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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第二章
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母子の絆



「アスカ! アスカ! ティー! 誰か来て!!」

大声で叫ぶルナリア。


「怪我人もみんな治ったわ。森もかつて私の知ってる通りの姿になった。

でも…アスカ…ティー…。 

どうして! なんでよ…。 

置いて逝かないでよ…。

起きてよ! お願いだから…」


「ティーちゃんが飛び出していったけど…。 なに…これ?お姉ちゃん…?リアちゃん、何があったの?ねぇ!」

地面に横たわるアスカ。その腕に抱かれるようにティーが…。

そんな二人にすがり付き泣いているルナリアの姿を見て察してしまう未亜…。

「…そんな…うそ…だよね?」

その場にへたり込む。


「どういう事? 森が…戻ってるの? アスカちゃんは?」

「王妃様…お姉ちゃんが…ティーちゃんが…!」

「え…? っ! アリア! すぐに二人を中へ!」

「っ…はっ」


アリアが鎧のマントを外し、アスカにかけて抱き上げる。

「っ…ルニア、ティー様を。セナ、先導を…頼む…」 

「……はい」

「…はい」

ルニアがティーを抱き上げ運ぶ。



アリアがアスカをドラツーの中、アスカの部屋へ運びベッドに寝かせる。

ルニアが抱いているティーを、アスカの隣へ…。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん!!」

アリアが静止してもなお泣き、暴れる未亜。

「アスカ…ティー…」

しとしとと涙を流し…名前を呼ぶルナリア。


「全員、リビングへ。未亜ちゃんも。ね? 大切な話だから」

「…はい っ…」

「ルナリアちゃんも…」

「…アスカ!! アスカ!! ティー!!」

堰の切れた様に泣き叫ぶルナリア…。

「ルナリアちゃん! 落ち着きなさい!」

「……っ!」



王妃の指示で、 未亜、ルナリア、アリア、ルニア、セナ、ユリネがリビングへ集まる。

泣いているもの、唇を噛み締め血がにじむもの…。誰もが表情は暗い。

 

「ルナリアちゃん、何があったか話してくれるわね?」

「…ええ。 アスカが重症者、軽症者、合わせて50人の治療をしたの。その後…森の再生を…止めようとしたけど間に合わなくて…」

「そう…ティーちゃんは?」

「アスカに駆け寄ってきて抱きついた後…二人とも…」

「お姉ちゃん…なんでよぉぉ…うあああぁん」

「未亜ちゃん、落ち着いて。大切な話をするって言ったでしょ?」

「……うっ…」

「安心しなさい。二人は生きてるわ」

「でも…魔力が完全に枯渇したら…死んでしまうのよ!」

「…お姉ちゃんっ」

「…そうね」

「だったら!!」

「ルナリアちゃん、おかしいと思わないの?」

「え?」

「アスカちゃんがもし死んでるなら、なぜこのドラツーが消えないの?」

「あっ…」

「でしょう?ティーちゃんもアスカちゃんの魔法よね?」

「そうね…それなら!」

「だから大丈夫よ。あのアスカちゃんが保険もかけずに無茶する訳ないじゃない…」

王妃自身、自分に言い聞かせるように吐いたそのセリフは…なぜか全員の心にストンと落ちる。


「そうですよ、あのアスカ様ですよ?」

ユリネも同意する。

「そうよ〜グッスリ寝てるだけですよ…」

セナも。

「当たり前ですよね!」

ルニアも。

「アスカ様は私にさえ身を守る保険をかけてくださったのです…ご自分に何もしてない訳が…」

アリアも。


ティーがいたら突っ込んでるだろう。ママはポンコツだし、自分の事には無頓着だよーと。


「そうよね。大丈夫………………」

「……です!」

「……?………!」




どうしようティー、出ていける雰囲気じゃないよ… (ママが悪いの!)

そうだけど…。 (ティーがいなかったらほんとに危なかったの…わかってるの!?)

いや…でも…。 (ティーと魔力波長が同じで、ティーがピアスに魔力貯めてたから助かったの!)

あー、うん…。 (ティーももうだめかと思ったもん…ママがいないなら、ティーはいる意味がないの…)

ティー…。 (ちゃんと自分を大切にしないママなんて大ッキライ!)

…………ドサッ… (ママ? ママ!)


「みんな! ママが!!」

「ティー!!」

「ティーちゃん!!」

「ママがー死んじゃったぁ…!」






「えっと…じゃあティーちゃんがギリギリでアスカちゃんにたどり着いたから?」

「そう…じゃなかったら本当に危なかったの。ティーの魔力も全部持ってかれて…」

「ならどうして助かったの?」

「ママが作ってくれたピアス…魔力貯めておけるから。ティーとママは波長が同じ」

「つまり、二人とも魔力が一瞬枯渇して、ピアスに貯まってた魔力から補充したの?」

「そう」

「それならアスカは?なんで起きないのよ!」

「一回起きてた」

「「「「え?」」」」


「ティーが…自分を大切にしないママは大ッキライっていったから…ママが…」

「……それは、アスカにはキツイわね」

「うん、お姉ちゃん、ティーちゃんの事、本当に大切に思ってるし…」

「大丈夫よティーちゃん、気を失ってるだけだから。そのうち起きるわよ」

「ほんと?」

「ええ。だから傍にいてあげるといいわ」

「うんっ!」

アスカの元へ走り去るティーを見送る。



「どう思う?ティーちゃんの話…本当に危なかったって事かしら?」

「保険も何も…なし?」

「ティー様のピアスが一応保険といえば保険…?」

「お姉ちゃん…嘘でしょ?なんでそんな…」

「ティーのおかげでギリギリだったって…アスカ…本気で私を置いていく気だったってこと!?」


ティーの大ッキライ宣言でショックのあまり気を失ってるアスカの知らない所で…

アスカを想う人達からの壮絶なお説教が確定しているのを本人はまだ知らない。


実際、ティーが間に合わなかったらどうなってたかって?

それは本人が起きたら聞いてみたらいいんじゃないかな?













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