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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第二章
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くっころ



ルニアさんが馬車をお屋敷の前に回してくれたから、乗り込む。

このまま村から離れて、馬車ごとドラツーの倉庫へ入る。

その後、敢えてドラツーの姿を見せつつリアがいた事を印象付けて次の村へ。

そう思ってたんだけど…。


今いる村から離れたら、ドラツーから荷馬車へ荷物を移して、馬車で移動するらしい。

この後に行く村々が近いから、態々ドラツーへ戻るほうが手間みたい。


ナリナさんとメイドさん二人に別れの挨拶をして…。

散々戦えーって絡んできてたナリナさんにハグされたのにはびっくりした。

「アップルの事、ありがとね。それとアリアの事お願い」

そう最後に言われて、お世話になったお屋敷を後にした。

結局アリアさんのお父様には挨拶もできなかったなぁ。

今朝も早くから警備に出てたみたいだし。

王妃様がいるから仕方がないのかもだけど。



村から離れる馬車の中で王妃様、アリアさんと、今後の事を軽く打ち合わせ。

セナさんとルニアさんは御者席。ユリネさんは後方の座席に。

ユリネさんが物凄くおとなしくなって、ちょっと怖い。


昨夜、王妃様は通信魔道具で王国のシルフィ様と連絡を取ったらしい。

問題なく繋がったし、近くにいた陛下とも話せたって教えてくれた。

私の予想だと、王妃様の魔力なら、リアの故郷でも、まだ繋がると思ってる。

魔力循環をした時に魔力量だけは把握してるからね。


「ティー、ドラツーを隠蔽したまま、この先の林の近くへおろしてくれる?」

この林を過ぎちゃうと平原ばかりで、誰か通ったら丸見えになるからーってさっき王妃様と話し合った。

「はーい!」

馬車も街道からそれて、林へ向かう。

周りに誰もいないから…いや、待って! 林に何かいる。

「ティー、林に何かいるけど上から見える?」

「うーん? 見えないー」

「ドラツーを下ろすのちょっと待ってね、確認するよ」

「わかったー」

魔力的に人っぽいけど…多いな魔力。二人いるし…。


「アスカちゃん、どういう事か説明してもらえる?」

「はい、今ドラツーを下ろす予定の林付近まで探索を広げたんですが…林の中におそらく人だと思われる、結構な魔力の持ち主が二人いるんです」

「それは…不味いわね。潜んでるの?」

「そうかもしれません、動きませんし…。なので確認してきます」

「まさか一人で行く気?」

「はい、その方が早いです。目立つと相手が動きを取る可能性もありますから」

「…わかったわ。でも気をつけてね?」

「はい、何かあったらこちらへ通信を入れます」

「それがあったわね」


「アリアさん、こちらの事おまかせしますね」

「はっ、お任せを」


走ってる馬車からそのまま飛び降りて、隠蔽魔法、身体強化。

林まで数分。


えっと…反応は林の中へ入って、少しの所。

まだ動かないからバレてはいない。

もう近いね。この辺りかな…。

いたっ…! でも、様子がおかしい。

木にもたれかかって座ってるだけ?潜んでるって感じはしない。

かといって野営してた感じでもない。

フードを目深にかぶってて人相はわからないし。


もう少し近づいてみるか…。

「誰!? 誰かいるの…?」

この声、女の人か…まさかバレるとは。

いや、明後日の方向見てるからバレてはないのかな。カンがいいのか…。


「くっ…ここまでか…殺すなら殺せ!」

これが噂のくっころ!?

片手でナイフを振り回してるな。

もう一人は動かないし…。魔力は高いけど…流れは弱々しい?

どうしようかな。錯乱してる今の状態だと敵意があるのか、何者なのかとかわかりにくい。

めちゃくちゃにナイフ振り回してるから眠らすのも危ないし…。


うーん…。 (ママ、あれエルフ)

えっ? (耳が長いの)

見えたの? (近くへ行ってみたー。バレたのはママじゃなくてティーなの)

あぁ。だから違う方を向いてたのか。でもティーもバレないようにしてたんじゃないの? (うん…)

責めてないからね。大丈夫。 (あい。一人は大怪我ー)

そうなの? (うん、火傷がひどいの。可哀想…)

そう…。敵意は?どう思う? (うーん。警戒してるのと恐怖?)

うん、私も今は魔力から感じるのはそんな感じ。 (助けれる…?)

王妃様へ連絡して判断仰ぐよ。あの人たち見ててあげて? (うーん、ティーが話す?)

そのほうが早いか…お願いしていい? (わかった!)



この世界の人とエルフの関係がわからないし、下手な事は出来ないよね。

大抵は仲が悪いイメージ。

酷いところだとお互いがお互いを奴隷にしたりしてた…。


人同士の戦いには加担しないようにはしてたけど…色々見たくないものは見てきたから。

私もユウキも、対モンスター、対魔獣、あとはドラゴンとか、魔王、それと魔神。

それ以外とは戦わないって決めてた。

くだらない人同士の戦争で呼ばれたときは、無視して帰ってきたりもした。

人助けくらいは手を貸した事あるけどね。 


(ママー)

うん、どうだった? (助けれるなら助けてあげてって)

わかった。姿を見せても大丈夫そう? (うん、警戒はされるから気をつけてって)

そう…難しいね。 (あまり交流がないみたい)

リアは?ドラゴンって仲がいいのよね? (うん、そっち行くって言ってるけど…)

迎えに行くから待たせて。 (はーい!)


馬車まで数分で戻れるし、リアを迎えに行こう。




「アスカ!」

「迎えに来たよ」

「ありがとう…エルフは?」

「林の中、怪我してるらしいから…」

「連れて行って」

「わかった、抱き上げるよ?急ぐから」

「うん…」 (照れてるー!)

嫌がってないならいいよ。

リアを抱き上げて林へ走る。 (真っ赤ー)



林の側でリアをおろして、どうするか話し合う。

「…エルフなら私が人の姿でもドラゴンってわかるはずだから」

「そうなの?」

まぁ、ユウキもリアやティアねえ様の事、気がついてたよね。

私はそこまでわからないんだよね…。魔力の大きさから、何となく程度にしか無理。

前衛として間近で戦ってたユウキのがその辺は敏感なのかも。


「アスカは私の後ろにいて刺激しないようにしてて」

「わかったよ」

リアを案内してエルフの元へ向かう。


「誰!? 攻撃するなら早くしなさいよ!」

リアが隠蔽してないからすぐにバレたね。


「落ち着きなさい。攻撃なんてしないわ」

「え?」

リアがエルフの前に姿を晒す。私は一歩後ろに控える。

「貴女は…ドラゴン様…」

ドラゴン様…? 信仰対象とか言ってたな、そういえば。


「何があったのか話してくれる?」

「しかし…人族!?」

「落ち着きなさいと言ったはずよ!」

リアは私の腕に絡みつき、つけているチョーカーを指差す。


「まさか…そんな…人間! 貴様ドラゴン様になにをした!!」

あ、これ…悪い方に受け取ったパターンだ。


「違うわよ、バカ! 私の大切な人にこれ以上無礼な態度を取るなら許さないわよ」

「は?え? うそ…じゃあその首輪は…?」

「そうよ。だから安心しなさい」


ナイフを落としてへたり込んでしまったよ…。






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