支援部隊
結局、私がお城でアイドルになってるのとかは、何も対策が浮かばないまま、諦めてお城へ飛んできた。
今回も全員問題なく転移完了。
「さてと、来たことを伝えなきゃね」
はぁ…廊下に誰か知らない人の魔力反応があるけど挨拶しなきゃ。 どんな反応されるか憂鬱…。 (…!)
てててて…ガチャ。
「ちょっと、ティー?」
一人で走って廊下へ出てしまったティーを慌てて追いかける。
「ティーとうちゃくー!」
「なにしてるの、ティー」
「ティー様!?それにアスカ様も!! すぐ王妃様へご連絡いたします」
騎士様だった。ドラゴン騒ぎの時に見かけた気がする。
「アスカ姉ちゃんが廊下に出るの躊躇ってたからじゃない?」
「あぁ…きっかけ作ってくれたのね。ありがとうティー」
「ママは活躍したんだからー堂々としてればいいのー」
「そうよ、バカとう様止めてくれたんだから」
「お姉ちゃんがアイドル、私はいいと思うな」
くはっ…orz
「ママ…ヨシヨシ」
「ちょっと未亜、態々そこを踏み抜かなくてもいいじゃない! アスカが落ちこんじゃったわ」
「ご、ごめんなさい…」
「未亜姉ちゃんってアスカ姉ちゃんが絡むとポンコツになる時あるよね」
「ユウキ君ひどい!」
バーン!
「アスカちゃん来てくれたの? って何この状況!?」
王妃様が見た光景はそう言いたくなっても仕方ないものだった。
相変わらず扉を破壊しそうな勢いで登場した王妃様へ、挨拶と今回お邪魔した理由の説明。
「そう…ならお城には居てくれないのね」
「はい、リアの故郷、ドラゴンの里へ向かいますので」
「ルナティアちゃんはどうするのかしら?」
「ねえ様は多分行かないと思うわ、でも話だけはしておきたいのだけど…」
行くって言えば連れて行ってあげればいいし、問題はないけどね。
「多分もうすぐ来ると思うわよ?話は伝わってるはずだし。それにしても…ドラゴンの里ね」
「行くと問題がありますか?」
「いえ、行くのは構わないのだけどね…。今は別の問題がいくつかあるの」
ルナリアへ、貴女の責任ではないから気にしないようにって前置きして王妃様が話した内容は…。
前回襲撃したドラゴンが里からここ迄の道中、村や街でかなりの食料等を要求。
その結果、街はまだ大丈夫だとしても小さな村とかが食料難になりかねないって事で、支援するためのキャラバンが出発するらしい…。
「ごめんなさい…とう様が…」
「だからルナリアちゃんは悪くないんだから、気にしないで。それに…ルナティアちゃんが支援の為に頑張ってくれたのよ?」
「ねえ様が…」
穀類なら備蓄が沢山あるらしいけど、奪われたのは肉類や備蓄用の干し肉やらが多かったらしい。
だから冒険者と一緒に森で食料になる魔獣の確保やら、剥がれた自分の鱗の提供とか色々と支援したと。
ドラゴンの鱗とか高値だからなぁ…。
娘に尻拭いさせる親とか…もう、ね?
私達も何かできないかな?
「王妃様、私達もできる事ありませんか?」
「気持ちは有り難いわ、でも里へはどうやって向かうつもりなの?」
「飛んでいきます。なのでここから遠くの村へなら早いかと」
「ルナリアちゃんに乗ってって事かしら…でもそれだとまたドラゴンが来たって騒ぎになるわ」
「…そうね、また奪われるかもって不安にさせてしまうわ」
「ごめんなさいね、ルナリアちゃんは何も悪くないのに…」
それは問題ないし、いっそドラゴンの印象改善もできる方法があるけど…。うーん…。 (……)
「ママ、なにかいい方法あるんでしょー?」
「え? うん…早く運べてドラゴンの印象も回復できるかもしれないけど…リアへの負担がね」
「アスカ、私なら大丈夫よ! 何だってするわ。 だって…アスカは傍に居てくれるでしょ?」
「勿論、傍にいるよ」
「なら任せて」
「アスカちゃん、詳細を教えてくれる?それで判断するわ」
「わかりました、話すより見てもらったほうが早いので、広い場所であまり人目につかない場所ってありますか?」
「そうね、なら前に使った魔術師の訓練場かしら。人払いすれば誰にも見えないわ」
「ではそこお借りできますか?」
「すぐに手配してくるから少し待っててね」
「お願いします」
手配の為、退室する王妃様を見送った後、リアが俯いてしまう。
「アスカ…ごめんなさい。また手間を増やして」
「リア、気にしなくていいよ。私達は家族でしょ? それに、リアにも活躍してもらうから」
「うん! 頑張って飛ぶわ」
「ううん、飛ばなくて大丈夫よ。一緒に乗って旅を楽しめるようにするって約束じゃない」
「それじゃあ私は何をしたらいいの?」
「…えっと」
「話して。あんなでも、とう様なの。その後始末は私がしなきゃいけないのよ!」
「わかったよ。 前みたいにドラゴンってわかる人の姿になってもらいたいの」
「え?あの不完全な状態に?」
「…アスカ姉ちゃん、もしかして支援部隊の中にドラゴンがいるって印象づけるため?」
「うん、ユウキの言うとおりだよ。あの姿なら言わなくてもわかりやすく目に見えるからね」
「そんな事でいいの!?」
「嫌じゃない?」
「全然。だってあの姿も可愛いって言ってくれたじゃない。だから私、今はあの姿も気に入ってるの」
直接言った事あったっけ? (♪)
「でも、お姉ちゃん。それなら国王様の許可がいるんじゃないかな?」
「うん、その辺は移動手段と一緒に王妃様に説明して許可を貰わないとだね」
「失礼します」
誰だろ…聞き慣れない声だね。
「はい、大丈夫です、入ってください」
「はっ」
入ってきたのは騎士様?アリアさんと同じ鎧だから近衛騎士様だね。
「王妃様から準備が出来たとの事で、ご案内するよう指示を受けてきました」
「ありがとうございます。 みんなはどうする?」
聞くまでもなかったね。全員ついてくるって。
案内されたのは以前に王妃様の妹、王宮魔術師のミルフィさんと戦った場所。
「来たわね、これくらい広ければ大丈夫よね?」
「はい、充分です。では移動手段を見せますね」
「未亜姉ちゃん、僕すっごい嫌な予感がするよ」
「奇遇だね、私も驚く準備してたよ」
失礼ね…。
まず自分の魔力から魔力体を作る。
消費魔力がかなり大きいから、減ったのがはっきりわかる。
今はまだ形もないし、見えないけどね。
「アスカ…この凄まじい魔力はなに!?」
形のない魔力でしかなかった時のティーを感じ取るほど、魔力に敏感なリアにはわかるか。
イメージを膨らませ、ドラゴンのリアそっくりな姿にする。
内部を拡張させて居住空間に。必要なものを揃えて快適空間を作る。
ストレージ内の魔道具類も設置して…。
強力な隠蔽術式に、オートパイロット。
よし、こんなものかな。何かあったら後から改良したらいい。
「…な、に…これ?私?」
「アスカちゃん…貴女これ…」
「姉ちゃん、 やっぱりやりやがった…!」
「予想外すぎるよ、お姉ちゃん…」
「ママすげー!」
えーっと説明したいのだけど…いいかな?