名前
「ママ、王妃様が探してるっぽい?」
「そうなの?ドラツーに戻ってるの?」
「うん、戻ってきてるー」
「ならそっちへ一度戻った方がいいかな。 あ…でも未亜寝てるし、リアは…」
はぁ、もうどうしよう…。 (急ぎではないみたい。お部屋で休むって言ってるし…)
そうなの?ならまだいいのかな…。
キュー!
あ、起きたのね。うん? そうだね、ずっとここには居られないから。
キュ…。
でもまた会えるから、大丈夫だよ。
キュー! キュー…。
いい子ね。 あ…そっか。大きくなったら使えなくなっちゃうのか。
キキュー…。
でもクッションは大丈夫でしょ?
キュ…
あぁ…床が地面だものね…汚れちゃうの嫌だよねぇ…それならお部屋にしちゃう?
キュ!キュー!
待ってね、ルナシアさんに許可もらうから。
キュ!
「お話中すみません、ルナシアさん少しいいですか?」
「え?はい。どうされました?」
「あの、この洞窟を改装しても大丈夫ですか?この子のお願いを聞いてあげたくて…」
「改装ですか?構いませんが…穴を広げるなら私でも」
「いえ、ルナシアさんも人化して過ごされているのなら住みやすいようになるかと」
「はぁ…そう言う事でしたら」
「アスカ?まさか貴女…またなの?」
リア、またって何よ…。
キューー!
わかってるよ、お部屋ね?リアやティアねえ様も帰って来ることもあるでしょうから…。
例によって魔力ドームを洞窟の中へ広げる。今回は拡散タイプで…内側から洞窟の隅々へ。
リアも普通の人の建物での生活にすぐに慣れてたし大丈夫よね。
洞窟より快適! っていつも言ってたから。
馬車を作った時に余った木材もあるし。内装は板張りにして…。
個室は4つかな?後はリビングとダイニングキッチン。 お風呂やトイレもいつも通りに。
料理するかはわからないけど…一応ね。
この子の部屋は子供部屋に。
安全対策と、勝手に出歩けないようにしておけばルナシアさんの負担も減ると思うし。
みんなの部屋は基本だけ整えて、後は希望を聞こう。
よしっ、魔力ドーム解除!
「え?え?…何が起こってるの? すごい…」
あ、中にいるみんなへの安全対策はしてあるからね?未亜なんて地面に寝てる訳だし…。
魔力ドームで包んでるよ。
「アスカ! ほんとにもう! でもありがとう…」
「すごいー。人間の街にある家みたい! これなら快適だよー!」
みんなそれぞれに個室の希望を聞いて手直し。
ルナシアさんは床に座ったりするのに慣れてしまってるって言うから、
和室風に畳張りにしてあげたら喜んでくれた。
お風呂はリアが大喜びしてルナシアさんに使い方を教えてたよ。
ティアねえ様は街の宿風に。あの雰囲気が好きみたい。
リアは…相変わらず殺風景。
「アスカの側が私の居場所だからいいの!」
って事らしい。
キュー?
うん、ここがそうだよ。何かほしいものある?
キューー!
大きくなっても使えるやつね?わかったよー。
キュ?
これは、安全のだめだよ。あまりルナシアさんに心配かけたらだめだよ?
キュ!
いい返事ね。
大きなクッションを作って置いてあげた。
リアがお土産にモールで買ってたクッションが使えなくなったら、この大きい方を使える。
安全対策の柵は必要なくなったら、外せるからってルナシアさんに伝えておいた。
これで安心して眠れるって泣いてたよ…。お疲れ様です、お母さん。
「お邪魔するよー、シアー? ってなにこれっ! え?」
フレアベルナさん?
