密航者
「夜間飛行はお楽しみいただけましたでしょうかー?間もなく本船は訓練場へ着陸いたしますのー。 お忘れ物の無いようお願いしますー。特別夜間飛行へおつきあいいただきーありがとうでしたー!」
可愛くて完璧だよ、ありがとうティー。 (わっほーい!)
「王女様、一度降りる方のお見送りに行きましょうか」
「そうですね! 私はまだこれからですもの!」
ホールへ戻ると陛下から物凄くお礼を言われてしまったよ。
楽しかったみたいで良かった。
王子も残りたそうだったけど陛下と下船していった。
勿論、陛下付きの騎士様もね。
「アスカちゃん、ありがとうね。とっても楽しかったわ。陛下とデート気分が味わえたのよ?」
「それは良かったです、陛下にも沢山お礼を言って頂きました」
「ふふっ、子供みたいにはしゃいでたからね」
想像するのはやめておこう…。
「騎士が二人残るけど平気かしら?」
「ええ、王女様の隣の部屋へご案内しますから」
「ありがとう、気を使ってくれて」
「いえ、それくらいは。 朝は日の出前くらいに降りればいいですか?」
「そうね、アスカちゃんの隠蔽が破られるなんてことないと思うけど、一応ね」
「はい、わかりました。ではそれくらいにまたここで」
「ええ、シルフィをよろしくね。手を出してもいいわよ?」
「何を言ってるんですか…」
うふふって笑いながら王妃様も騎士二人を残し下船していった。
とんでもない発言してったよ王妃様…。
「えっと…それじゃあ残る人は全員ホールへ待機をお願いします。部屋割や船内施設のご案内をしますから」
手を振る王妃様へ手を振り返し、扉を閉める。
夜明け前にここへ着陸するようオートパイロットにして離陸。
「ママ…メイド降りてないの」
「え!?」
安心して位置把握しないでいたらこれだよ…。
離陸しちゃったし…。どこにいるの?
魔力体の中を意識してユリネさんの魔力を探す。
あのメイドなんで個室に隠れてんの!
「確信犯…」
「ほんとそれ…」
取り敢えず騎士様に相談しようかな。
兜してて顔見えないけど…話しかけてこないから知らない人なんだろうな。
みんなお願いした通りホールのリビング側に集まってくれてる。
「このまま明け方近くまで街の上空を周りますので、ゆっくり寛いでください。
部屋割は右側一番前方が王女様の個室となりますので、騎士様はその隣の2部屋を使ってください」
「ありがとうございます、アスカ様」
「その声は…ルニアさん?」
「はい!」
兜を脱いだら見知った顔が。良かった、知り合いの騎士様が一人でもいてくれると安心だよ。
「セナといいますー。私も今日はお願いしますね〜?」
そう言ってもう一人も兜を脱いでくれた。
「ああーー!」
「ちょっとユウキ、びっくりするじゃない」
「ごめん…知り合いだったからつい」
「そうなの?」
「うん、アリアさんに報告するの忘れてたよ…」
「それはやめてって言ったじゃないの~!シャレにならないから~」
また濃ゆい人が…。何があったか知らないけどユウキの知り合いならいいね。
私達の部屋は一番後ろからユウキ、未亜、私とティー、リアになった。
ユウキが一番後ろなのはユウキなりの王女様への配慮だね。
「それと、ルニアさん一つご報告が…メイドのユリネさんが個室に隠れて密航しました」
「はいー?何してるのですかあのメイドは…」
「どうしましょうか…」
「私達にまかせて〜?どの部屋〜?」
「一番後ろ、キッチンに近い部屋です」
ルニアさんセナさんが個室へ向かったので任せることに。
王女様を待たせてしまうのもどうかと思うので先に案内しておこうかな。
「じゃあ私達は他の施設を回るよー、王女様もいいですか?」
「はいっ! 楽しみです」
キッチン、倉庫、トイレを一通り案内。
「ここはお風呂になります、中は見ますか?」
「お願いします!」
「私も見たいわ、お風呂と聞いては黙ってられないわよ」
ほんとリアはお風呂好きね。またのぼせないといいけど…。
よく考えたらお風呂は説明することが多いからしっかり案内しなきゃいけなかったね。
お風呂は◢こんな形で作ってある。
扉を開けると衝立があって、その奥が脱衣所になってる。
椅子とか鏡、ドライヤー代わりの魔道具もおいてある。
その辺の使い方も説明した。
「なんて便利な魔道具ですかコレは…」
王女様が気に入ったみたい。帰りに1つ渡しておこう。
脱衣所奥の引き戸を開けると、
「ここが大浴場! 窓も左側全面と床は開けれるよー。天井はここの黄色い魔石に魔力流せば…」
「すごい…。お姉ちゃん星空がすごく近くに感じるよー」
「そうだね、空気も澄んでるから空がキレイね」
「アスカ様、ここも窓を開けても外からは…」
「勿論絶対に見えません。安心してください。それでも不安なら…」
天井を開けた魔石の隣にある青色の魔石に触れて明かりを落とす。
「すごいです! 星しかないのにこんなに明るいのですね!」
「と、まぁこんな事もできるので、活用してくださいね」
その後、水、お湯、シャワーの説明も済ませる。
シャンプーやコンディショナー、ボディーソープも完備してある。
「アスカ様、私ここに住みたいです…お城より快適ですよここ」
それは陛下が許さないと思うなぁ。
「ついでにお湯を張っておきますね、保温はできるので」
魔法で水を張ってファイアボールをいくつか放り込む。
うん、いい温度。
「相変わらずめちゃくちゃだよね、姉ちゃんって」
「今更じゃない、アスカが凄いのなんて最初から私は知ってたわ!」
褒めてるのかなぁ…それ。
さて、最後は展望台。
「この扉の先はドラゴンの頭部分になります、一番見晴らしのいい場所です」
「リアの頭ー」
「やめてよティー、想像しちゃったわ…」
そうだけどそうじゃないよティー。
「外見のモデルがリアなだけだから!」
首部分の階段を上がり、扉を開ける。
ここは最初から窓を開けた状態にしてある。閉めれるけどね?
「先頭車ー!」
あぁ、それに近いかも。
「アスカ、ここの明かりも消せるのかしら?」
「勿論だよ、各部屋もそうだけど青色が明かりの魔石に連動してるからね」
リアが明かりを消したみたいだね。
「お風呂もすごかったけど、ここだと全方向夜空が見えるのか、姉ちゃんここ迄計算済み?」
「うん、展望室だからね。ただ昼間は眩しいから気をつけて。黄色の魔石で窓を閉められるよ」
閉まったね。またリアかな…。
「ホントだわ…これって他の所みたいに部分的に開けられるの?」
「勿論だよー」
みんなあちこちへ適当に窓を開けてる。まぁ私が閉めれるからいいけど。
カンのいい子は自分で閉めてるし…ティーとかね。
それを見てリアも覚えたね。
「リアちゃん、それどうやったの?」
「未亜はまた魔法初心者ね?私に任せなさい!」
「みんなはお風呂へ入るなり、好きにしてね、私は密航者の処遇を相談してくるよ」
一人で展望室を出てリビングへ向かう。
さて…どうしたものか。