜のおかげでカラッと揚がった物をどんどんストレージへ入れてゆく。
まだご飯には少し早いし。
エルフの里で貰った物の中に見慣れない穀類があったからシエルに聞いてみたら、
蒸したあとに、潰して練って焼く物らしい。それに色々挟んで食べる、主食みたいな物だって。
試しに作ってみたらピタとかトルティーヤみたいな感じ?
サラダと唐揚げを包んだら美味しいかもと思って作ってみたんだけど…。
手伝ってくれてた子達がみんな見てるから小さめに人数分作って渡してあげた。
みんな美味しいって喜んで食べてくれたよ。
大好評だから、多めに焼いておこう。
そろそろ夕食の時間だし、仕上げにかかりますか。