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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第二章
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失うもの



「お姉ちゃん!」

「アスカ!」

え!?下に誰もいないんじゃ? (いなかったよ?リビングにはいるけど)

真下にはってことか!! やられた…。 (♪)


「なんで何も言わずに一人で行くのよ!」

「そうだよ…せめて何か言ってってよ…」

「心配かけないようにと…」 


「アスカはバカなの!?いきなり居なくなってた方が心配するって思わないの!?」

「ティーちゃんが教えてくれなかったら…お姉ちゃんが消えたって大騒ぎになるとこだよ!」

またバカって…。 (ママが悪いと思うのー)

そう思うなら行く前に教えてほしかったよ。 (言ってもママは聞かないのー)

うぐっ…有り得そう。 (大丈夫大丈夫ーすぐ戻るからー) 

ティーやめて…。確かに言いそうだし似てた…。許して。 (あい! ママは反省)


「聞いてるのかしら?私達がどれだけ心配したか…」

「未亜ちゃん、ルナリアちゃん。ストップ。それ以上は…ね?アスカちゃん、みんなが心配したのは本当よ?私だって…。ちゃんと話してくれる?」

「わかりました」

王妃様が止めてくれて助かった…。 



高いところが苦手な未亜に一言注意して、床に窓を開ける。

「あれがフェンリルです。捕獲して、前回のドラゴンのように氷漬けにしてあります」

焼けた森の中に氷漬けの巨大な狼。


「捕獲した!?アスカちゃん待って…フェンリルを捕獲した?」

「はい、ティーがフェンリルから、苦しい、助けてって感情を拾ったので…倒せなくて」

「だからって…」

「変異の原因も調べる必要があると思ったので、倒してしまうとわからなくなりそうですし」

「それはそうだけど…」

「それと、森の炎はすべて消しました」

「そうみたいね…」

窓から見える森…かつて森だった場所は焼け野原になってて見る影もない。

「王妃様、あの子どうしましょう?」

「そこで私に振るの!?どうするといっても…あのサイズここから見ても相当よね?」

「このドラツーより大きいです」

「頭痛い…取り敢えずあれは置いておきましょう?」



リビングのソファーへ移動して報告の続きをする事に。

「原因はわかったの?」

「それが…手がかりは体内にあったこれだけです」

ローテーブルに数本の瓶を並べる。

「瓶?」

「アスカ! この瓶どこで!?」

「フェンリルのお腹の中だよ」

「……原因これよ」 

瓶を持ち上げてリアはそう告げる。


リアが言うには、これはエルフが作る魔力回復の薬、それが入っていた瓶らしい。

ドラゴンが過去に製法を教えたものだとか…。

かなりのレア物らしく人間界には出回ることはまずないとも。

それに強すぎて過剰摂取になるからよくないらしい。

人間だとそんな魔力の持ち主は…ここに数人いたわ…って頭を抱えてたけど。

リアは定期的にドラゴンへ献上されてくるから見たことがあるらしい。

エルフやドラゴンの魔力を回復するものだからかなり強力らしく、それを一度に数本も摂取したら…。


「なるほどね…原因はわかったけど何処でこれを口にしたかよね」

王妃様が言うとおりだ。

「聞いてみたらいいんじゃないかしら?ちょうど二人いるし」

「あぁ〜。何か知ってるかもしれないね、でも休んでるんじゃないの?」 

「ええ、でも起こさないと。エルフの救助に行くなら二人がいたほうが楽でしょ?」

「そうだね、怪我人もいるってティーが言ってたし」 (うん…)

どうしたのティー? (結構大怪我の人がいてあぶない…) 

え?それを早く言わないと!


