波紋は広がる
ここは公園とは言っても遊具があったりするわけじゃないから、静かで落ち着ける。
子供達にはつまらない公園かもだけど…。
今の私達にはこの公園がありがたい。のんびりしたいから。
珍しく未亜が腕じゃなく手を繋いできたのでそのままのんびり公園を歩いている。
会話はほとんど無いけど、こういうのもいいよね。
ぐるっと公園を歩いて駅の近くまで戻ってきた。
もうすぐ夕方。
帰りの電車でかかる時間を考えたらそろそろ帰らないと。
「お姉ちゃん、今日はありがとう」
「いいよー。のんびりしただけだったけど良かったの?」
「うん、1日お姉ちゃんを独り占めしたし、満足ですっ」
「そっか。ちょっと怖い思いさせちゃったけど…」
「お姉ちゃんのせいじゃないし、守ってくれたから…」
「大切な家族だからね」
「うんっ。 そうだ、今日の夜ご飯は?」
「お昼用にシチューをたくさん作っておいたから残ってると思うけど…」
「私も朝にユウキ君からトーストと一緒に出してもらったよ。お昼に食べられないからって」
「そうなの?」
「うん、すごく美味しかった。そして…絶対残ってない!」
「大鍋一杯に作ったのに!?」
「うん、残るわけがないよ」
マジかぁ… (完食しました。ごちそうさまですー)
ホントだわ。
「ポテトオープンオムレツ作って、残ったシチューをスープ代わりにって思ったけど甘かったみたいね」
「オムレツ! 美味しそう。シチューなくても大丈夫じゃないかな?」
「かなぁ?まぁ、ある物で野菜スープでも作るよ」
駅から帰りの電車に乗る。
車内でウトウトし始めた未亜に肩を貸してあげて寝かせてあげた。
「未亜、そろそろ降りなきゃだから起きて」
「んん〜…あれ、私寝てたの?」
「うん、結構歩いたし疲れてたんじゃない?」
「昨日、楽しみなのと緊張してなかなか寝付けなかったから…」
寝不足だったのね。
「もうじき近所の駅につくよ、そしたらすぐ家だから」
「うん、少し寝たからかスッキリしたし、大丈夫」
地元駅で電車を降り、行きとは違いゆっくり歩いて帰る。
夕焼けに染まる街並みは、何だかいつもと違って見えて。
「なんかこのまま帰るのちょっと寂しいよ…お姉ちゃん」
「私も同じ事思ってたよ。少しだけ遠回りしようか?」
「うん、ありがと!」
そう言うと嬉しそうに腕を組んできた。
家へ向かう道からそれて、右へ曲がり、スーパーとかがある方へ向かう。
「この道、私初めてかも…」
「そう?こっちはいつも行くスーパーのある方だよ。さっき左に曲がれば学校方面だったの」
「家って結構便利な場所にある?」
「そうかも…駅も学校も近いからね」
「うん、そうだお姉ちゃん、少しスーパーに寄っていかない?」
「いいよー。近く通って帰るつもりだったから」
いつもの見慣れたスーパー。
モール程大きくはないけど一通りは揃う。
隣には、ホームセンターがあるけど普段行くことはあまり無い。
「何か買いたかったの?」
「ううん、なんとなく…」
いいけどね。
「ねぇ未亜、お留守番してくれてる子達にお菓子でも買って帰ろうか」
「いいね、じゃあお菓子コーナー行こ」
いくつかみんなが喜びそうなお菓子を選んでレジへ。
さっきからスマホが振動してるなぁ…。
もし家からの、大事な用事ならティーがなにか言うはずだから違うよね? (違うよー)
だよね、なら帰るまでは見ないでいいや。
せっかく未亜と居るのにスマホ触ってたら感じ悪いし。
レジでお会計してる時にあるものが目について…。
アレいいかも。
「ね、未亜少し付き合って」
「うん?勿論いいよ」
お菓子の袋を持ったまま未亜を連れて狭い個室へ。
「お姉ちゃんコレって…」
「証明写真だね。ここプリ機ないから…思い出にどう?」
「うんっ! 嬉しいよ」
盛ったりとか出来ないけど、リアルな思い出感があって良いんじゃないかなって。
未亜の要望で後ろから私がハグする様な格好になった。
まぁ狭いし…仕方ないね。
「ありがと、お姉ちゃん。大事にする」
印刷された写真を嬉しそうに持ってるから撮って正解だった。
「じゃあ帰ろっか…ご飯遅くなっちゃうし」
「うん。行こ!」
駅を出たときの様な寂しさはなく、楽しく話しながら家へ帰った。
「「ただいまー」」
「ママー、未亜ーおかえり!」
「ティー、ただいま。ユウキとリアは?」
「台所ー」
遅くなっちゃったからかな?
