本日回転
美亜にさっきリアを傷つけてしまったことを話す。
「それで大きな声が聞こえたんだね…」
「うん、私って嘘が下手なのかな?」
「うん。それは間違いないよ」
即答された上に断言されたよ…。
今、未亜と私はピザのトッピングの準備をしてる。
バジル、ピーマン、玉ねぎ、ベーコン。コーンやサラミも。
トマトソースもあるし、和風な甘辛醤油も。こっちは鶏肉をのせて照り焼きかな。
チーズはモッツァレラとチェダーがある。
「それでね、ユウキにも怒られたんだよ。世話焼きすぎって…」
「お姉ちゃん心配性だもんね。この通信魔道具も離れることになるユウキ君のために作ったでしょ?」
「うん、みんなにも持ってて欲しかったからね」
「私はお姉ちゃんが気にかけてくれるの嬉しいけどなぁ」
魔力ドームの中で生地の発酵まで終わったから、1枚分ずつ取り出して伸ばしていく。
回して広げるんだよね。風魔法で補助して遠心力で…。
こんなものかな?
「未亜、トッピングしていって? 生地を伸ばしてくから」
「わかったー! けどお姉ちゃん、いつからピザ職人してたの?」
「してないよ!?」
「だって…、生地を回して投げたーって思ったら大きくなって落ちてくるんだもん」
「そこはほら、魔法で。ね?」
「ピザのお店開いたら大繁盛しそう…」
トッピングの終わったものから窯に入れて焼いていく。
いい香り…。
焼けた物は冷めないようにストレージヘ
「ママー! なんか〜いいによいがするの!」
「お腹が空くわ…。何この香り…」
ピザの香りに誘われて戻ってきたね。
「リアちゃんの部屋はどうだった?」
「すっかり雰囲気が変わってたわ」
変えないほうが良かったのかな? (ううんーたのしんでたよー)
ならいっか。 (うん!)
それよりピザに興味津々みたいだしね。
「二人もトッピングしてみる?」
「ママ、それすげー! くるくる回ってるー」
「うん、これに好きな物をのせていくの。トッピングはここにあるからね」
「やるー!」
「私も! どれだけのせてもいいのかしら?」
「そこは程々にね? 未亜見ててあげて」
「はーい。 なるべく均等になる様に広げて…そうそう。そしたらチーズをドバーッと」
「アスカちゃん! 何をしてるの?すごくいい香りなんだけど」
王妃様がユリネさんを伴ってキッチンへ来たんだけど…涎垂れそうだけど大丈夫かな?
「お昼の仕度をしてるんですよー。まだ少し早いですけどね。ストレージに入れておけば冷めないので」
「え…まだ食べられないの!?」
そんな悲しそうな顔をしないで?
「…少し味見しますか?」
「ありがとう!」
「ティーもー!」
「それなら私だって!」
これは味見で一枚無くなるな。
既に焼けている一枚をストレージから取り出し、風魔法を使ってカットする。
「また今アスカちゃん、さらっと、とんでもない事したわね?」
「カットしただけですから…。熱いので気をつけて食べてくださいね」
お皿に取り分けて手渡していく。
「美味しいわっ! なにこれぇ…。アスカちゃんの手料理食べてたら他が食べられなくなりそう…」
「ママんまいよ! すごいのー」
「はぁぁ…美味しいわ〜。チーズが伸びるのがたまらないのよー」
それは何よりだよ。
「未亜も味見してみて?」
一切れお皿に乗せて渡す。
「ありがとう、焼き立てだね!」
結局一枚どころか三枚無くなった。
あんな嬉しそうに食べてくれたらダメって言えないよ。
未亜は一切れ食べた後、トッピングを手伝ってくれてたから、次々に焼けてってるからいいけどね。
「ティー、少しお願い事してもいい?」
「あい」
「倉庫でルニアさん達がお仕事してるから、これ持っていってもらえる?」
「宅配便!」
「そうだね、お願い。送料はこれだよ、あーんして?」
「あ〜ん! むっ…んまぁ! 行っへきまーふ!」
ピザを3切れずつ載せたお皿を、プリンのカラメルソースを作った時に、ついでだからと作ったべっ甲飴でお願いする。
「アスカ、私も何かお手伝いするから…」
「ありがとうリア、ならこの飲み物運んで貰えるかな?」
「わかったわ!」
「ならリアにもこれね」
「あーん… なにこれ、あまぁい…! 行っへくるわ!」
ティーを追いかけるようにリアもドリンクを持って倉庫へ向かってくれた。
「アスカちゃん、ありがとう。騎士のあの子達の分まで…」
「このドラツーに乗ってるお客様ですからね。だから、ユリネさんもどうぞ」
「あ、ありがとうございます…!」
「至れりつくせりねぇ…しかもお風呂まであるのよね?」
「はい、使い方はユリネさんが把握してるのでお好きな時に使ってください。鍵もかかりますから」
「わかったわ、ありがとう。 そうだわ、1つ確認したかったのだけどいいかしら」
「はい?」
王妃様が言うには、今朝このドラツーが降りてきて突然姿を表した時にびっくりしたと。
同じ事を支援に行く村でしてしまうのは不味いからどうする?と。
もちろん、村でドラツーの姿をこのまま見せるつもりはない。
ただ…支援が終わった後はあえて姿を見せて飛び去るつもり。
その為にリアに似せたんだし。
運び込む時は、一応何通りか考えてある。
「降りるときに外見を別のものにして、大きく国の紋章をつけて行くのはどうですか?」
「そうね、国の紋章があればわかりやすいけど…そもそも飛ぶ乗り物がないから。 どちらにしてもパニックにはなりそうね」
やっぱりこれは駄目だね。そんな気はしてた。
形も、私じゃ飛行船とか気球しか思い浮かばないもの。
そうなると…。
「途中で森に降りて馬車を作りましょうか。それに荷物を積んで村に入るというのはどうですか?」
「その方が安全策ではあるわね、作れ…るわよね、アスカちゃんなら。でも馬車を何で引くの?」
「私の魔力体で馬を作るか、召喚獣ですかね」
「え? 召喚獣持ってるの?」
「言ってませんでしたっけ…」
「知らないわよっ!」
「お姉ちゃん、私も知らない」
あれー?ちらっと話した気がしたけど気のせいかな…。 (それティーとじゃない?)
そうだっけ…。 (ティーはママが魔王のときに見てるから知ってるのー)
あぁー。そうだよね。話せてないけど傍に居たんだものね。 (うん!)
まぁ、魔王なら召喚獣くらい持ってるよ。
「召喚獣は見てみたいけど…それも騒ぎになりそうだから馬にしてもらえる?」
「わかりました」
「後は…馬車に王族ってわかる印をつけてもらいたいのよ。こういうのなんだけど…」
そう言って王妃様はつけてる指輪に魔力を流す。
ホログラムのように紋章が浮かび上がる。 すごいな…。
「了解です。覚えました」
「一度見ただけで!?」
「ママだしー」
ティー戻ってきたね。 (ピザよろこんでたのー)
そっか、よかった。ありがとね~。 (あい!)
「…そうね、アスカちゃんだものね。 ならお願いね?」
「はい」
じゃあ目的地はアリアさんのいる村に一番近い森かな。
そこの森で木材素材を調達しよう。