慌ててエルフ二人を起こし、リアの提案でドラツーの隠蔽を解除して…

かつてエルフの森だった場所へ降りた。


「アスカ、エルフ達のいない方へ扉を開けられる?」

「うん、ならこっちだね」 

搭乗口とは逆の、客室の扉の間に出入り口を開く。


「ありがと、私と、エルフ二人。それとアスカ以外は何かあるまでは、待機しててもらえるかしら」

「私はいっていいの?」

「アスカは来なきゃダメよ」

「わかったよ」



ドラツーの裏から降り、前へ回るとエルフの人達が片膝をついてる。

「ドラゴン様が…助けに?」

「お願いを聞いてくだされたのか?」


「落ち着きなさい、怪我人の所へ案内して!」

「貴女は…! それにお前たち! 無事だったのか! よく、ドラゴン様を連れてきてくれた…」

「聞こえなかったの?早く怪我人の所へ案内して」

「しかし…なぜ人族が。これはどう言う事ですか?」

リアは大きくため息をつくと私に抱きついてきて…

「んっっ……ちょっとリア!?」

「こう言う事よ? ほら…」

またチョーカーを指差してる…。


「は…はいっ!! 申し訳ありません。ルナリア様!」

「怪我人の所へ案内しなさい!」

「こちらです!」 


案内されたのは簡易のテント?

周りは焼け野原だものね…。

「リア、重症の人から見るから」

「わかったわ。 重症者はどこ?」

「っ……もう助かりません。あの傷では…なので助かるものだけでも…」

「時間が惜しいのがわからないの? 口答えしないで! 早く!」

「はっはい! あちらのテントに…」

「リア。行ってくるから説明しておいて?」

「任されたわ」



少し離れたところにあるテントへ向かう、周りにはもう人はいない。

離れたところで泣いてる人が何人か。傍にいてあげないのだろうか…。

エルフの人たちなりの風習とかがあるのかな?


大丈夫、助けるから。

テントに入ると、大怪我や火傷の酷い人たちが何人も…。

取り敢えずテントごと魔力ドームで覆って時間を止める。

全部で18人…。うんっ、ギリギリだけど、まだ全員生きてる! なら大丈夫!


一人ずつ鑑定と治療をしてゆく。

こんな小さな子まで…。大丈夫だからね。

………………

……………

…………

………

……

…よしっ! 全員の治療完了。

テントを出て魔力ドームの解除。



「アスカ、ありがとう。 その、どれだけ助かった…?」

「うん、18人全員だよ」

「アスカ!」

最近本当、抱きつかれるのには慣れてきたよ。 


テントから怪我の治ったエルフの人たちが出てくる。

外で泣いてた人と抱き合って泣いてる。

あの小さい子だ…。キョロキョロしてるけど…親はいないの?

ちゃんと居るじゃない。って私達を出迎えて、重症者は助からないからって言ってた人だね。

子供さんが中にいたのに、諦めざるを得ない状況って…どんなに辛かったか…。

抱きしめて泣いてるものね。え…お母さんもテントにいたの!?

よかったよ…助けられて。


「リア、他の怪我人のとこへ案内して?」

「…わかったわ」



軽症の人のが数が多いね。当然か…。

今回もテントごと魔力ドームで覆ってしまう。

32人ね…頑張りますか。


ーーーーーーー

ーーーー

ーー



「リア、終わったよ」

テントから出た私の後ろで魔力ドームは弾けて消えてゆく。

「ありがとう…アスカ。お疲れ様」

「いいよー、できる事をしただけだからね」

「みんながお礼を! って大騒ぎだから止めておいたわよ?」

「ありがと。 後は森かぁ…」

魔力持つかなぁ…。

ストレージから聖剣を取り出し地面へ突き刺す。 

「アスカ…? 貴女まさか!」


未だかつてないほどの魔力を聖剣に流す。

その膨大な魔力はうねり…全身が蒼白く光る。


単に再生するのではなく、森のかつての記憶…それをハッキリと呼び覚ます。

持ってけ! 私の魔力! ありったけくれてやる! だからこの森を…エルフの人達の住処を…

森の生き物の住処を返してあげて! 


っ…く…ほんとに全部持ってく気? 

いいよ! 持ってけ! だからちゃんと返してあげてね…

「ママーー!!」

ティー!?なんで? 


っ…ごめん、ね…ティー…

 






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