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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第二章
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最強の元近衛騎士



今夜はアリアさんのお屋敷でお世話になって、明日の朝、次の村へ向かう予定だったのだけど…。

なんで私はお屋敷の裏手にある訓練場にいるのだろうか。 (ナリナさんに挑まれたから?)

その通りなんだけどね? どうしてナリナさんに…?って疑問が…。


お祭りの終盤にナリナさんから急に戦ってほしいって言われて。

王妃様もノリノリだから誰も止められないよね…。

アリアさんはため息ついてるし、お父様は…何も言わずに見守るのですか…そうですか。


「アスカちゃんは武器は?」

「一応、一通りは使えます」

「…そう。なら後ろの壁にあるから、好きに使っていいわ」

振り返ると、壁には剣や槍、大きな斧、ハルバードだっけ?

刃物類は刃引きはしてある。叩き切るような武器に刃引きが意味があるのか謎だけど…。

後は盾とか、これってムチ?なんてマニアックな…。

これは…杖かぁ。これにしよ。

どこかのご隠居様が持ってそうな杖を手にしてナリナさんと向き合う。


「へぇ〜魔術師ってのはホントなのね」

いや、そういう理由で選んだ訳ではないのだけど。

そういうナリナさんは大きめな剣。ロングソードだっけ…。

「でもごめんね、まずは魔法無しでお願い」

「わかりました」


ユウキの時に懲りたからね。まずは受けに回るつもり。


「二人ともいいかしら?」

合図は王妃様なのね。今回は観客も多いからちゃんと魔力防壁張り巡らしてあるよ。


「私はいいわよ」

「大丈夫です」


「わかったわ。  はじめ!!」


どう来るのかなって思ってたら突っ込んできた。

これ下手したらユウキより早いかも…。

まぁでも見えるなぁ。

杖で受けるのもアレだから斬撃を躱す事に。

右…左…下…左



「躱すばかり?攻撃してこないとか…舐めてるのかしらっ!」

「いえ、見てるんですよっ」

避けたことで空振ったスキをついて脇腹へ杖を突きこむ。

「ぐっ…。 なるほどね…」


動きがさらに早くなった。間違いない、この人ユウキより早い。

「これを躱すの!?」

だって見えてるし…。だいぶ動きがわかってきたから私も少し攻勢にでましょうか…。


「えっ…消えた…?」

「後ろです」

「っ…くぅ…」

後ろへ一瞬で回り込んで背中へ杖でポコッと。加減はしてる。


「っこのっ…」

そんな大振り当たらないって。 …っ!刀身がブレて…?

慌てて大きく後ろへ飛びのいた。

「うそ…」


びっくりした…大振りの剣はダミー?下から切り上げられたのか。

なにあれ。魔力は感じなかったけど…、何かのスキルかな。

私が躱した事で驚いてたナリナさんは更に踏み込んできた。

またアレをやられたら危ないから紙一重で避けるのは危ないね。


「そろそろ魔法解禁しましょうか…アスカちゃんも使っていいわよ」

そう言われても…加減しても被害が…。 (ママ、ダメー)

だよね…。


おお…刀身が炎を纏ってる。

剣に魔法を纏わせてるのね、私も昔に使ってたなぁ…。

「余裕ね? 腹立たしいくらいに躱してくれるわね…」

当たりたくないし…。ダメージ無くても気分的にね? (敢えて当たるとかー?)

意味あるかな? (攻撃通らないのわかれば?)

ふむー。


振り下ろされた剣を左手の甲で受けて弾き返す。 (!!)

耐性あるから炎も斬撃も通らないし…。 うーん、攻撃はユウキよりだいぶ軽いな。

「え? チッ…それが魔法なのね?」

そう受け取るのかぁ…。 (…ダメかぁー)



どうしようかな、魔法をまた大量に出して納得するかなこの人…。 (しないとおもうー)

だよねぇ…。撃ってみなさいとか言いそう。 (うん、それで撃てないママに攻撃してくる)

あ…なら魔力での威圧は?ユウキも怯えたやつ。 (おお…それなら戦意折れるかも)


「攻撃魔法使わないの? それとも本当は使えないのかしら?」

何かわざと怒らせようとして煽ってきてるよねナリナさん。 (うん)

そんな挑発に乗るのはあれだけど…ちょうどいいや。 


ナリナさんに向けて魔力の威圧を飛ばす。ほんの少しだけ怒りも込めて…。


ドサッ…

「ひぅ…いや…やめて…」  (ママ、ストップ!)

わかってる。尻もちついてガタガタ震えてるもの。流石にね…。

すっごい罪悪感…。 (もう少し加減ー?)

