二人の秘密
「どこから話そうか…」
「そりゃあ最初からじゃないと駄目じゃない?」
ユウキの言うとおりなんだけど、まだこっちに帰ってきたばかりで私はまだちょっと不安定だ。
向こうの記憶が印象強くてまだこっちに馴染めてない感じがする。
身体も変わってるから当然かも。
「お姉ちゃん?」
いつの間にか私の顔をのぞき込んでた未亜ちゃんに呼ばれてハッとする。
「ごめん、ユウキ。私、今回ちょっとこんなんだし、まだ記憶も怪しいから説明してあげてくれる?私がこうなった原因や行った先の話しをする分には大丈夫だから。その時は任せて」
「そうだよね、めちゃくちゃイレギュラーだし。わかったよ。一緒じゃなかった時のはわからないから省くよ?」
「ありがとね、まかせる。聞いてるうちに安定するかもだし…」
そこからユウキは2人が初めて召喚され、勇者として戦ったこと。
戻ってくるときには年齢や外見は戻ること。
スキルや魔法は使えるままなこと。
それからも何度も召喚されたとか色々。
「アスカ姉ちゃんなんて魔王にもなったらしいよ?だよね?」
「う、うん。でも、いい魔王だよ?」
いい魔王ってなんだよ…自分で言ってて可笑しくなる。
ユウキは自分一人で召喚された時のことなどを順に未亜ちゃんに話して聞かせてた。
ある程度私も聞いてはいたけど。
改めて聞くとユウキも大変だったよね。
それに対して未亜ちゃんはというと真剣に、時々質問したりしつつ、それでも疑うような事は一切言わずユウキの話を聞いた。
「それで1番最近の召喚がアスカ姉ちゃん。行くときは兄ちゃんだったんだけどね…。3ヶ月くらい前に召喚されてった。そこから先は…アスカ姉ちゃん?」
うん、ユウキの話聞いてるうちに頭もクリアになった。
あれ?でも…
「ねぇユウキ、私3ヶ月も居なかったのに学校とかどうなってるの!?」
「あぁ…それね、大変だったよ?」
そうだよね、数日とかなら体調不良とかでごまかせるけど…。
「最初はすぐ戻るだろうと思って、いつものように体調不良って連絡してたんだけど…」
うん。だよね。いつものパターン。
結構な頻度で休んではいるけどステータスの影響で成績はいい。
だから細かいことは言われなくて助かっている。
「流石に一週間過ぎた辺りで、不味いなーって思ってさ。たまたま帰ってきた両親に連れられて海外へ暫く行ったって誤魔化した」
なるほど…学校側はうちの両親の事情知ってるし。
「でも、よくそれで学校側が納得したよね?」
「語学留学?ホームステイ?流石だね〜とか言って勝手に納得してたから乗っかっといた」
それでいいのか学校…
「そういえば、ユウキも3ヶ月召喚されなかったの?珍しくない?」
「そうなんだよね、だから余計にアスカにぃ…姉ちゃん居なかったのが長く感じたよ。ってそれはいいから! 姉ちゃんか兄ちゃんか、ややこしいから早く話してよ。」
「ごめんごめん。未亜ちゃんは話について来れてる?大丈夫?」
悩みつつ必死に納得しようとしてるのだろう。
複雑な表情をしつつも頷いた。
「うん、わからない事がいっぱいだけど…それは後で質問タイムをもらえたら…」
「あはは、わかったよ」
っ! これは…
「ユウキ!」
「わかってる!」
無駄かもしれないと思いながらも、咄嗟に側にいた未亜ちゃんを抱きしめる。
「えぇ!?」
この子を一人で行かせるわけには…!
早めになにか対策を取らないとまずい。
魔法陣がユウキの足元だけに。
「ちょっと! アスカ姉ちゃんの話聞かずにモヤモヤのままとか気にな…」
最後まで言えないままユウキは魔法陣に連れて行かれた。
なんかごめん、ユウキ。帰ったら話すから。
「あ、あ、い、い、まのって…」
腕の中で未亜ちゃんの声がする。あ、しまった。咄嗟の事だったから。
「未亜ちゃんごめん! 急に抱きしめたりして…」
慌てて離した未亜ちゃんは顔を真っ赤にして
「あ、いえ、それは大丈夫。と言うか嬉しかったというか…私はなにを言って…?と言うかユウキ君が…」
そこまで言って未亜ちゃんは目を回して倒れた。
「あー急に両親と別れたり引っ越しとかあったしね?疲れてたよねぇ?うん、そうに違いない」
ユウキがいたらそこじゃないよね!?って突っ込みそうだが不在である。