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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第二章
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決別



「やっぱり…アスカとユウキも異世界に呼ばれてたのね!?」

「なんでだ? 俺は傍にいなかったのに!」

「…たぶんだけど、その最初に呼ばれたのって、ここ。 この家でしょ?」


「……確かに。最初の時も、その後呼ばれた何回かはここだった!」

「その時に、父さんと同じように、この”場所”も異世界への窓口になったんじゃない?あとは遺伝とかも関係してそうだけど…」

「そんな…。 危ない目にあわなかった?何があったのか教えて?」


それから私やユウキが呼ばれたのを覚えてる限り話した。

呼ばれるのは必ず家にいる時なのも話した。

ユウキが一人で呼ばれた時の事は聞いた話でしかないけど、それも。

勿論、魔王になった話もしたよ。


「呼ばれてる回数が俺たちの比じゃないな…」

「うん、アスカはいい魔王だったんだね。えらいよーさすが私の娘…?」

「…それも話すね。 母さんの違和感は間違ってないよ」


私が一番最近の召喚で、魂レベルで性別が変わってしまった事。

地球には強制力が働いてて、元々女だったってことになってて、もう元には戻れない。それに関してはもう受け入れている事。

今はその世界へみんなで遊びに行ってた事。

それらを詳しく話した。


「…そんな、性別が…。 しかも異世界を自由に行き来してるの!?」

「性別…? いや、俺は男だった時の記憶がないんだが。これが強制力ってやつか?」

「そうだね、地球の人には強くかかるみたいだから」 


「ねぇ…貴方。一つ思い出したのだけど、アスカを身籠った時に、偽装魔法かけたのは覚えてる?」

「ああ…それは覚えてる。確か…上手くいってない気がするとかって何度もかけてたよな?」

「うん。その時に性別も偽装されてたって事はないかな?」

「は?いやしかし…。魔法をかけたのはお前だろう。俺は魔法には詳しくないからな」

「あの時、私みたいにならない様に、目立たないように! って…」


「……母さんどういう事?」

「もしかしたらだけど…アスカは元々女の子だったかも?って事」

「はぁ!? でも、男として育った記憶が私にはあるし、ユウキにも…」

「うん、もしかしたら?ってだけ。召喚の魔法陣で魂まで書き換えるなんて出来るのかな?って。 元々、アスカの魂は女の子で…私がかけた偽装の魔法で男の子になってた。その、偽装が解けただけって考えたほうがしっくりこない?」

「そうだったとしたら、私は母さんを恨めばいいのかな?」

「やめて!? もしかしたらってだけだから…」


確かに母さんの言ってる事はわかる。

魔法はイメージ…。母さんが”私みたいにならない様に”ってイメージしたものがそうなったとしたら?

しかも何度も重ねがけしたみたいだし。

今となっては、わからないけど…王子の魔法陣からも何もわからないと思う。

王妃様も、今までは魂レベルまで性別が変わるようなものは無かったって…。

はぁ…一応の可能性として王妃様には話してみよう。

ティーはどう思う? (ティーはあくまで強制力って力を貰っただけだから…)

そっか…。まあ今更だよね。 (ママはママなの!)

だね。ありがとうティー。 (うんっ)


「それとアスカ、魔王の時に魔力体だったっていうのは間違いないの?」

「うん。姿を変えたりもしてたし…それがどうかした?」

「…ううん。なんでもないよ」

「……」

まだ何か隠してるなぁこの二人…。



母さん達が、たまに家に帰って来てたタイミングって言うのは召喚から戻った後。

召喚から戻った後は次の召喚まで、ある程度は間が開くかららしい。

その安全なタイミングで会いに来ていたと。

当然、電話かけてきてた時はこっちにいる時だね。

何度も召喚されるうちに、前触れが早めにわかるようになってきたらしい。

前回もそれで電話だけして帰らなかったのか…。


あれ?でもそうなると未亜のお母さんは、未亜へどうやって連絡してたんだろ?

ちょくちょく電話かかってきてたって未亜は言ってた。

こっちに居て電話が出来るなら帰ってきてあげればいいのに…。


その疑問に関する答えは単純だった。

「渡りをして魔力が枯渇してると偽装が解けちゃうの。魔力が回復して偽装出来るまでは帰れないよ」

未亜のお母さんも偽装してるのか…。てことは…!

「未亜も偽装されてるの?」

「ううん。ミナは自分にしか偽装ができない。だから私がかけてあげる予定だったのだけど…」

「いろいろタイミング悪くてな。 後から会いに行ったときには、もう産まれてたんだ」

「未亜ちゃんに偽装かけるつもりで会いに行ったのだけど。 でも、こっちでも違和感の無い外見だったから」

だからそのままにしたってことか。


良かった…。未亜に話す時に困らなくてすむ。



後、私達と大きく違うのは、時間の戻り方。

私とユウキは普段、異世界にどれだけいても、こっちでは長くても一週間とかだった。

イレギュラーの三ヶ月以外は…。

父さんの召喚は向こうでの一月がこっちの一日くらいらしい。

年齢とか外見が戻るのは同じだったけど。


一ヶ月が一日とか…何処かで聞いたような時間経過よね。

行ってる世界はバラバラだから関係ないのかもしれないけど。


この家は今、召喚対策されてるのとかは黙っておいた。

ユウキはまた召喚されたいらしいし。

突然、両親が家にいる様になるのも…。私はまだ両親が許せない。


それに母さん達も召喚されることに目的がある様だしね。

言ってる事は理解できる。でも…、頭で理解できるのと気持ちはまた別だよ。



「私はこの話をユウキにするよ。今度会った時、覚悟しといた方がいいよ」

「ああ…。 しかしユウキはそんなに強いのか?」

「私、自分の驚異になり得る相手ってわかるんだけど…。父さんと母さんには何にも感じない。 信じられないなら攻撃してもいいよ? でも…戦いにもならない。それくらい差があるよ」

