いっぱい落としてきた
みんなが朝食を食べ終わり片付けをしていると、キッチンの壁の窓から見える景色がいつの間にか、お城の壁になってた。
そろそろ着陸だね。
「本船は間もなく着陸いたしますー。この度はドラツーへのご乗船、誠にありがとうございましたー。 またのご利用はママにお願いするといいの!お忘れ物のないようにお気をつけくださいー。それではーお疲れ様でしたー!」
マイクを持たせたままにしてたら、いいタイミングで放送してくれたね。ありがとう。 (♪)
リビング側へ行って下の確認を…ってみんな付いてきちゃったか。
「未亜、少し離れててね。下の確認するから」
「うん」
下が見えるよう窓を開く。
もう王妃様達が待ってるね。遅かったかな…。
「アスカ様、素敵な一夜をありがとうございました…」
なんだか少し寂しそうだね。
「楽しんでいただけたなら何よりです。 それと、これはプレゼントです」
「えっ、これは…! ありがとうございます。すごく…すごく嬉しいです! 大切にします」
まずはドライヤー魔道具。便利だって言ってたからね。
それとこの船…はリアの姿だけど、それを元にして、可愛くデフォルメした形のペンダント。
そのドラゴンがダイヤモンドカット型にした透明な魔石を両手で掴んでる。
もちろん魔道具になってるよ?
効果は魔法防壁に、魔力電池、魔力の増幅、その他色々。
シルフィ様を守ってくれる様に願いを込めて。次期国王陛下だからね。
きっと王妃様が効果の確認するんじゃないかな。
着陸したね。
搭乗口へ行かなきゃ。
「王妃様が待っておられるので開けてきます」
急いで搭乗口へ行き扉をあける。
「おはようございます、お待たせしてすみません…」
「おはようアスカちゃん。大丈夫よ、気にしないで。 中の掃除って必要かしら?」
「いえ、私が何とでもできますので問題ないです」
「そうよね…。それなら一度、船内でこれからの打ち合わせをしましょう。支援物資の入ったマジックバッグも積み込むけどいいわよね?」
「倉庫がありますからそちらへ。狭かったら広げます」
「わかったわ、みんなよろしくね」
「「はっ」」
昨夜、一緒に乗ってた騎士様達が荷物を運び込むみたい。
「では、王妃様、リビングへ」
「ええ。そういえば、ユリネがいなかったのだけど…」
「はい、王女様のお世話係をお願いしたんです。すみません、伝え忘れて…」
「いいわよ、どうせあの子、勝手に残ったんでしょう?」
「い、いえ…」
「アスカちゃんがそう言うなら、そういう事にしておくわ」
「はい」
みんなの待つリビングへ。まだシルフィ様もいるからね。
「お母様、おはようございます」
「シルフィ、どうだった?楽しかったかしら」
「ええ…それはもうとっても」
「それでー?」
「いえ…」
「もう! ダメじゃない! って…え?ちょっと待ってシルフィそのペンダントは!?」
「先程アスカ様からプレゼントして頂きました」
「シルフィ! 見せて!」
「お母様でもそれはダメです」
「ええーお願いよー。その魔石…魅惑のカット…」
そっちに食いついたかぁ〜。
まぁいいけど。これはしばらく話に入れないなぁ。
「お姉ちゃん?」
「アスカ?」
「うん? ひぅ… な、何?二人とも…」
「「説明して!!」」
未亜とリアが怖いよ…。 (ママにもちょっとだけ責任があるとティーは思うの)
うぅ…。なんでよぉ…。
ドライヤー魔道具のこと?
あ、うん…違うよね。 ごめんなさい。 別に話を逸らそうとしたわけでは…。
ペンダントよね、あれは次期国王陛下になるシルフィ様を守るために…え?名前呼び?
えっとそれは…、今朝私の部屋で…はっ…いや違うの! 何でもないから!
未亜、リアに詰問されるアスカを呆れて見てるユウキ。
「なんで姉ちゃんは女の子になってからまで女の子をホイホイするのかな…。 勇者の時も、何人の王女様や聖女様を落としてきたと思ってるんだよ。しかも無自覚だからたちが悪い」
「ママってそんなにモテるのー?」
「それはもう。ほら、気遣いができて優しいし。 相手の好みも把握した上でプレゼントしたりするんだよ?」
「悪いことー?」
「違うよ。違うんだけど…ほら、あんな感じになるんだよ」
「あぁ…」
「しかも、相手からの好意にはめちゃくちゃ鈍感」
「心配ー?」
「…え? うん、そうだね。大事な兄ちゃん…いや、今は姉ちゃんになったけどね」
「助けないのー?」
「それは無理」
「はくじょー」
「うぐっ…だってあれは無理でしょ!?」
「ティーにお任せー」
「未亜、リアー。 ママをイジメたらダメー。可哀想…悪いことしてないのにー」
「いじめてるわけではないよ!?」
「そうよ…アスカが次から次へと相手を増やすから…」
「ママが悪いことしたの…?」
「うっ……悪い事はしてないね」
「してないわね…」
「ならなんで?」
「それは…」
「未亜、これは私達の分が悪いわよ…嫉妬をぶつけてるだけだもの」
「そう…だね」
「ティーありがとう。二人が怖かったよぅ…」
「ヨシヨシなのー」
「罪悪感が凄いわ…」
「うん…」
ユウキは確信した。ティーが一番怖い!
絶対敵に回したらだめだと。
戦闘能力的な怖さだけの姉とはベクトルが違う。