「私、いつの間に人の街へきたの? おっかしいなぁ…」
「ベルナ、間違ってないわ、私の洞窟よ」
「シア! 良かった…これ何事なの?」
「アスカさんが私達のために改装してくださったのよ いいでしょ?」
「そうなの!?羨ましい…。というか何だかシア明るくなった? いや、それもそっか…ごめんね、うちのバカ弟が…」
「そんな事はもういいのよ。それより何か用事があったんじゃ…?」
「そんな事って! そう言ってくれるなら有り難いけど…。私が来たのは貴女の子供の事よ」
フレアベルナさんは長老衆と、話をしてきたらしい。
「ルナドラゴンの上位種は今まで確認されてないから、まだ長老衆も会議してるわ」
「私とこの子はどうなるの?」
「シアと赤ちゃんは何も気にしなくて大丈夫よ。名前とかどうしよう?ってだけだし」
「そう…良かった」
「私はシアの希望を聞きに来たのよ」
「それなら、この子にもルナの名前を。私にとって大切な子なのは何も変わらないから…」
「そうね、わかったわ。そのまま名前を決めてあげればいいのに」
「そうですね、今は娘たちもいる事ですし、少し時間を…」
「ええ、それなら私は一度報告に戻るわね」
そういってフレアベルナさんはまた会議へと戻っていった。
「かあ様、名前決めてるの?」
「いえ…男の子なら決めていたのだけど」
「それならみんなで決めようよ! アスカもいる事だし」
私は戦力外ってことで…。 (ティーの時みたいにいいの浮かぶかも?)
それは…どうだろう。
赤ちゃんをルナシアさんへ返して、新しくリビングになった所のソファーへみんなで座る。
未亜はね?今回深く眠らせたから、リビングの端っこでまだ寝てる。
ちょっと怖かったから今は放置で…。
ドラゴンたち三人は名前決めの議論をしてて、私は人の姿に戻ってるティーを抱いてそれを聞いてた。
「アスカはどう思う?何か可愛い名前ないかしら?」
「そうね、アスカさんの魔力で覚醒したわけですし…」
「素敵な名前をいっちょどーんと!」
えぇ!?そんな責任重大なことを私に…。 (ママ頑張れー)
「みなさん名前の最後に”ア”が入るのでそれに倣うというのは…?」
「そうね、それはいいかも…」
「アスカさんの”ア”でもありますし…いいかもしれません」
それは考えてなかったよ!?
あ…でも、シア、ティア、リア…ときて四人目、4…フィーア?ルナフィア…ちょっと可愛い。
まぁでも…私が決めてもなぁ。
キュー!キュキュ!
それがいいって…?でもお母さんやお姉ちゃんが考えてくれてるよ?
キューー!
うーん…。
「アスカ、どうしたの?この子そっち向いてないてるわよ?」
「それが…」
「ママが思いついた名前を気に入ったみたいなのー!」
「ちょっとティー!」
「いいじゃない! アスカも家族なんだから意見くらい聞かせてよ」
「ええ、この子の魔力が安定したのは間違いなくアスカさんのおかげですし…」
キュー! (ママ諦めて)
わかったよぅ。
「”ア”が付く四人目って事で、私の生まれた世界の、とある国で、4の数字を意味する、フィーアってのをモジッて”ルナフィア”って考えたのですが…」
「かあ様がシア、ねえ様がティア、私がリア、この子がフィア…流れもいいわね」
「うん。私に近い名前なのも気に入ったよ!」
「私も可愛いと思います、それに…何よりこの子が気に入ってるのならそれが一番です」
母親のルナシアさんも姉二人も納得して…そのまま決定になってしまった。
いいのかなそれで…。 (フィアが気に入ってるのー!)
キュー♪
そう言われちゃうと…何も言えないよ。
名前が決まったのがよほど嬉しかったのか、
フィアはルナシアさんの腕を抜け出して私の胸に飛び込んできた。
キューー!
「あれ?今飛んだ…」
「それは飛ぶわよ。ドラゴンよ?」
「いや、そうなんだけど。さっきまで走ってなかった?」
「あぁーそれって、気分次第だと思うよ?今は嬉しかったから魔力使ってまで飛んだんだよー」
ティアねえ様が言うには、ドラゴンは飛ぶ時に翼へ魔力を纏わせてるらしい。
フィアも魔力の流れが安定したのもあって飛ぶことが容易になったんじゃないかって。
「いつ飛べるのか心配だったこの子が…あっさりと…」
ルナシアさんは嬉し泣きしてるし。
ただ同時に、飛び回る子供の世話が大変になるんじゃないかって心配になった。
キュ!
そう?ならお母さんに心配かけないようにね?
キュー!
心配かけないよう良い子にするって約束してくれたから大丈夫かな。
ティアねえ様は名前が決まった事を長老衆へ報告に行くと言うので私も一旦ドラツーに戻ることに。
王妃様の用事も気になるしね。それに、シエルも心配。 (ママ、未亜おいてくの?)
あ…。 仕方ない、起こしますか。今の未亜を抱いて運ぶのはちょっと抵抗があるし…。
起きたらいつもの調子に戻ってるといいなぁ…。