「アスカ! ひどいよ!?」


「…私は単に事実を話してるだけ。ユウキはそんな私が唯一背中を預けた相手。ドラゴンを剣一本で真っ二つにする。それがユウキ」

「…そうか。わかった」


「アスカ、怒ってる?」

「当然。 怒りで威圧抑えるのが大変なくらいに。父さんと母さんにも、未亜の両親にも…。

話そうと思わなかったの!?私はまだいいよ。 まだ小さかったユウキが…どんなに寂しがってたか!」


未亜なんて独りぼっちだったんだよね。

兄弟もいない。おばあちゃんも亡くなって…。

でもこれをうちの両親に言っても仕方がない。


「しかし、側にいたら召喚に巻き込んで…」

「それでも一緒にいれた方がよかったよ! 私達に話してもくれないし、選択の余地もくれない…」

「ごめんなさい…」

「謝ってほしくなんてない! 帰りたければ勝手に帰ればいいじゃない。私は一緒になんて行かないから」

「アスカ…」


「言い過ぎだぞ?母さんの気持ちも考えて…」

「気持ち?ならユウキや、私の気持ち考えたことある?ずっと両親がいなくて、お隣のお世話になって。ある程度大きくなったら二人でなんとかしてきたんだよ。召喚で身についたスキルも使って、料理や家事もしてきたよ?  ねえ?母さんが私達にご飯を作ってくれたのって何回ある?数えれるくらいだよね?」


「……」 

「二人は今まで通り好きにすればいいよ。二人が家にいる間、私はもう帰らないから」

「アスカ! お願いよ、そんなこと言わないで…」

「二人が家にいるのは、異世界にいてもわかるからね?それと…あの干渉してきたの、もう通じないから」

「そんな…」


「アスカ、俺を殴れ。それで許してくれ」

「イヤ。そんな事で済むと思ってるのなら、尚更もう話すことなんてないよ」

「アスカぁ…イヤよ、お願い」

泣いてる母さんを見ると胸が痛い…


「……今は無理。時間を頂戴。…気持ちの整理しないと…」

「わかった。俺たちにも考える時間が必要だ。そうだろ母さん」

「……イヤよ…。アスカぁ」

「…私、もう行くから」

「待ってくれ! 戻るのは止めないし、俺達もここを離れる。だから一つ聞かせてくれ」

「…なに?」

「今行ってる世界の名前は?」

「フィリアータ」


それだけ言って私は転移リングを起動、向こうを出た2時間後に戻るように。




「待って…! アスカー!」

光に包まれ消えるアスカは泣いていた。 そんなアスカを捕まえようと手を伸ばすが届かない。

これが今の私とあの子の心の距離…?

今、掴みそこねたのは、まるで私には掴むことが許されない幸せその物だったのように思えて…。

どこで間違えたの?

「おい…」

アスカの言うように、召喚も一緒に行っていれば…。

「ナツハ!」

でも、小さな子を連れて?いや、ある程度大きくなってからなら良かった?

「聞いてるのか?おい!」

「え?」

「さっきアスカの言った、世界の名前聞いたか!?」

「フィリアータ…。フィリアータ!?」

「そうだ! フィリアータだ! 同じ名前の世界があるのかもしれんが…」

「そんな…」


私が掴めなかったのは子供たちとの幸せだけじゃなくて…。

帰りたい故郷…。それさえも目の前にあったのに掴み損ねてしまった。

自業自得?そうかも…子供だから話してもわからない。理解してくれないって決めつけて。




玄関を出て、誰もいない家を振り返る。

こんなに悲しい気持ちで自宅を出るのは初めてだよ…。

いつもなら、今度こそ、みんなで生まれ故郷に。子ども達を連れて帰るんだ! って。

異世界なら召喚もされないから、ずっと一緒にいられる。だから…。

そんな決意で家を出てたのに…。

今は何も…只々悲しさと後悔と。 泣いていたアスカの横顔が焼き付いて消えないよ。


「ねぇ…私達どこで間違えたのかな?」

「どこだろうな…。だが…、諦める訳にもいかないだろう?大事な子供たちだ」

「でも…私はこれから何を支えにしたらいいの?」

「しっかりしろ! アスカはなんて言った? ”今は無理、時間を頂戴” って言ったんだぞ?」

「っ! そうよ! なら必ず…やり直せるよね!」

「あぁ。 絶対にな」

「希望があるのなら私は頑張れるよ! 行きましょう!」


今度は絶対、子供達を捕まえて離さない。 

私の全力で…。

大切な私達の子供達を! 

親友に託された大切な子を!


ミナ…帰れたなら無事だよね…?

元気になってまた会えるよね…?








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