森で出会ったふわもふ
ティー…大丈夫かな。
ドラゴン姿のまま膝の上に本体は居るのだけど…分体だとしても心配なんだよ。
頼りすぎてる自覚はある。私がもっとしっかりしなきゃ。 (ママ、頼ってよ!)
でも…ティーに危ないことばかりさせてるから。 (分体は平気! 送ったあとも消してるんだから)
そうなの!? (ママのドラツーと同じー)
てことは体の一部とかじゃなく魔力だけ? (そうー)
でも…ティー魔力体じゃない。 (ママと同じで使った魔力は時間で回復するのー)
てことは分体というよりは偵察の魔法を飛ばしてるイメージ? (それそれ!)
良かった…じゃあティーに危険はないのね? (もちろんー)
なんかすっごいホッとした…。 (ティーに危険があるとしたらー本体だけー)
膝の上にいる本体? (うん! それもママがいたら無敵!)
実質私の魔法だから? (そだよ!)
わかったよ。 (ママ! フェンリルまだいる!)
到着したのね。話せそう? (うーん…返事はないのー)
そっか…。 (でも苦しそう?)
やっぱり急激な変異で間違いなさそうね。 (辛いー助けてーだれか止めてって感じがする…)
それ聞いちゃうとなぁ…倒せなくなる…。 (他の方法?)
だねぇ…少し考えてみるよ。
なんとか動きを止めないと…フェンリルって基本めちゃくちゃ動きが早いから。
いきなり魔力ドームで覆って時間停止っていうのは無理だと思わないとね。
一箇所から動けない状態を作って、それから魔力ドームで覆って…。これしかない。
攻撃して痛めつけたら対話にもならないし…。うーん…。 (ママ、ドラツーもそろそろつくよー)
わかったよ。 対面してから考えるしかないか。
みんなに心配かけたくないし…私の部屋から直接外へ繋いで飛び降りよう。
「ティー、本体は待っててね?私が降りたら、ドラツーは高度を上げて旋回してて」
「はーい。ドラツーと乗員は任せて」
ドラゴン姿のティーをベッドへ降ろし撫ぜる。
「行ってくるよ…」
部屋の床に外への扉を開け飛び降りる。
落下しつつ周囲を確認する。
「うわぁ…森がめちゃくちゃだよ。 フェンリルはっと……いた!」
燃え盛る森の中で暴れてる。 真っ白なふわふわ…。
「これ…ヘタしたら、リアのドラゴン状態より大きいんじゃない?」
空中で風魔法を使い、落下方向を修正。フェンリルの真上へ向かう。
探索したけど周囲に他の魔力はない。
エルフの里は…あれかな。かなりの魔力量の人が集まってるところがある。
人数は数十人ってとこかな。
距離はかなり離れてるね。なら…
体制を立て直してフェンリルの頭の上へ降りる。
ズドーン!
あっ…。 (ママ…ひどい)
け、結果オーライって事で…。ダメ? (そうしとくのー)
私は着地の衝撃でダメージがないから忘れてた…。
そりゃあ落下の勢いのまま乗られた方は、たまったものじゃないよね…。ごめん。
べ、別に私が重いとかじゃないから! (ママは重いの)
ひどい!! (だってばいんばいん)
……ティー? (なんでもないのー)
ほんっと、そういうのどこで覚えてくるのよ…。 (ユウキと鼻血が話してたー)
ユウキ…。
今はそれよりフェンリルよ。
取り敢えず魔力ドームで覆って…起きて暴れたら面倒くさいから時間も止めた。
鑑定の術式を流し込んで…。外傷は…うん、ごめん。
調べるのは暴走の原因よね…何を食べたの?
お腹の中に…何かの瓶が数本? 他には何もなさそうね…。
取り敢えず瓶を出しておこう。魔力で操作して…口から外へ。
なんの瓶だろ…。キレイだけど。
この子の体調はっと…状態異常がついてるね。
えっと…暴走状態に、混乱、気絶……。
暴走と混乱は変異のせいだとして…。 (気絶はママのせい)
わかってるから!
