噓でしょ!?
王妃様達が支援の手配や諸々で忙しいらしくて、ティアねえ様も手伝いに行ってしまった。
今回はみんなで夕食にはならず、メイドさんが私達の部屋に食事を運んでくれた。
食事くらいは一緒にって事でユウキも同じ部屋で食べることに。
あ、勿論いたよ?ユリネさん。
ただ他にもメイドさんがいたし、ティーに威嚇されてたから被害はなかった。
「ティー様…ひどいです。お菓子あげたじゃないですか」
「それはそれ! またママを襲うのは絶対阻止!」
こんな感じでティーがガードしてくれてた。
ただ一つ気になってる事があったからユリネさんに尋ねてみる。
「ユリネさん、今日アリアさん見かけないのですが…」
「はい、アリア様は特別休暇を王妃様から頂いて、故郷へ里帰りされてます」
「そうなんですね、じゃあ今回は会えないなぁ」
こないだ騒ぎがあったばかりなのに不自然だよね?って思ったけど…。
「いえ、お会いできるかと思いますよ?」
「え?」
どうやらドラゴンが荒らしてきた道中の村が故郷らしく現状の確認も兼ねた物らしい。
それ休暇って言うのかな?お仕事だよね…。
「ちょっとお待ちくださいね、地図をお持ちします」
あ…地図あるんだ。
異世界って地図がないことが多いし、あっても大雑把で、あって無いような物ばかりだからね。
それに見せてくれないことも多い。それなのに敵を倒してきてくれ! だもんね。参るよ。
「アスカ姉ちゃん、この世界とか街の名前知ってるよね?」
…そういえば知らない…大好きな国とか言っといて知らないよ…。
はぁ…。私何してんだろ…。 (世界はフィリアータ。この国はアクシリアス王国だよー)
ティー知ってたの? (フラフラしてたときに聞いたよー)
ユウキに教えてあげて。 (ママが言わなくていいの?)
私が言う資格ないよ…。 (そうなのかなぁ。機会がなかっただけだとおもうけどー)
「この世界はフィリアータだよ。この国はアクシリアス王国!」
「なんでティーが答えるのさ」
「ティーはママの魔法だからね!」
「お待たせしました。テーブルをお借りしますね」
ユリネさんが地図をテーブルに広げてくれる。
「ここがアクシリアス王国になります」
おぉ…しっかりした地図だね。この街って六角形なんだ…。
中心に王城だね。
「ルナリアが落ちてた森って何処だろ…」
「ユウキ、言い方」
「ごめん…」
「いいのよ。 えっとね…ココだと思うわ」
リアが指差したのは王国から少し西へ言った大きな森。森の近くにいくつか村とかあるみたい。
地図の上を北とするなら、だけど…。
「ねぇ、お姉ちゃん。前回私達が馬車で通った街道ってこれなのかな?」
美亜が森へ続いている街道を指さす。
「うん、多分そうだね。ツリーハウスがこの辺かな? リア、ドラゴンの里はどの辺?」
「えっと…この森を越えて、更にいくつも森や山を越えて…。ココらへんに山脈があって、その山頂に私のいた里があるわ」
地図をはみ出て、更にテーブルを移動した先を指差すリア。
ドラゴンが飛んで数日だとそうなるか…。見事に地図外。
「アリア様のご出身は…ここの村です。確か、アップルの名産地で割と大きな村だと聞きました」
王国からかなり遠いね。
それにしてもりんごかぁ…いいなぁ。アップルパイ作りたい。 (…!!)
「アスカ姉ちゃん、寄るつもりでしょ?」
「うん、アリアさんに会えたらいいなって思って」
「それだけじゃないでしょ?」
「うぐっ…いいじゃない。りんご好きなんだから…」
「お姉ちゃんりんご好きなの? 覚えとこ…」
「今のルナリア様のお話ですと…おそらく国境の山脈だと思います」
国境かぁ…。
「そちらの国との情勢はどうですか?」
これ結構大事。
「現国王陛下の姉上様が嫁がれていますね。大変良好な関係ですよ」
「良かった、安心して旅ができるよ」
「現在フィリアータには三つの国がありますが、数百年以上、国同士の戦争もなく良好な関係です。 北の海を越えた先はよく知られておりませんので…」
有り難いよ。普段召喚されてもだいたい戦争真っ只中とかさ…。 海を越えて、離れてる国の方は取り合えず問題はなさそうかな。
平和が身にしみるね。
「ユリネさん、他の二つの国の名前と、どんな国か教えてもらえますか?」
「はい、ですが書物で読んだもの、聞いた話でしかありませんよ?」
「それで充分です」
「わかりました。まず向かわれる方向の国はグリシア王国、魔法学校が有名ですね。 確か何年か前に生徒が勝手に召喚術を行い、魔王を呼び出したーとか…」
「魔王!?王妃様がパーティを組んで討伐したっていう?」
「いえ、そちらではなく…。召喚に怒って、魔法学校の一部を破壊した後、自ら魔法陣を展開して消えたそうです」
「…………」
「姉ちゃん…」
いや、まさかそんな…ね?違うよ。絶対違う。 (……)
「どうかされました?」
「いえ…続けてください」
「…? はい。では…次はアクシリアス王国を南下して海を渡った所にあります。
こちらの国は獣人の方が多く、共和国制になってます。今の国名はバサルア共和国ですね」
「今は?」
「定期的に元首国が変わるので名前が変わる場合があるのです」
「なるほど…」
「あと、先程お話にあった王妃様達の討伐された魔王ですが、この共和国の近くにある島に突然現れて魔王国を名乗ってました」
うわぁ迷惑…。
「なんでも、大昔に人族からの侵攻で苦しめられた仕返し…とか。ただ…その当時の魔王様は聡明な方で国の発展を第一に掲げ、侵攻することはなかったと」
「…えっとそれは誰から?」
「魔王軍も一枚岩ではなく、こちら側へ下り情報提供をした方達が居たそうです。その方達は聡明だった魔王様の意志を継ぐ者としてこの侵攻は止めるべきだったのに…と。 それができなかった罪悪感と現魔王へ従う気はないからと、投降してきたとか…。その時にこちらには無い、新たな魔道具の知識を頂いたと王妃様が仰ってました」
いや、ホントまさかよね…?
「ただ…その魔王軍ですがどうやら別世界からの侵攻だったらしく、こちらの世界は無関係なのに巻き込まれたと言う大変腹立たしいものでした。 実際フィリアータには過去に魔王が居た、なんていう記録はありませんし…」
「ものすごく迷惑な話ね? 私達ドラゴンはよほどの事がないと争い事には関わらないから知らなかったわ。 でも一つ間違ってるわ。魔王は以前にもいたわよ」
リア曰く、リアがまだ生まれる前に魔王はいたらしい。 討伐に、とあるドラゴンが力を貸したとか、勇者が現れたとか…。
場所はここよりもっと北らしく、魔王の居た大陸はその時の戦いの余波で海に沈んでるらしい。
ルナシアお母様から聞いたんだって。
「知りませんでした…。後でそのお話まとめさせてください」
「わかったわ」
ユリネさんは歴史とか好きなのかな?
「取り合えず王妃様達が討伐された魔王の話に戻りますね。 えっと…こちら側についた魔族の方達は今も共和国内で暮らしていると聞いています」
「帰らなかったんですか?」
「はい、どうやら世界そのものが衰退しているらしく…。魔道具の知識も、当時の魔王様時代の物には遠く及ばないものしか作れないと」
バーーーン!
「アスカちゃん、私も行くわよ!」
嘘でしょ!?