まだ慣れないのよこれ。


「お母様!?」

「ナリナ!!」

「………」

アリアさんに、王妃様、それとお父様か。


もう威圧してないのだけど私が近づくと尻もちをついたまま怯えて後退る…やりすぎたな…。

「ごめんなさい、少し眠ってくださいね」

「ひっ…」


倒れて眠ったナリナさんを診る。

魔力の流れが乱れまくってるな…安定させておこう。

寝かせたナリナさんを抱き上げてアリアさんたちの元へ。


「お母様!!」

「眠っているだけです、どこか休ませてあげられる場所ありますか?」

「はい、こちらへ」



休憩室みたいな場所へ案内されたので、ベッドへ寝かす。

「アスカ様。母がすみません…」

「いえ…私こそごめんなさい」


「母は…最強と謳われた近衛騎士だったんです」

アリアさんがポツポツとナリナさんの話をしてくれた。

最強の近衛騎士。若いときから天才と言われ、最年少で近衛騎士になった事。

魔王討伐にも声がかかったが、王族を守るのが役目だから離れられないと断った事。

アリアさんの師匠でもあり、ナリナさんのあんな姿は初めて見たと…。

「ごめんなさい…私が魔法を使うと怪我をさせてしまいそうで危なくて。魔力での威圧をぶつけたんです」

「いえ…私も止めたのですが、聞かなかった母が悪いんです」

結局何が目的だったのだろう…。


「う、ううん…ここは?」

「お母様、大丈夫ですか?ここは医務室です」

ここ医務室なんだ。


「私はどうなったのかしら?」

「……」

アリアさんは何も言わないのね。


「魔法使ってもいいって事だったので眠らせました」

「…そう。 ありがとう…アスカちゃん」

戦闘中、しかも武器を振り回してるときに眠らせるのって危ないからやらないんだけどね。

多分私が気を使ったのわかってるね。お礼言われたし…。



「ナリナ、大丈夫かしら?」

王妃様。 心配だよね…。ごめんなさい。


「ええ。何があったか思い出したわ…」

「そう… ふふっ、あはははは!! ナリナがひぅ…って…あのナリナが。あははは」

ちょ…王妃様!?

「仕方ないじゃない! あの威圧感はムリよ!? セルフィもやられたらわかるわよ!」

「嫌よ、私はアスカちゃんの強さも優しさも知ってるから、誰かみたいに煽ったりしないわ」

「っ…だって! 明らかに手を抜いてるんだもの!」

「それでー?元最強の近衛騎士様は納得したのかしら?」

「……、アリアがあまりにも褒めてたから悔しかったのよ…その上であの料理の腕よ?」

「負けず嫌いは直らないのね。これに懲りたらいい加減落ち着かないと」

「それは無理ね」

「まぁ…そうよね。ナリナらしいわ」

ナリナさんも王妃様を名前で呼ぶことあるんだ。姉妹みたいに仲が良かったとか言ってたもんね。


で、結局何これ…。私はなんで戦わされたの?

「アスカちゃんもお疲れ様」

「いえ…」

「これはね、嫉妬よ」

「え?」

「娘のアリアは絶賛するし料理も上手。それでいて強い。そんなアスカちゃんに嫉妬したのよナリナは」

「ふんだっ…」


「子供みたいに拗ねてるけど、これでも最強の近衛騎士だったのよ?」

「あーあ、手も足も出なかったわ。完全に弄ばれた感じよ」

言い方!

「だから言ったじゃない。無理よって」

「それでも戦ってみたかったのよ。それにセルフィだって楽しんでたくせに…」


「お母様はバカなのですか?」

「アリア!?ひどいわ!」

「嫉妬でこんな事を…アスカ様の強さは話したでしょう。ドラゴンを止めたときの魔法とか…」

あぁ…あれかぁ。見てたもんねアリアさん。

「大事な娘が入れ込んでる相手を知りたかったのよ…。まさかあんな目に合わされるとは思わなかったけど。もうお嫁に行けないわ…」

いや、貴女人妻ですよね?大きな子持ちの…。

見た目は王妃様と変わらないくらい若いけど。


まぁでも…謝っておかないとね。

「ごめんなさい。あの時は他に方法が思いつかなくて…」

「いいわ、許してあげる。その代わり…」

「はい?」

「アリアの事よろしくね?」

「お母様!!」

「は、はぁ…?いつもお世話になってるのは私の方なのですが…」

「ナリナの願いでもそれはダメよ」

「どうして!?」

「シルフィがいるからねー」

「えぇ…。 やっぱりもう一度戦えー」

話が見えないのだけど…。








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