急いで部屋着への着替えを済ませ台所へ。
「姉ちゃん、おかえり」
「アスカ、おかえりなさい」
「ただいま、ごめんね。遅くなっちゃって」
「いいよ、いつも姉ちゃん達に任せきりだし、たまにはね?」
ユウキが、夜ご飯に焼きそばをつくってくれてた。
「ありがとう、シチューはきれいに無くなったって聞いたけど…」
「うん、三人でお代わりして食べてたらなくなっちゃったわ。美味しかったんだもの」
「良かったよ、お留守番ありがとね」
「いいのよ、明日からは私のワガママで付き合ってもらうし」
着替え終わった未亜も降りてきてみんなで夜ご飯。
ユウキの料理も久しぶり。美味しかったよ。
ティーとリアも手伝ってくれてたらしいから褒めておいた。
「あ、そうだ。お留守番してくれてたみんなにお土産だよ。未亜と選んだから食べてね」
写真撮るときにストレージへ入れてたのを取り出す。
「お菓子ー! ママ、未亜ありがとうー!」
「私にも見せてー。わぁ〜こんなに沢山!?」
「たまにはね?」
「二人ともありがとう。 あ、そうだアスカ姉ちゃん、奈々先輩から家に電話があったよ?」
「え?なんで家に…」
「スマホに連絡しても出ないからーって」
アレ奈々だったのか…。家にまでかけてくるなんてよっぽど?
慌ててスマホを見る。
メールと、着信が数件。
………。マジかぁ。
「何だったの?」
「あー、うん…私が昼間にちょっと目立ってね。動画撮られてたらしい」
「え!? 姉ちゃんなにしたのさ」
「お姉ちゃん、もしかしてそれって…」
「ママ大活躍!」
奈々が貼ってくれたURLから動画を見に行く。
少し距離はあるし、顔はわからなくしてあるけど…知ってる人にはわかるよね。髪で…。
はぁー。いいよ。未亜を守れたんだし。鞄も持ち主に返せたから。
「アスカ姉ちゃん、動画見せて」
「わかったよ」
スマホをユウキに渡す。
みんなで覗き込んでみなくても。
「さすがアスカね。早すぎてスローにまでされてるわよ」
「あーこれは目立つよね…でもこれは仕方ないよ。未亜姉ちゃんは怪我ない?」
「うん。お姉ちゃんが守ってくれたから」
「アスカ姉ちゃんならナイフ如きで怪我なんてしないしなぁ」
「おぉーママすげー!」
ティー見てたんじゃないの!? (温めてるシチューにムチューでした)
そんな早くから? (みんな待ちきれなくてー?お昼ご飯はおやつタイムから!)
10時から仕度してたのか…。早すぎでしょ。 (によいにまけたの)
「アスカ姉ちゃん、着信。奈々先輩から」
「ありがと」
スマホを受け取り、通話。
”ちょっとアスカ! 何回連絡したと思ってるの!?心配したんだから!”
声でかい…みんなにも聞こえてるよこれ。
“聞いてるの!?”
「ごめんってば。今日は妹と出掛けてたからスマホ仕舞いっぱなしだったの」
“あぁ…相変わらず律儀というか…。それより動画見た?あれアスカよね?”
「うん、引ったくりが暴れてたから…」
“そんな事はいいんだよ! アスカは怪我とかしてない?妹さんは?”
「大丈夫、二人とも無傷だよ」
“よかったー。連絡つかないから心配したよ…“
「ごめんね、心配してくれてありがと奈々」
”無事なのわかったからいいよ。まぁアスカは月曜日覚悟しておかないとだけどね“
「どういう事!?」
先生から呼び出し!?
”だって私もそれファンクラブからの連絡で知ったから…あっまず…”
「もういいから。ファンクラブの事も奈々が入ってるのもわかってるから!」
“そうなの?公認!?”
「そんな事はいいから、覚悟しておくって何?」
“いや、学校中に広まってるから…”
ファンクラブが関わった以上そうなるよね…。
「いいよ、目立つの覚悟して動いたから諦める」
“潔いな! まぁアスカが困るようなことにはならないから。話題になるだけ”
「わかったよ。ありがとね」
”いいよー。じゃあまたねー”
奈々との通話をきる。
「アスカ姉ちゃん、話が全部聞こえてたけど…大丈夫?」
「なにがー?」
「いや、目立って動画まで撮られたんでしょ?しかも学校中に広まってるし」
「うん、大丈夫。動くときに覚悟はしてたからね」
「ならいいけど。何かあったら相談してよ?」
「ありがとユウキ」
「…お姉ちゃん、私のせいで…」
「未亜ストップ。未亜は何も悪くない。悪いのは犯人! 私は未亜を守れたならそれでいいの」
「うん…」
「ちょっと未亜?あんな素敵な助けられ方して落ち込んでるんじゃないわよ、羨ましい…」
「ルナリアちゃん…」
「まったく! 私なら惚れ直してるわよ」
「それはその通りなんだけど…お姉ちゃんに迷惑かけたから…」
「それもわかった上で助けたって言ってくれてるんだから堂々としなさい!」
「はい…」
この二人の関係性が私はいまいちわからない。 (ライバル?)
なんの!? (…しらなーい。ティー子供だし)
お、おう…。