状態異常は解除してあげて。
変異の原因がわからないな。唯一の手がかりは瓶くらい。
取り敢えず、森の火事を消さないとね。
水魔法…は、洪水が危ないよね。それなら…
探索魔法でこの森一帯を調べて、生き物をマーク。
燃えてる範囲すべてを魔力ドームで覆って…。
マークした生き物は更に個別の魔力ドームに入れて時間停止。
エルフがいる所はもう燃える物もなくなって消えてるのか…。
ならそこは除外して。驚かせるだろうしちょうどよかった。いや、良くはないけど…
よし…燃えてる範囲は取り込んだ。
後は、短時間でも魔力ドーム内を真空にしてしまえば火は消える。
ふぅ…流石に魔力持ってかれたなぁ。
ティー、上から見て燃えてる所ってまだある? (んー大丈夫!)
ありがとう、後はこのフェンリルかぁ…。この後魔力使う事を考えると魔力ドームで維持は危ない。
そうなると…あのバカドラゴンと同じ方法しかないか。
フェンリルを氷の魔法で固めてしまう。氷と言ってもこれ…クリスタルに近いよね。
炎や時間経過で解けないもの。
頭だけ解除して…
「話せる?」
「ウゥ……」
「もしかして怒ってる…?」
「ウゥゥゥ…」 (理解できてないみたい…?)
急な変異だし、知性が追いついてないのかな? (かも…今は怯えてるの)
それなら完全に凍らせて眠っててもらったほうがいいね。 (うん、その間に変化に追いつく?)
かもね、そしたら話せるかも…。
「ごめんね、ちょっと寝てて。大丈夫だからね」
そう言ってふわもふの頭を撫ぜてあげてから眠らせて、完全に凍らせた。
ユウキに連絡しておこう。
こっちからかけるのは初めてだね。
”姉ちゃん?もう片付いたの!?”
「んー、一応かな?報告と相談」
”わかったよ”
フェンリルは外的要因での変異で暴れていて、苦しんでて助けてって感情をティーが拾ったから調べるために捕獲した事。
変異の原因は今のところ手がかりはキレイな瓶だけ。急な変異に体が追いついていなくてまだ知性がない事。
暴れて燃やした森の火事は消した事。
一通り伝えた。
”捕まえたの?フェンリルを!?”
「うん、今氷漬けになってる。私しか解けないから危険はないよ」
”それで相談っていうのは?”
「この子どうしよう?」
”いや…どうしようって。サイズは?トラくらい?”
「リアよりでっかいよ」
”人間の、だよね?そうだといってほしいんだけど!”
「ドラゴンのリア…」
”姉ちゃんバカだろ! そんなもんどーすんだよ!”
「バカって言った! どうするかを相談してるのに!」
”…はぁ。王妃様に相談するしかなくない?バカなことする前に考えなよ…”
「ねぇユウキ…私の事、友達と話してたそうね?誰がばいんばいんで重たいって?」
”うァ…ちがっ…僕が言った訳じゃ…。ちょ…なんでファミリン越しで威圧感が来るのさ! 謝るから!”
「まったく…私だって考えてるよ! 苦しんでたなら倒すの可愛そうじゃない…」
”っはぁ…姉ちゃんの威圧マジでやばい…。 言いたいことはわかったよ…。でもやっぱり王妃様に相談するしかないと思う。それで陛下にも連絡して判断してもらったら?”
「やっぱりそれしかないか…。 後、かなり広範囲まで探索したけど他にはいないよ」
”姉ちゃんの探索範囲にかからないなら大丈夫とみていいね。わかった”
「じゃあ、また瓶の事とか分かったら連絡するよ」
”了解”
さて、一度ドラツーに戻らないとね。 (ママが飛び上がれる高さまで降りてきてるよ!)
ありがと。一瞬位置を見せて。 (あい)
あそこね、よしっ!
地面を蹴って飛び上がる。そのまま上空のドラツーの背中へ着地。
落下してないから衝撃は無いからね! (ママが気にしてる…)
ここだとリビングの上辺りかな? (うん、下には誰もいないよー)
わかった、ありがと。
足元へ扉を開いて、リビングへ…。